きれいな花の写真

デジカメ千夜一夜

かんたん酒の肴 

おじさんの料理日記 

私のCD放浪記

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      【番外編】





●小説
 「猫踏んじゃったU」


なつかしの街角

忘れえぬ猫たち

小説「猫踏んじゃった」
喜劇「猫じゃら行進曲」
小説「眠れない猫」

ベトナム四十八景

デジカメ あしたのジョー


イタリアかけある記

かな小遣いを稼いだ。
  彼とは高校時代そんな関係があり、四郎は大喜びで彼を迎え入れる。

  「へぇー、こんな狭いところに住んでんだ」
  落合君は四郎の四畳半の部屋に入るなり、大声を上げる。部屋には座り学習机
と小さな本棚とラジオと布団しかない。
  「まっ、相部屋でない分、留萌高校の学生寮よりいいか」
  とこんどは慰める。
  「これでもまだ良い方さ、東京や大阪の大学に入った連中によると、お金持ちなら
いざ知らず、貧乏人はたいてい3畳間だってさ」
  四郎が笑う。
  「そんなもんか?とりあえず、一服吸わせろや。お前だって吸うんだろう?」
  落合君は四郎の灰皿を目ざとく見つけ、ハイライトに火をつける。

  「やっち、ビールでも飲むかい?」
  7月に入った狭い下宿部屋では窓を開けても蒸し暑い。自分でも飲みたくなった
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四郎は遠来の客に訪ねる。
  「いいねぇ、気が利くねぇ」
  やっちの顔がにんまりとほころぶ。
  「それじゃあ、重いから近くの酒屋まで付き合ってよ」
  四郎の頼みに、
  「よっつしゃ、まかしとけ」
  と彼は腰を上げる。

  冷えたサッポロビールの大瓶を10本ずつ両手にぶら下げて帰った2人は、下宿
のおばさんに話して、冷蔵庫にビールを預け、コップを借りて四郎の部屋にもどる。
  「乾杯!久しぶりだなぁ」
  と四郎の掛け声で2人の宴会が始まる。つまみは柿の種、ピーナッツ、イカの干
物である。
  「ところで印刷屋の美智子が結婚してさぁ」
  おっちが話し出す。
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  「花嫁は18歳か、色白で目がぱちくりした可愛い娘だったよね。相手は?」
  四郎が驚く。
  「おまはんは知らんかも知れんな。相手は俺と美智子と同じ留萌中学の同級生
で、中学を出てすぐ寿司屋の丁稚になった清水三男さ」
  「そうかい」
  四郎は驚くしかない。
  「それからさ、停学になった川原だが、最近顔を見かけなくなってさぁ、あいつは
寅さんみたいな奴だから、今頃どこで何をしているのか・・・」
  おっちは、留萌に残っている高校の同級生の近況を次から次へと報告してくれ
る。話を聞く一方の四郎はいつの間にかおっちの煙草に手を出していた。2週間続
いた禁煙も元の木阿弥となった。

  あっという間に大瓶ビール20本を空にした時には、午後6時を回っていた。
  「そろそろいい時間だ」
  おっちがくたびれた腕時計を見る。
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  「何の時間?」
  「決まっているだろ、すすき野の開店時間さ。トルコには可愛い姉ちゃん達がお
いらの出勤を待ってるよ」 と言いながら腰を上げ、
  「ごちになったな、お前もたまには留萌に帰ってこいよ、歓待するぜ、あばよ」
  と去っていく。
  四郎はこの時初めて、彼の来札の本当の目的を知る。おっちが突然札幌へ出て
きて、四郎の下宿を訪問したのはトルコに行くついでに過ぎない。
  しかし、彼の昔ながらの人懐っこい顔を見て、留萌にとどまっている同級生のみ
んなの消息を聞いて、うれしくなった四郎は彼を怒る気にはならない。
  「いつもと同じだ、あいつらしいや」
  と独り言を言いながら後片付けをし始めた。
  次の日、猛烈な頭痛に悩まされ、目を覚まし、尿意を覚える。しかし、立ち上がっ
て共同トイレに行こうとしたものの、めまいがしてふらつき、まっすぐに歩けない。ビ
ールの2日酔いはひどく、四郎はその次の日も終日寝ていた。

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第7話 プカ プカ プカ  その3 ★★★






















           

         


























































































































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