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小説「眠れない猫」

ベトナム四十八景

デジカメ あしたのジョー
  木枯はノックアウトパンチを浴びて再起不能の状態であった。夢遊病者のごとく
家に帰り、ショックのあまり寝込んでいたのである。当然、祝賀パーティに出かける
元気もなかった。

  ジャガービアホールの祝賀パーティ会場では開会時刻となっても主賓の木枯が
現れないのでざわめき始める。
 「開会の時刻となりましたが、ただ今木枯社長は会場に向っているとの情報が入
りました。どうも道が渋滞しているようです。お忙しいところ誠に恐れ入りますがもう
少しお待ちくださいますようお願い申し上げます」
  神田は何食わぬ顔で丁重な言葉を使い開会の時間稼ぎをする。
  しかし、ものの5分もしないうちに再び私語が始まる。 
  これ以上待たせられないと見た立川が立ち上がる。
 「みなさん、お忙しい中お集まりをいただき誠にありがとうございました。主催者とし
て厚く御礼申し上げます。主賓は間もなくお見えになると思いますが、ここでクイズ
です。さて、みなさん、今日は何の日でしょうか?」
 「何だったっけ?」
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  集まった客がお互いの顔を見つめあう。しばらくして立川が答える。
 「答えはエイプリル・フールです。本日の受賞パーティは木枯らしい、用意周到な壮
大なエイプリル・フールなのです」
  立川理事長の説明に会場は騒然となる。事務局の神田も金森も黒川も何が何だ
か分らなくなる。
 「あまりにも事がうまく運んだので、本人も顔を出し辛いのでしょう。しかし、本心は
みなさんに感謝したいという気持ちで始めた事です。今日はくしくも猫じゃら工房が
設立されてからちょうど4年が経ちました。そのためこれまでご協力いただいたみな
さんとともにお祝いしたいと言う彼独特のパフォーマンス、サプライズです。どうぞそ
の趣旨をご理解いただきお許しを得たいと思います。
  短い時間ですが、どうか楽しい一時をお過ごしくださいますようお願い申し上げま
す。今後猫じゃら工房と猫じゃら小路商店街振興組合が手を取り合ってますます発
展するよう祈念し、お祝いの言葉といたします。本日は誠におめでとうございました。
間もなく木枯社長が登場するはずです」
  立川理事長の祝辞に会場は割れんばかりの拍手が続く。
  廊下には木枯がすでに到着しており、立川の祝辞を涙ぐんで聞いていた。
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 (友達とはありがたいもんだ、立川の厚意に応えなきゃ・・・・・・)
  と木枯は意を決して両手を上げて会場に入る。
 「お待たせいたしました、うそつきの天才木枯です」
  木枯の元気な第一声に会場は割れんばかりの拍手を送る。木枯は来場者の顔を
ひとりひとり見回し、さらに続ける。
 「どうだい?びっくりしただろう?こんなにうまくいって仕掛けた本人もびっくりさ。しか
し、考えてもごらんなさいこんなろくでなしが市民栄誉賞なんかもらえる訳がない。そ
れにしてもこんなに集まってくれてありがとう、感謝感激です。俺は幸せもんです」
  木枯の目から今にも涙がこぼれそうであった。それを堪えて木枯はさらに続ける。
 「立川理事長の言うとおり今日は猫じゃら工房の創立4周年記念日です。本来なら
こちらがみなさんをご招待しお祝いするところですが、甲斐性がないのでついついみ
なさんの懐に甘えてしまいました。 不肖木枯福三は猫じゃら小路商店街発展のため
に死ぬまで全力を尽くしてまいります。今後ともご指導とご協力のほど、よろしくお願
い申し上げます。本日は誠にありがとうございました」 
  と木枯が深々と頭を下げる。会場に盛大な拍手が響く。
  (今日の司会は金森支配人の予定だったが事の成り行き上仕方がない)
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  神田がふたたび立ち上って司会する。
 「それではお待たせしました。祝杯のご発声をメンズ・ジーンズの高橋社長にお願
いいたします」
 「みなさまお馴染みの高橋です。今日は久し振りに自分の人の良さを再確認させて
いただきました、それも大金を払って・・・・・・4月1日は一生忘れません・・・・・・(爆笑)
それはさておき猫じゃら工房4周年おめでとうございます。木枯社長と神田事務局長
のアイデア、そして行動力にはいつも感服しております。今後ともお元気でわれわれ
を引っ張っていただきますようお願い申し上げ、乾杯の言葉といたします。それではみ
なさん『おめでとう』で乾杯しましょう・・・・・・おめでとう!」
 「おめでとう!」
 「おめでとう!」 と会場に元気な声がこだまする。市民栄誉賞受賞パーティの熱
気は高まるばかりであった。



                                               (完)
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第17話 市民栄誉賞  その6 ★★★★★★






















           

         



































































































































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