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小説「猫踏んじゃった」
喜劇「猫じゃら行進曲」
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イタリアかけある記

  これに比して、旦那を先になくした妻は、稀に悲嘆にくれている場合もあるが、そ
うでない場合が多い。たいていの場合、一時悲しそうな素振りを見せるが、内心は
そうでもなさそうに見える。何事にも五月蝿い旦那が亡くなり、手かせ足かせが消
えて、後は自分の思いのままなのか・・・年金が減っても、使い方は自分の思いの
ままなのか・・・一般的に元気ハツラツ、オロナミンである。
  これは男性の僻みなのだろうか?ご存知のように、神様は女性に「出産」という
苦痛を与えたもうた代わりに、身体も丈夫に創った。女性は生命力・忍耐力が強く、
平均寿命は男性よりはるかに長い。

  それにしても、日本人の平均寿命は長くなった。新聞の「死亡広告」や「おくやみ
欄」を見ても、享年令は80歳以上がざらにある。100歳前後の人もいる。最後ま
で元気で自宅にいたのか?アルツハイマーや老齢で介護施設にいたのか?はた
また病気で入院していたのか?早川が子供の頃、両親たちがよく口にした「人生
50年」という言葉が信じられない。

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  日本人の寿命が伸び、長生きをするようになってから、葬式の形態が変わってき
たのは事実である。

  先に触れたように、葬儀の規模がだんだん小さくなってきたのである。現役で亡
くなったのならいざ知らず、高年齢になればなるほど元の職場の人たちとの付き合
いはうすくなり、身体が動かなくなれば近所づきあいもうすくなる。
  高年齢になれば、これまでの交際相手もかなりの高齢になっている。とうに亡く
なった人もいるはずである。例え、存命だとしても、遺族が葬儀の案内を出そうと
しても、連絡を受けた当の相手が自宅にいるかどうか?自宅に住んでいたとして
も交際相手の事を思い出せるかどうか?思い出したとしても葬議場まで独力で行
き来できるかどうか?疑問である。
  葬儀の案内を受けた交際相手の家族の事情を考えると、遺族は葬儀の案内を
うかつには出せない。そうなると、必然的に葬儀の案内を控えざるを得ない。こう
いった事で、亡くなった連絡や葬儀の案内を控える事となる。

  昔は狭い地域社会で助け合って生きており、地域内の人間関係は濃厚であっ
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た。他所の家についても家族の名前や職業、子供の学年まで知らない者はいな
かった。したがって地域社会の誰かの冠婚葬祭に参加するのは当然のこととして、
共に喜んだり悲しんだりしたものであった。
  戦後の高度成長期に入り、働き手は職場を求めて地元を離れたり、高校や大
学への進学も都会に出るようになり、地域社会が崩壊していった。大会社の勤め
人や教師達も転勤を繰り返し、勤めを終える頃には交通の便が良く、病院の多い、
住みやすい小都会へと終の棲家を求めていく。
  こうして歳を取ってからの新しい地域社会への編入は、近所づきあいが短く、う
すくなってしまうのは当然の理であった。その結果、隣の人は何をする人かも知ら
ずに過ごし、冠婚葬祭も知らせず、参加せずの状態になっていく。

  「ところで山内経理部長、奥さんのご両親の具合はどうなんですか?」
  早川が思い出したように訊ねる。
  「ああ、上さんの母親が具合が悪く、長い事岩見沢の病院に入院していたが、
ついに亡くなったよ」
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  「亡くなった?」
  早川が驚いて聞き返す。
  「うん、先月にね・・・一周忌がすんだら神さんの父親を引き取る事にしたよ・・・そ
れまでに家を改造しなきゃね・・・それがおおごとさ・・・」
  「そりゃあおおごとだねぇ・・・」
  早川が相槌を打つ。
  彼はこれまで自分の経歴や家庭の事はほとんど話したことがない。彼の前職
についても、2年前、初めて分かった。
  夏祭りの時、同い年の山内が重いベニヤ板を軽々となどを運んでいたので、非
力の早川が驚嘆し、その訳を尋ねると、
  「元は大手ゼネコンの関東支社の総務課長をやってたのさ・・・それで棚卸の
時は建築資材
を動かしていたから、自然と体力がついたのさ・・・」と笑って答え
たのである。その時、彼の前歴が初めて分かったのであった。
  総務課長をしていたせいか、経理にも精通しており、古い役員でも、支出にあい
まいな点があれば厳然と理由を追求し、問いただす・・・権力に迎合しない真摯な
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第4話 時代はまわる  その3 ★★★






















           

         



























































































































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