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私のCD放浪記

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      【番外編】





なつかしの街角

忘れえぬ猫たち

小説「猫踏んじゃった」
喜劇「猫じゃら行進曲」
小説「眠れない猫」

ベトナム四十八景

デジカメ あしたのジョー


イタリアかけある記
  先田氏が苦笑いする。

  最近、若い夫婦が新築した家では、夜になると庭で紅い蛍が飛んでいる。夫が
暗闇で煙草を吸っているのだ。煙草だけではない、「新しい家が煙で汚れる」と、
家の中で焼肉や焼き魚を一切しない妻が増えているとか。
  近所の老夫婦が最近家を建て直したが、そこでもそんな光景が見られる。親父
が昼も夜も玄関前で携帯椅子に腰掛け煙草を吸っているのだ。これは恐妻家か
愛妻家かのどちらかと思われる。

  そう言えば、この頃、早川の家の近辺を杖を突いて散歩する80歳過ぎのお爺
さんを見かけなくなった。
  このお爺さんは近くのマンションの1階に住んでいた。平成22年の国勢調査の
時、脳梗塞にでもなったのだろうか、居間から杖をついて玄関までやってきた。そ
の時、毎日杖をついて近所を散歩している、どてらを着たあのお爺さんだと分か
った。
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  お爺さんは、リハビリーのためか右足を引きずりながら、暑い夏も寒い冬も一日
も欠かさず散歩していたが、10mも歩くと疲れ果てて道端に座り、一服していた。 
  早川も国勢調査以来、道端でそんなお爺ちゃんを見るたびに、
  「お爺ちゃん、頑張っていますね」
  と励ましていた。
  早川の家の右隣には2軒分の草ぼうぼうの空き地があった。持ち主は不明だ
が、春秋の町内会の大掃除には早川が掃除するしかない。そのたびに煙草の吸
殻が大量に見つかる。その場所は何故か早川家の物置際と、もう1軒の塀近く
の道端と決まっていた。
  「悪い奴がいるものだ。車を止めては一服して捨てて行くのか?」
  と早川は思っていたが、それにしては1回当たりの量が多い。
  ある時、早川が用事で家の門を出ると、少し手前を身体を左右に振りながら歩
いているあのお爺さんがいた。早川が後ろにいることに気が付かない。すると、ど
てらの袖から紙袋を出して、早川家の物置際にそっと投げ捨てた。紙袋は背の高
い雑草の茂みに吸い込まれて行く。
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  (犯人はどてらのお爺さんか?)
  そう感じた早川は、
  「お爺ちゃん、煙草の吸殻を投げちゃあ駄目だよ」
  後から声をかける。
  お爺ちゃんは、ぎょっとして後を振り向く。おじいちゃんは、子供がいたずらを咎め
られたように、今にも泣きそうな顔をしていた。
  「今度から止めてね・・・」
  早川はやさしくそう言ってお爺ちゃんと別れた。それ以来、お爺ちゃんの空き地へ
の吸殻捨てはなくなった。
  お爺ちゃんのところへは、娘さんらしき年齢の主婦が毎日食事と洗濯物を届け、
帰りに新たな洗濯物を持ち帰っていた。脳梗塞なら医者も煙草は禁止するし、娘さ
んも禁止していたはずだ。しかし、お爺ちゃんは長年親しんできた煙草を止められ
ず、独り暮らしをいいことに、こそっと隠れて飲んではていた。しかし、吸殻の始末
に困り、散歩の際に道端の草むらに捨てていたものだろう。
  最近はそのお爺ちゃんの姿も見えなくなった。娘さんの姿も見かけない。お爺ち
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ゃんは娘さんと同居したのだろうか?病気が再発して入院したのだろうか?亡くな
ったのだろうか?

  ♭ おれのあん娘はタバコが好きで
    いつも プカ プカ プカ
    体に悪いからやめなって言っても
    いつも プカ プカ プカ 
          「プカプカ」      西岡恭蔵 作詞:作曲:歌

           
なお、西岡恭蔵はおもに矢沢永吉に歌を提供していたが、彼の代表作
          「プカプカ」は、桑田佳祐、奥田民生、宇崎竜童をはじめ数多くの歌手がカ
          ヴァーした事でも有名である。




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第7話 プカ プカ プカ  その6 ★★★★★★






















           

         


























































































































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