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子を片付けるよう申し入れてください」などなど・・・
  これらはほとんど男性理事の意見である。しかし、ひな壇の三役は誰一人として
答弁しない。今年副会長になったばかりの大沢副会長も周りの旧三役をおもんぱ
かってか発言しない。
  坂本総務部長は、自分以外の三役が誰も答弁しないのを待っていたかのように
おもむろに話し出す。
  「だいたい問題点が出尽くしたと思います。それぞれ反省し、来年に備えたいと
思います・・・それでは時間も迫っていますので・・・会長に、ご苦労さん会の乾杯の
発声をお願いします」  と会長の方を見る。
  すると会場がいっせいにざわめく。まったく予想通りの進行に、早川は唖然として
いた。
  「それでは皆さんのご苦労に感謝し、乾杯をしたいと思います。飲み物はコップ
に入りましたか?・・・それでは乾杯!」
  一口飲んだ宮城会長は

  (やれやれ、ようやく面倒な儀式が終わったか)と笑っている。
069


  見ていると、古い役員たちは
  「いつものショーが終わった、後は飲んで帰るだけ・・・」と黙々と食べて飲んでい
る。みんな坂本総務部長のワンマンショーに根負けしているのかもしれない。

  「何のための反省会かねぇ?」

  昨年役員になったばかりの小宮理事が紙コップのビールを置いて言う。
  「私が『指令系統がなっていない』と大事な指摘したのに、執行部は何の答弁も
ない。あんな答弁じゃあ、夏祭りに参加した役員のガス抜きにもならない。かえっ
て、不満を高めているに過ぎない」
  と久井理事が怒る。
  「『夏祭りの作業マニュアル』だってそうさ、古い役員は何度も経験して身につい
ているかもしれないが、初めて取り組む新参者は一度ぐらい聞いたってとても頭に
は入らないよ・・・マニュアルでも作ってもらって説明してもらわないと・・・それに年
に一度の行事だよ、一度くらい聞かされたって覚えられないよ・・・入ってくる役員も
みんな歳だし・・・」
070


  3年前に役員になった高木分会長も苦労したと見え、理事会で「新しい役員に何

の説明もない、マニュアルがない」と常々発言している。

  「そのとおり!」

  日本酒が効いてユデダコのように赤くなった久井理事が大声を出す。

  「昨日の晩飯も覚えていないしね?」  小宮理事が久井理事を冷やかす。
  「あんただって覚えていないだろう?」
  久井理事が切り返す。
  みんながひとしきり笑った後、静寂が漂う。少しして、
  「こんな状態じゃあ、この町内会も誰が『あんたが大将』か、まったく分からない
よ・・・」
  小宮理事が真顔になってぽつりと言う。
  「見ようによっては、大林前会長だとも言えるし、宮城現会長だとも言えるし、坂
本総務部長だとも言えるよ。ただし、どの人も『あんたが大将』と呼ばれるにふさわ
しい人かどうか?『あんたが大将』と半分皮肉って呼んでいるが、そう呼ばれる人
は尊
敬されるに値する実績なり信頼される行動があるのではないだろうか?」
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  これまで黙って聞いていた早川が話す。
  「なるほど、そういう見方もあるか・・・」
  耳が遠い久井理事にも早川の言葉が聞こえていたようだ。
  「そういう意味では、先のお三方も五十歩百歩かもしれない、功罪半ばし、一長一
短あるから・・・しかし、三役以外の役員は今の状況をどう思っているのかなぁ?」
  早川が疑問を呈する。
  「何も考えていないんじゃないか?そうとしか思えない」
  久井理事は口を尖らす。
  「みんな暇で、する事がないから、町内会に参加して、暇つぶしをしているのさ・・・
ちょいとした仕事もあるけど、みんなと会話も出来て、たまには酒を飲んだりカラオ
ケも出来る・・・みんな何も考えてなんかいないよ・・・」
  高木分会長が事も無げに言う。
  「実態はそうかもしれないが、それじゃあ老人ホームと同じだよ、さびしいなぁ」
  早川は口に出しかけた言葉を飲み込んでいた。


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第3話 あんたが大将  その6 ★★★★★★






















           

         





























































































































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