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忘れえぬ猫たち

小説「猫踏んじゃった」
喜劇「猫じゃら行進曲」
小説「眠れない猫」

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イタリアかけある記

    

  「おっ、今回は葬儀に参列したんだ?」
  山内経理部長が早川の持参した葬儀の領収証を見て、にやりと笑う。
  「昨日、たまたま新聞の『おくやみ欄』を見ていたら、この人の葬儀日程が載って
いたのでお参りしてきたよ・・・見た以上行かないわけにも行かなくてね・・・」
  早川は照れ笑いをする。 
  ここは、東野町内会館の2階の経理部屋である。毎週火曜日と金曜日には山内
経理部長とアシスタントの寺崎女史が出勤し、現金の出納と経理事務を行ってい
る。
  「分会長もたいへんよね、分会員の家族に不幸があったら、弔問に行ったり葬
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儀に参列しなきゃならないから・・・」

  寺崎女史が同情する。
  「最近は家族の誰かが亡くなっても新聞にも載せない家が多いから、分会長の
耳に入るのは葬儀が終わって何日も経ってからさ・・・そのため自宅にお参りする
方が多いよ・・・」
  早川が笑って答える。
 
  東野町内会では、会員と同居している身内が亡くなった場合、弔慰金5,000
円をお届けする事になっている。亡くなった人が三役経験者の場合には現三役
が葬儀に出席する事もあるがそれはごく稀で、ほとんどの場合は分会長の仕事
となっている。
  弔慰金は分会長の立替で、週2回の経理部出勤日に領収証と引き換えで立替
金をもらう事となる。葬儀に気が付かず、後日ご自宅へお参りする場合は、葬議
場での領収証がない場合もあり、早川はパソコンで作った会長宛の領収証を持参
し、遺族に判を押してもらってくる。
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  早川は、葬儀場に行っても自宅に行っても、平服で出かけるわけにもゆかず、

喪服に白ワイシャツ、ネクタイ、黒靴、数珠と支度が大変である。細かい話だが、

葬議場や自宅までのガソリン代やワイシャツのクリーニング代などの支出もある。
この他にもあれやこれやと目に見えない支出もあり、年度末の僅かな分会長手当
てではまかないきれないが、早川はこれも社会奉仕の一環と割り切っている。

  早川はある朝、新聞の「おくやみ欄」を見ていたら、近所の知った名前が載って
いた。旦那と思しき名前と死亡月日と享年令が載り、「葬儀は過日執り行いました」
とある。
  (ひょっとしたら、あの古田さんの旦那さんか?)
  古田さんの家は、回覧文書を届けるたびに、「辞めたい、辞めたい」を連発する
斉藤班長の数軒手前にあった。古田さんのお宅は、数年前に新築したばかりの
総2階建ての家で、2階に息子夫婦でも住んでいるのか、黒い大きなランドクル
ーザーが駐車している。車の出入りのためか、塀はなく、駐車場の左に約2坪ほ
どの細長い花畑があり、新しいバラの苗木が10数本植えてあった。
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  ある時、交差点近くの郵便ポストにハガキを投函すべく中道を歩いていると、そ
のバラが初めての花を咲かせていたのである。その初々しさに見とれていると、

玄関から家人が出てきた。相撲取りのような頑丈な体格をしたお婆さんが、その
母親と思しき小さなやせたお婆さんを車椅子に乗せていた。
  「こんにちわ、お出かけですか?」
  と早川が挨拶すると、車椅子を押している大きなお婆さんが、
  「ええ、ちょっと病院まで・・・」
  と答える。
  「そうですか?バラがとてもきれいで・・・見とれていました」
  「今年初めて咲いたばかりで・・・右手横にもバラがありますから、どうぞご覧にな
ってください。それじゃ、出かけますので・・・」
  と控えめながらうれしそうである。
  「お気をつけて・・・」
  小さなお婆さんを載せて大きなお婆さんが押した車椅子は、タクシーを拾うのか、
交差点のある方へ向かう。後から見ると、車椅子を押しているお婆さんの大きなお
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第4話 時代はまわる  その1 ★






















           

         


















































































































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