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小説「猫踏んじゃった」
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いという話だった。早川はこれらの裏情報を聞くと一見なるほどとも思うが、ごん
ぼ(牛蒡)を堀った当人、北村副会長がうまく泳ぎ回ったとも見える。

  3月26日(火)、役員選出についての臨時理事会が開催される。内容は3月21
日に噂で流れた(流した)情報どおりだった。 坂本総務部長が話し出す。
  「えーっ、役員選考ですが選考委員が3月15日付けで辞任届けを出しました。
総会までの時間もありませんので、現三役で検討協議した結果、次のように提案
いたします。会長は宮城会長が1年間のみの続投、副会長は北村副会長の続投
と森村福祉部副部長、総務部長は先田総務部副部長と言う内容です。経理部長
については4月6日開催予定の理事会までに選ぶ予定です。ご承認願います」
  新役員はこのとおり承認されたが、早川の目には気のせいか提案している坂
本総務部長の顔が心なしかゆがんでいるようにも見えた。
  結果として見れば、現三役で次の三役を選んだ事になり、異常事態とは言え、
厳密に言えば「会長・副会長・総務部長・経理部長の三役の選任については、別
に定める役員選考委員会において選考し、(以下略)」という町内会規約第11条
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に違反している事になる。
  経理部長については、4月6日になっても決まらず、未だに経理部長がいない。
これも重大な規約違反であるにもかかわらず、規約変更もしていない。しかし、役
員選考委員および町内会理事を辞めると決めた早川にはもはやどうでも良い事
だった。
  ただ、この4年間に親交のあった、大沢副会長・山内経理部長・高木分会長・久
井理事・小宮理事達も今年度限りで役員を辞める事になっていたから、今後会え
ないかと思うと少しつらい気がしていた。特に久井理事と小宮理事とは真面目な
話も馬鹿話も両方していたから本当に別れるとなると淋しい感じがした。


  3月26日の新役員候補決定後、早川は東4B分会長の4年間分の書類を整理
していた。そして数日後、早川は書類を返還しようと町内会館にいた先田副部長
を訪ねる。次期総務部長である彼は定期総会の準備で机に向かっていた。
  「先田さん、総務部長就任良かったね」
  と早川が先田副部長に声をかける。
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  「えっ」 と彼は顔を上げ、

  「ええ、まぁ、これからが大変で・・・」
  と言いかけて、早川がぶら下げている2つの大きな紙袋に気づき、
  「何ですか、それは?」

  と訊ねる。
  「東4B分会の書類です、次期分会長に渡してください」

  と早川が紙袋を先田副部長に差し出す。
  「早川分会長、どうか後任を決めていただいて、その方に渡してください」
  と先田副部長は受け取ろうとしない。
  「4年間後任を探したが、ふさわしいと思った人は町内会と聞いて誰も受けてく
れないんだ、もうお手上げさ」
  早川は笑う。早川は後任が見つからず、そのまま辞めてしまった理事や分会長
が大勢いる事はとうの昔に知っていた。
  「それは困りますよ。それでは後任が決まるまで手伝ってくださいよ」
  と彼は袋を押し返す。
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  「そりゃ出来ないよ。ずるずる使われるからね・・・それじゃあね」

  と紙袋を置いてくる。置いていかれた彼は後方で途方に暮れていた。
  (あんたに恨みはないよ。だけど、本当に困ったら北村副会長が分会長を兼務
する手もあるし、私の直前の分会長だった加藤理事も復帰する手もあるではない

か?私はこんな自分本位で無責任な町内会をこれ以上手伝う気はないよ)
  と思いながら早川は帰ってきた。

  (やれやれ、これで町内会とは本当におさらばだ)

  と早川は思ったが、そうは問屋が卸さなかった。4月の初め、同じ東4B分会
のライザ・ミネリこと加藤理事が電話をかけてきたのである。
  「風間さんに後任の分会長をやってもらうことになりました。つきましては分会
長の引継ぎをお願いします」
  加藤さんの口調は命令調で少し怒っているようにも聞こえる。
  「は?はい」
  と早川は受けざるを得ない。
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第11話 ハチのムサシ  その3 ★★★






















           

         


























































































































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