きれいな花の写真

デジカメ千夜一夜

かんたん酒の肴 

おじさんの料理日記 

私のCD放浪記

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      【番外編】





●小説
 「猫踏んじゃったU」


なつかしの街角

忘れえぬ猫たち

小説「猫踏んじゃった」
喜劇「猫じゃら行進曲」
小説「眠れない猫」

ベトナム四十八景

デジカメ あしたのジョー


イタリアかけある記
  「こんにちわ、きれいな花ですね」と早川は声をかける。
  「はい?」と振り向いた顔を見ると、何と昨年の寒い日に柿をもってきてくれたお
婆ちゃんだった。
  「昨年は美味しい柿をありがとうございました」
  早川は思わず笑顔で挨拶をする。
  「ああ?」
  と言いながらお婆ちゃんもようやく早川に気づいた様子である。 お婆ちゃんにも
笑みがこぼれる。
  「ほんの少しでね・・・」
  お婆ちゃんは照れくさそうに笑う。
  「寒い中、重たかったでしょう?足は大丈夫?」
  「大丈夫だよ、もう何年も前から足が震えてね、病院にかかっているから大丈夫
さ」と笑う。
  話しているうちに、80歳前後と思われる庄子お婆ちゃんは、5年前に連れ合い
をなくし、今は独り暮らしで過ごしている事、息子は東京にいるが、年に数回は故
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郷の札幌に母の安否を見に帰ってくる事、狭い庭ながら花を育てるのが生きがい
となっている事などが分かった。

  早川が、ここまで庄子お婆ちゃんとの思い出をたどった時、久井理事の言う間
岩川近辺に住むオレオレ詐欺の被害者は庄子お婆ちゃんではないと思った。
  1つは独り息子と適度の連絡が取れている事、1つはまだぜんぜんボケていな
い事、例え悪い奴が金の振込みを要求しても、足が悪く、銀行までは短時間でい
けない事、などなどがその理由である。
  「しっかりしている人は引っかからないと思うけど・・・」
  早川がそう言うと、
  「しっかりした人ほど被害に遭うらしいから・・・そういう点ではうちの町内会役員
に被害者は出ませんよ。しっかりした人はそんなにいないから・・・」
  と小宮理事が笑う.
  「歳を取ると、思い込みが多くなるからね・・・しっかりしていても、しっかりしてい
なくとも気をつけなきゃね」
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  早川がお2人の顔を見る。
  「そういう事、お互い気をつけなきゃ・・・」
  久井理事が笑う。

  こんな話をしているうちに、新年交礼会も終わり、3人は家路につくべく町内会
館前側の交差点に立って信号待ちをしていた。
  すると、
  「小宮さん、早川さん、もう一軒、どこかへ行こうや?」
  酒を飲んで、ユデダコになった久井理事が2人を二次会に誘う。  
  「う?」
  久井理事の誘いに早川は心が揺らぐ。開会前に玉置副会長のカラオケの誘い
をさりげなく断った早川は釈然とせず、もう少し飲みたい気分でもあった。みんな

も自宅に帰ってもテレビの前で舟をこぐのが関の山である。

  「それじゃあ、向かいのドッキリピンキーに行きましょうか?」
  早川が答える。
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  「そこは自宅に近くていいや」
  久井理事がニヤリと笑う。
  ハンバーグ定食で有名な店も午後7時を過ぎると、空席がそこそこあった。3人
は空いているボックスに陣取り、それぞれ好みの飲み物を注文する。
  「それじゃあ、本日はお疲れさんでした。乾杯!」
  早川の音頭で二次会が始まる。
 「さっき、久井先輩が『オレオレ詐欺』って言ったけど、最近では『振り込め詐欺』っ
て言うんでないかい?」
  小宮理事が言う。
  「そうか、手口もだんだん巧妙になってきたからなぁ」
  久井理事が素直に認める。
  「それにしても、振り込み詐欺は後を絶ちませんねぇ」

  と早川が言う。
 

  オレオレ詐欺の手法そのものは、少なくとも1990年代に存在していた。しかし、
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第6話 母さんの歌  その2 ★★






















           

         


























































































































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