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私のCD放浪記

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      【番外編】





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忘れえぬ猫たち

小説「猫踏んじゃった」
喜劇「猫じゃら行進曲」
小説「眠れない猫」

ベトナム四十八景

デジカメ あしたのジョー


イタリアかけある記

  「そうなんですが、みんな守らないんですよ。家の裏の小山の上で打ち上げ花火
を上げるもんだから、うるさくてうるさくて・・・」  
  たしかに長谷川さんの家の裏手には、公園造成のときに、池や小川を掘った土
砂を積み上げて造ったと思われる小山があった。ここに登ると公園が一望できる。
冬は小さい子供達のソリすべりの格好の場所となっている。
 (お年寄りは早く起きて早く寝るからなぁ)
  宵っ張りで朝寝坊の早川は同情する。
  「困りましたねぇ・・・」
  「注意しようにも、相手は中学の男子で、身体も大きく、恐いですよ・・・何される
かも分かりませんし・・・」
  と長谷川さんの奥さんは続ける。
 「中学校の先生から注意してもらうのがいちばんですが、すでに夏休みに入って
しまっていますから・・・」  早川も解決策が見つからない。
  「町内会で何とかなりませんでしょうか?」
  長谷川さんの奥さんは引き下がらない。
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  (待てよ、この問題は町内会の仕事かどうか分からないが、ここは自分の分会で
はない、この地区は高木分会長が担当する東5分会だ)
  と早川は思いながら、
  (そういえば、高木分会長の家は公園の右出口にあったはずだ)
  「お婆ちゃん、状況はよく分かりました。ここの分会は東5分会ですから、高木分
会長とどうしたらよいかよく相談してみます」
  「お願いします」
  長谷川さんの奥さんは
  (この町内会役員も役に立たないなぁ)  という様子でしぶしぶ返事をする。
  早川は解決策を見出せないまま、その場を離れることとなった。
  帰り道、早川はある事に気が付いた。
  (お婆ちゃんは高木分会長をよく知っているはずなのに反応がなかった。また高
木分会長もすぐ側に住んでいるから状況は分かっているはずだ)
 
  次の日のラジオ体操の時に、高木分会長にこの話をすると、
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  「南公園の管理は東山町内会ではないもの」
  と、まるで取り合わない。確かに小さな公園は市役所から管理を委託されている
が、こん大きな公園は町内会の手に負えない。
  「それでも、長谷川さんの頼みだから、市役所に状況を話しておいた方が良いと
思いますよ。禁止事項の立て看板をもっと目立つように作ってくれとか・・・」
  早川は高木分会長に頼む。
  「そうだねぇ・・・分かったよ」
  高木分会長は何か気のない返事をする。
  (もしかして、高木分会長は長谷川さんの要請を聞いていたのかも知れない・・・
もし、自分が高木分会長の立場だったとして、大きくていかつい中学男子に注意で
きるかどうか・・・)  早川には自信がなかった。

  ラジオ体操の期間中にこんな事もあって、いよいよ最終日を迎えた。
  最終日には、ボールペン・下敷き・メモ帳などの文具があたるとあって、いつもよ
り参加者が多い。お立ち台に立って模範演技を披露してくれた生徒達には2個ず
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つあたる。ささやかな物ながらみんなうれしそうである。
  「みんな、来年まで元気でなぁ」
  ラジオ体操が終わってほっとした早川が思わず声をかける。

  その時であった。
  「早川分会長、来年はラジオ体操の責任者をやってみないか?」
  山田分会長が笑顔で寄って来た。
思いがけない提案に早川は戸惑いつつ、
  「私は朝起きに弱いから、寝坊したらみなさんに迷惑をかけますので・・・」
  と婉曲に断る。
  「そうか・・・」
  山田分会長はそれ以上何も言わなかった。
  来年3年目を迎える早川に仕事を譲ろうとしたのか、責任感を持たそうとしたの
か、真意は分からない・・・早川は内心ほっとした。


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第2話 ラジオ体操  その6 ★★★★★★






















           

         



























































































































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