きれいな花の写真

忘れえぬ猫たち

デジカメ千夜一夜

かんたん酒の肴

おじさんの料理日記

喜劇「猫じゃら行進曲」



小説「眠れない猫」

ベトナム四十八景

デジカメ あしたのジョー
 「何が便利な物か?あれのお陰で公衆電話が極端に数少なくなってしまって俺は
大迷惑だ。さあ、帰ろう」
  携帯電話を持っていない木枯は腰を上げる。
 (子供みたい)  まり子はそう思いつつ父親のような年齢の木枯を見送る。
  こうして国の内外ともに騒がしかった2010年がか終わりつつあった。

  余談だが、アナログとも言うべき古い店とデジタルとも言うべき新しい店が混在す
る猫じゃら小路の周辺にも新しい芽が育ちつつあった。それは「にゃんにゃんバレー」
と呼ばれるIT関連の個人企業群で、果たして猫じゃら小路のカンフル剤になれるか
その動きが大いに注目されている。

  2011年も3月に入ったある日の事、仏壇屋蓮華堂では店舗の正面のリニューア
ルでてんてこ舞いをしていた。
  春分の日まで後幾日も残されていない金森支配人は工事の進捗状況の管理と改
築記念セールの準備で休む暇もない。
 「番頭、忙しそうだな」
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  木枯社長が笑い顔で金森支配人に声をかける。
 「は?木枯社長?お陰様で」
 (あの人が笑いながら入ってくるとは?珍しい事もあるもんだ)
  金森支配人はびっくりして答える。
 「そのうちお前にも良い事があるよ」
  と言いながら木枯は嬉しさを隠し切れず階段を2段ずつ駆け上がる。

  しばらくして木枯がドタンドタンと大きな足音を立てて降りて来て、
 「まったくあいつは俺のいう事を信用しないんだから・・・・・・」
  と独り言を言いながら金森に挨拶もせずに帰って行った。
 (神田さんと何かあったな?)
  そう思った金森は自分の仕事が忙しい事も忘れ、2階へ上がって行く。
 「神田さん、木枯社長はご機嫌斜めの様子でしたが・・・・・・」
  と神田に声をかける。
 「まったく無茶苦茶な話さ、木枯社長が市民栄誉賞を受けるんだって?」
 「まさか?そんな?」
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  金森がこけそうになる。
 「誰だってそう思うだろう?木枯先輩は赤十字や社会福祉の仕事をしている訳では
ないし、やっていると言ったらババア相手の社交ダンスとかジジイ相手の囲碁くらい
な物さ・・・・・・それがどうして表彰を受けなきゃならんのさ」
  神田は憤懣やるかたない様子である。
 「表彰の理由は?」
  金森が訊ねる。
 「猫じゃら小路商店街の振興だと」
 「うそっ、実際にやっているのは神田さん達でしょう?」
 「俺がやっているとは言ってないよ、ただこの程度の事で表彰の対象になるかなと
思ってさ・・・・・・市民栄誉賞の値がないよね」
 「何かの間違いではないの?」
  金森はなおも疑う。
 「さっぽろ市の経済振興部長から直々の電話があったんだと・・・・・・」
 「ほんとかぁ?」
 「本人が言うから本当だろう」
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 「紙切れはないの?」
 「相手は『現時点ではあくまでも内定で、おいおい準備の都合もあろうからとりあえ
ず電話でお知らせする』と言ったらしい」 
 「そうなんですか?またまた忙しくなりますね?」
 「そう、祝賀パーティを準備しろと言うんだ」
 「祝賀パーティ?」
 「それもグランドホテルでね、何を考えているんだか」
 「そうですよね、春の叙勲じゃないですからね、ちょん月食堂がちょうど良いと思いま
すよ、料金も安くつくし・・・・・・」
  金森支配人が提案する。
 「ちょん月食堂には悪いけれどもそれでは本人が納得しないよ・・・・・・せいぜいサッ
ポロジャガービヤホールぐらいにしなきゃ、あそこなら佐々木支配人に無理を頼めそ
うだし」
 「そうですね、会費制ですか?」
 「木枯先輩は猫じゃら小路商店街に貢献したのだから、街振興組合の理事長に全
額出してもらえと言うんだ。それは虫が良すぎるよね、それで会費制にすると言った
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第17話 市民栄誉賞  その3 ★★★






















           

         



































































































































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