しかし、道内だけ見ると、
「今年（２０１５）になって、被害者と警察が協力して金の受け渡し場所などで待ち
合わせる『だまされたふり作戦』などの強化により、現金を回収する『受け子』の逮
捕が相次いだ。このため、捜査関係者は『被害者と直接接触しないため逮捕リスク
の低い”振り込め型”の詐欺に回帰しつつある』とみる」
（２０１５．０５．１７北海道新聞）
北海道警察のＨＰには、特殊詐欺事件の解説とその対策については詳しくの掲
載されているが、過去の被害件数と被害額についての統計はない。 唯一載ってい
るのは２０１５（平成２７）年５月末のデータである。
それによると、２０１５（平成２７年）５月末の認知件数は、１３７件、被害総額は６
億１５７万円となっており、前年の２０１４（平成２６）年を認知件数で５２件、被害総
額で１億７，２６５円すでに超過している。
被害件数の方面本部別件数は、札幌８７件、旭川１９件、釧路１５件、函館１３件、
北見３件の順となっている。
141
また、被害の種類別では、多い順に、架空請求詐欺６２件、オレオレ詐欺５４件、
還付金等詐欺７件、融資保証金詐欺５件、金融商品等取引４件、ギャンブル必勝
法情報３件、その他一件となっており、オレオレ詐欺が最多の全国統計と傾向が異
なっている。
「町内会も見守り活動をやるより、振り込め防止対策をすべきでないだろうか？
介護が必要な老齢者は、すでに病院か介護施設に入っていると思うし、軽度なら
介護ヘルパーが出入りし、緊急連絡先も当然把握していると思うんだ。緊急の場
合は救急車を呼ぶという事は何よりも当人が知っていると思うよ。死ぬ時の対策も
重要だが、死ぬ前の生きている時の対策が今求められているのではないか！」
と、久井理事が大声を上げてテーブルをドンと叩く。
周りのお客が眉間に皺を寄せている。
「そこまではいいとして、誰がどのようにやるんですか？」
早川が久井理事の顔を凝視する。久井理事は町内会三役と、福祉部の顔を１
人１人思い浮かべている。
142
「どうです？おっしゃる事はもっともですが・・・」
早川が返事を求める。
「むむむ・・・どう考えても、今の面々では無理だなぁ」
と言いながら久井理事が目をしょぼつかせる。
「久井先輩、結論が出たところで、そろそろ返りましょうか？」
小宮理事が久井の腕を取る。
「悲しいけれども、これが現状か？」
と言いながら、久井理事がよろよろと立ち上がる。
「早川さん、今日のお勘定は？」
小宮理事が心配する。
「いいよ、いいよ。先に帰って・・・小宮さん、久井先輩をご自宅まで送ってね」
「分かってますよ」
こうして早川は２人を送り出す。
「お父さん、ご飯よ」
143
階下から妻の景子が呼ぶ声がする。四郎は昨夜の酒の重い頭を振りながら階段
を降りる。顔を洗い、食卓に座ると、味噌椀のそばにとろろ昆布の袋があった。
不思議な顔をしていると、
「お母さんが年末送ってくれたでしょ」と景子が笑う。
「とろろ昆布なら札幌でもあるのに・・・」
と言いながら早川は味噌汁につまんで入れた。
♭ かあさんが 夜なべをして
手袋あんでくれた
木枯らし吹いちゃ 冷たかろうて
せっせとあんだだよ
ふるさとの便りはとどく
いろりのにおいがした
「母さんの歌」 窪田 聡 作詞：作曲
144
