　「これじゃあ、役所の見回り活動推進要領の丸写しではないのか？」
　思わず早川が呟く。
　「ほんとだねぇ」　
　右隣の高木分会長もうなづく。
　３月１４日の第１１回理事会は、来る４月２２日開催の定期総会に上程する議
案の審議の後、その他の議題で「見守り推進委員会設置案について」が諮られ
た。
　福祉部を所管している北村副会長が「力を入れないで出来ることからやりまし
ょう」と口火を切る。
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　その議案を見ると、
　《委員会設置の理由と狙い－誰もが安心して暮らせるまちづくりの実現を目指
す》から始まり、《そのための取り組み》《その効果は》《見守り委員会の役割》《見
守り委員会の対象とする方々》《見守り委員会の構成メンバー》と、ほとんど役所
の文書の丸写しとなっている。
　「見守り推進委員会の構成メンバーを見ると、会長・所管副会長・民生委員・分
会長・総務部・防犯防災部・福祉部・白梅会・地域推進員から会長が指名するとな
っているよ、なんか変だと思わない？これまで分会長と民生委員が連携してやる
と言っていたのに・・・」
　武田分会長が疑問を呈する。
　「われわれ分会長が文句ばっかり言ってなかなか動かないから、今度は何が
何でもやらせようという魂胆なのさ」
　早川が苦笑いをする。２人とも、わが町内会は役員の数が減る一方なのに、執
行部と滝川福祉部長が「見回り活動」になぜこんなに執着するのか、理解出来な
い。
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　先に触れたように、東山町内会はさっぽろで１ないし２番目という会員数を誇る

大町内会である。市役所の福祉関係課はその大町内会で高齢者見回り活動の
実績を上げたいのか？東山町内会の会長・副会長は役所に協力して自分の力を
誇示したいのか？はたまた東山町内会は役員改選のたびに不名誉なごたごた
騒ぎを起こしており、そのため上部組織の東町連合町内会役員のポストが取れ
ない汚名を挽回したいのか？
　玉置副会長は、過去に長く福祉部長をつとめ、副会長になってからも福祉部を
所管していた。その功績で市役所の福祉功労賞を２回も受賞したにも係わらず、
現在の滝川福祉部長とはやり方を巡って意見が合わず、福祉部の所管を外れて
いる。　
　当の滝川福祉部長は誰のためにがむしゃらにやっているのか？
　自分のためか、自分を抜擢してくれた大林前会長のためか、次期会長を虎視眈
々と狙う坂本総務部長のためか、玉置副会長のように福祉で市役所に名前を知ら
れたい北村副会長のためなのか？早川は「見回り活動」の主旨は分かるが、わが
町内会の動きを見ると、誰のための活動か常々疑問に思っている。
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　東山町内会では、老齢化もさることながら、加入率は９０％まで下がりかつ町内
会費収入は年々減少してきている。また、排雪費未払い者の増加、役員のなり手
不足などなど根本を揺るがす問題が山積しており、この対策を優先的に議論しな

ければならないはずだが、どうも執行部は、なかでも坂本総務部長は夏祭り・敬老
会・餅つき大会・カルタ大会・社会見学などお祭り騒ぎに目が向いている。

　さて、早川がこんな事を考えているうちに、４月２２日(日)、平成２４年度　東山町
内会定期総会が東山町内会館大ホールで開催された。

　宮城会長が開会にあたり「東野町内会の高齢化率は２０．５％に達し、超高齢化
率２１％に迫りつつあります。私どもはこういう事態に対応し、見回り活動をさらに充
実してまいる所存であります」と歌舞伎役者のようにくどい顔で大見得を切る。
　早川は(誰かが原稿を書いたのか？いつもよりいい事を言うな。考えて見たら会
長職も２年目か)と不謹慎な事を考えている。
　　事業報告と決算の説明が終わると、元経理部長の広島氏より数々の質問が出
る。
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