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●小説
 「猫踏んじゃったU」


なつかしの街角

忘れえぬ猫たち

小説「猫踏んじゃった」
喜劇「猫じゃら行進曲」
小説「眠れない猫」

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  「それじゃ、辞任届けに判を押していただきましょうか?」
  と早川委員長が昨晩自宅で作成した連名の辞任届けを、左手前に座っていた
先田副部長に手渡す。
  「あれ?委員長、これには大西さんも載っていますよ?」
  辞任届けを見た先田副部長が疑問を呈する。
  「そうか、大西書記は選考委員ではなかった。早速作り直さなきゃ・・・町内会館
にはパソコンはないのかな?」
  早川は先田副部長の顔を見る。
  「経理部の部屋にはあるけれども、パスワードがあって誰でも彼でも使えませ
ん。管理人の大柴さんなら持っているかもしれません、行ってみましょう」
  2人は早速1階の玄関側の管理人室で大柴さんに掛け合う。しかし、彼のパソ
コンはローマ字入力で、あわてている早川にはかな入力に切り替える方法がとっ
さに浮かばない。
  「すみません、10数行ですからこのとおり打ってもらえませんか?」
  と早川は持参した訂正文書を手渡す。
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  大柴さんは「役員選考委員 辞任届け」のタイトルに一瞬驚くが、何か訳ありとす
ばやく判断し、仕事にかかる。こうして完成したA4の文書を早川は先田副部長と
ともに点検し、3枚印刷してもらう。2人は2階に戻り、早川以下7人の判を押して
辞任届けは完成する。
  早川委員長はただちに宮城会長が自宅にいることを確認して、東野会館のす
ぐ側にある自宅に出かける。
  「ただ今、役員選考委員会を開きまして、その結果『昨日の理事会の状態はあま
りにも無責任すぎる、何のための選考委員会だったのか、これでは役員選考委員
の不信任と同じ事だ』という事になりました。それで私達役員選考委員は3月15
日付けをもって辞任させていただきます。そして、こちらは早川個人の分会長辞任
届けです」
  早川選考委員長はそう言って2つの辞任届けを宮城会長に渡す。宮城会長は
想定どおり、「すまない」とも「困った」とも「後は俺が何とか収拾するよ」とも言わ
ない。
  町内会に戻った早川は、
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  「たった今みなさんの辞任届けを宮城会長にお渡ししました。みなさんの役目は
今日で終わります。長い間ご苦労をお掛けしました、ありがとうございました。仕事
をやり遂げ、みなさんと美味しいお酒を飲みたかったけれども、それもかなわず残
念です」  と深々と頭を下げる。

  早川の仕事はこれで終わりではなかった。大事な竹山保健衛生部長へのお詫
びが残っていた。早川は近くの店で小さな菓子折りを買って竹山氏のご自宅を訪
ねる。
  「私の力不足で昨日はあのような有様となり、竹山部長にはたいへんご迷惑を
お掛けしました。申し訳ありません。ただ今、私を初めとして選考委員全員の辞任
届けを宮城会長にお渡ししてきました。お許しください」
  と早川が心から詫びる。
  「分かりました」
  竹山部長の怒るでもなく、慰めるでもなく、お坊さんのような淡々とした態度に
早川は、(役員選考は選挙のように『やりたい人よりさせたい人』を選ぶべきです。
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謙虚な竹山部長だからなおさら副会長をやってほしかったのです) とも言えず、
  「ありがとうございました」
  とだけ言って、そっとドアを閉める。

  さっぽろ市で大所帯を誇る東野町内会も、役員改選については以上のような
体たらくであった。それでは役員選考委員の全員が辞任した後、次期役員はど
のようにして決まったのか?早川がその後数人の役員から聞いた話をまとめる
と次のようであった。
  3月15日付けで役員選考委員の辞任届けを受け取った宮城会長以下現執
行部は緊急三役会を招集し、事態の収拾策を探った。その結果、新しい選考委
員を選びなおすには総会までの時間が足りず、現三役で検討する事とした。
  3月19日から20日にかけて、現三役で連日協議した結果、宮城会長が「1
年間だけならという約束ならやる」という快諾が得られたと言う。
  3月21日になり、副会長には北村副会長の続投と森村福祉部副部長の新任、
総務部長には先田総務部副部長が候補に上がり、経理部長だけが決まってい
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第11話 ハチのムサシ  その2 ★★






















           

         


























































































































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