きれいな花の写真

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私のCD放浪記

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      【番外編】





●小説
 「猫踏んじゃったU」


なつかしの街角

忘れえぬ猫たち

小説「猫踏んじゃった」
喜劇「猫じゃら行進曲」
小説「眠れない猫」

ベトナム四十八景

デジカメ あしたのジョー


イタリアかけある記
  こい」が発売され、父長治も「いこい」を吸い始めた。両切り煙草はすでに「ゴー
ルデンバット」「ピース」「光」などがあったが、味と価格で「いこい」になったに違い
ない。

  四郎が初めて煙草を吸ったのは留萌高校2年生の時である。
  古いお寺の次男、立花君の家へ遊びに行った時、住職も後継ぎの長男も母親
も不在だった。
  すると、立花君は奥の部屋から親父の吸っていた煙草「ゴールデンバット」とマ
ッチを持ってきた。不思議に思ってみていると、彼は箱から1本取り出し、火をつけ
て吸い始めたのである。
  驚いている四郎に、
  「君もやってみるか?」
  と火がついた煙草をよこす。
  (俺の度胸を試しているのか?)
  と思い、一口思い切って吸って見ると、むせて目が回る。
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  「ははは、初めてだね?」
  立花君は笑って、四郎の指から煙草を取り上げる。そして一口飲んで、火を消
した。その様はいかにも手慣れた様子だった。
  「いつも飲んでいるのかい?」
  早川は思わず訊ねる。
  「たまにね、ちょっといたずらするだけさ」
  と言いながら、彼は親父の煙草を部屋に返しに行った。
  変な話しだが、他人に言えない2人だけの秘密を共有し、それからさらに近しく
なったことは事実だった。

  高校3年にもなると、学校でも吸うやからが出てきた。
  ある時、男子トイレの壁の節穴から煙が出ていたというのである。これにはのん
気な先生方も驚き、四郎の学級の担任も、
  「君達、学校が燃えたらどうするつもりだ、ただではすまないぞ!退学だ!」
  と常習犯と思われる生徒達をにらみつけ、大声を上げる。
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  にらまれた生徒達は、いかにも困ったという顔をして下を向く。しかし、その顔は
笑っていた。
  しかし、事件は本当に起きてしまったのである。いつまでも喫煙を止めない生徒
達に業を煮やしたのか、3年生の3学期、同じクラスの川原君を生け贄にした。そ
れも大学受験準備自宅研修期間の3週間の停学で、卒業に支障がない期間の停
学だった。学校も川原君に留年されたら困るようで、苦肉の策だったに違いない。

  四郎が煙草を常習的に吸い始めたのは、大学1年の時だった。どこのサークル
も新入生大歓迎と、連日連夜コンパが続く。「札幌の歴史を調べる会」に入った早
川も自然と飲み会の回数が増える。酒を飲みながら分かったような口をきき、隣の
部員の煙草をいたずらしているうちに、習慣となってしまったのである。
  毎日が二日酔いで、「酒を飲んだ翌朝は煙草を吸うと頭がすっきりする」とへ理
屈をこねて、いつの間にか常習者になっていった。半年もすると、下宿の狭い部屋
が煙草臭くなり、禁煙を始める。しかし、酒を飲むといつしか煙草に手が出て、禁
煙はいつも長続きしなかった。意志が弱かったと言うしかない。
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  そのうちに、飲み会もじょじょに回数が減って、煙草を吸わない日が2週間にも
なった。
  「今度こそ絶対禁煙できる」
  と自信がわいた初夏のある日の昼頃、留萌高校の同級生、落合君がひょこり
早川の下宿を訪ねてきた。彼は高校を卒業後、地元の石油スタンドで働いていた。
  彼の顔つきは漫才コンビ「やすし きよし」の「やすし」に似ており、性格もやん
ちゃだった。彼は不良のように煙草を吸ったり、質屋通いをしたり、あちこちでアル
バイトをして小遣いを稼いだりしていたが、どこか憎めないところもあり、クラスの
みんなから「やっち」と呼ばれ、好かれていた。
  落合君は、苫前出身で友達があまりいない四郎を可愛そうに思ったのか、何か
と早川に声をかけてきた。後で本人に聞くと、落合君の両親は共稼ぎで毎日帰り
が遅く、妹が1人いたはずだが遊び相手にもならず、家に帰っても淋しかったのか
もしれない。
  夏休みになると、四郎は彼の紹介でアルバイトもした。2人は木工場でおがくず
をトラックにつめこむ仕事をしたり、魚を入れる木箱を作る仕事をしたりして、わず
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第7話 プカ プカ プカ  その2 ★★






















           

         


























































































































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