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 「猫踏んじゃったU」


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忘れえぬ猫たち

小説「猫踏んじゃった」
喜劇「猫じゃら行進曲」
小説「眠れない猫」

ベトナム四十八景

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イタリアかけある記

いて」
  巻尺本体を持った宮城会長が小宮理事を指名する。
  「私が?」  小宮が怪訝な顔をする。
  「そう、あんた、時間がないんだ、早く歩いて!」
  宮城会長は昨年入ったばかりの小宮理事の名前を覚えていない。宮城会長に
にらまれた小宮は巻尺の端を持って、しぶしぶ歩き出す。
  「前に砂の遊び場がありますーっ」
  と戸惑う小宮に、
  「それもどんどん超えて行って」
  宮城会長はまだまだ距離が足りないと小宮をけしかける。
  「ありゃ、前方は小山です」
  小宮が悲しい声を上げる。
  「どんどん行くっ!」
  と宮城会長が遠くから号令する。
  小山は目の前の人工の小山を転ばないように前かがみになり、手をつきつき上っ
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ていく。いつの間にか小宮は小山のてっぺんに立っていた。小宮理事が背を伸ばす
と、
  「止まれーっ、そこがちょうど30メートルだ。そこから花火の打ち上げ場所まで観
客が入らないよう、地面にビニールロープをはってくれっ!」
  宮城会長は周りの役員に指示する。
  「小山のてっぺんですか?観客が北側の斜面に滑ったらなお危険ですよ」

  現実的ではないと早川が意見を述べる。他の役員もうなづいている。
  「そこでいいんだ。俺は東消防署へ行って届出をしてきたんだ、これを守らない
と俺の花火の資格が取り消されるんだ。みんなあそこまで行って線引きしてくれ」
  と宮城会長は周りのみんなに命令し、小宮理事が手を離した巻尺を巻いて戻し
ている。みんなは気が進まないまま、ぞろぞろと花火の打ち上げ場所から小宮の
立つ小山のほうへと移って行く。
  (あんたの資格より、けが人を出さない方がベストなのに・・・町内会の花火大会
の線引きでけが人が出たら物笑いになる)と早川は思う。
 
054


  早川らは小山のふもとまで行って、線引きをためらっていると、

  「何もたもたしてんだ、早く線引きを早くしろよ」
  と今度は坂本総務部長がやってきた。
  「会長は小山の上が境界ですと・・・」  早川が宮城会長の方針を伝えると、

  「危ないから、そんな小山の上にしなくてもいいんじゃない?平らな地面にしろ
よ」
  坂本総務部長が言う。

  「総務部長から会長に言ってくださいよ」
  近くで様子を見ていた新しい体育部長の細川が坂本総務部長に言う。
  「分かった」
  坂本総務部長はそう言いながら、宮城会長のいる花火の打ち上げ地点へ向
かった。

  (2人は犬猿の仲だ、はたしてどうなることやら?)
  と、早川たちが気をもんでいるところへ、北村副会長がやってきて、冒頭の展開
となったのである。
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  早川は北村副会長の先の物言いにむっときて口を返す。
  「盆踊りの時間が迫っているのはよく分かっています。しかし、ご存知のように花
火の親方が2人いて、観客を打ち上げ場所からどれだけ離すのか、それぞれ見解
が違うのです。どっちも譲らないのです。どうしたらよいのですか?北村副会長、何
とかしてください」
  東山町内会には、花火の打ち上げを出来る人が2人いたのである。2人
は、ど

ちらも自分の考えを主張して譲らない。使われる早川たちは閉口していた。
  北村女史は早川の要請に困った顔をし、
  「そんな事・・・」  と言ったきり動こうとしない。
  しばらくして、宮城会長と坂本総務部長が大声で言い争いをしながら早川たちの
ところへもどって来た。しかし、2人は相変わらず「小山のてっぺんでいいんだ」、「そ
のふもとで十分でしょう?」と、お互いの見解を主張し、譲ろうとしない。
  気が付くと北村副会長はいつの間にか姿を消していた。
  結局、会長ががんとして譲らず、原案通り、小山のてっぺんから線引きをする事
になった。こうして盆踊り開始ぎりぎりに線引きは決まった。
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第3話 あんたが大将  その2 ★★






















           

         



























































































































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