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忘れえぬ猫たち

小説「猫踏んじゃった」
喜劇「猫じゃら行進曲」
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  そして、坂本総務部長が兼務していた問題の東6分会長はどうなったのか?そ
こには坂本省三(代行)と書いてあった。そもそも町内会に「代行」という役職はな
い。坂本総務部長は1月10日付けで「体力・精神力の限界で3月31日をもって
理事を辞任する」との辞任届けを出している。後任がいないのかも知れないが、
考えようによっては、町内会規約第12条の3項「役員は、辞任又は任期満了の
後においても後任者が就任するまではその職を行うこととする」を逆手に取ってい
るとも言える。自分の思いのままになった町内会を去りがたいのかもしれない。

  早川は役員選考経過をここまで振り返って、誰がこの町内会を牛耳っていたの
かうすうす感じていたものの、その正体がはっきり見えてきたような気がした。
  自分のやり方や意向に沿わない者は例えまっとうな案でも徹底して叩き潰す。
「ボスは俺だ」と見せつけるのである。従順な犬には餌を与えるが、歯向かう犬は
餌をやらず人前で徹底的に痛めつける。
  その餌は何か?人事権である。町内会役員を10年近くも経験しても、言う事を
聞かなければ部長や副部長にしない。ゴマをすって愛想良くしなければとことん干
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すのである。早川にしてみれば、たかが町内会ごときがそんな仕組みで動いてい
る事が信じられない。
  今回の役員選挙を見ても、竹山保健衛生部長の副会長候補や小谷理事の経
理部長候補も考えてみれば早川委員長他役員選考委員会の推薦である。現三
役の意向ではない。 このまま成立すれば、早川委員長の手柄になる、または沽
券にかかわると見たボスまたはお局は選考委員会の答申をつぶすために動いた
のではないだろうか?こう考えると今回の事件は非常に分かりやすい。
  早川はどう考えても「何のための、誰のための町内会か?」と思わざるを得な
い。

  早川が町内会役員を辞めて10ヵ月ほど経ったある日、早川は行きつけの札幌
小野病院の待合室で宮城会長と出くわす。宮城会長は不整脈があるとかでこの病
院に定期的にかかっており、早川は過去に何回か出会った事がある。
  「元気か?」
  宮城会長が笑顔で訊ねる。
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  「町内会を辞めたらますます元気ですよ」
  と早川が切り返す。
  「ところで・・・私も1年経つが、もう1年(会長を)やってもいいだろうか?」
  宮城会長は早川が選考委員長だったのを思い出したのだろう。
  「やればいいじゃないですか・・・」
  早川が笑う。皮肉ではない、町内会役員を辞めた早川には留める権利なんか
ない。
  「お身体に気をつけてください」 とだけ言って早川は席を立った。

  早川が散歩の途中、近所の山内元経理部長に出会ったのはもう少し後の事、
水仙がほころび始めた頃の事だった。
  「やあ、しばらく、元気そうだね」
  早川が山内氏に気安く声をかける。先田総務部長と山内元経理部長と早川は
同じ1944年生まれだった。彼は経理部長を辞めても交通安全の手伝いをした
り、社会福祉活動をしている。
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  「このとおり元気だよ、あなたは?」
  山内氏が笑顔で答える。
  「町内会を辞めてますます元気さ。これから花の季節で毎日歩きますよ」
  と持っていたカメラを見せる。
  「いい趣味だねぇ、うらやましい・・・私はねぇ、本当はねぇ町内会を続けるつも
りだったんだよ」
  山内氏は早川が役員選考委員長をしていた事を思い出したのか、変な事を言
う。
  「だって、義理のお父さんと同居するから経理部長は出来ないと、早くからみん
なに言ってたんじゃないの?」
  早川が言うと、
  「いや、そうなんだ。そろそろ行かなきゃ」
  と山内氏は言葉を濁して立ち去った。
  (何を言ってるのか?)
  早川はそれ以来彼の発言が気になっていた。
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第10話 ハチのムサシ  その5 ★★★★★






















           

         


























































































































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