きれいな花の写真

忘れえぬ猫たち

デジカメ千夜一夜

かんたん酒の肴

おじさんの料理日記

喜劇「猫じゃら行進曲」



小説「眠れない猫」

ベトナム四十八景

デジカメ あしたのジョー
  神田が訳を話す。
 「彼らは弱そうだから俺にでも捕まえられるさ」木枯も請け負う。
 「分ったわ、彼らを人質にして帰るのね・・・・・・だけど2週間もこんな生活をするの
?耐えられないわ」まり子がため息をつく。
 「みんなの時計を一つずつ質草に出せば、桟橋の前の雑貨屋で多少の日用品や
食料品が買えるよ。雑貨屋のおっさんが言っていたよ。この島の生活には時計なん
かいらないし、時計をお金に替える人もいるって・・・・・・明日、みんなでその雑貨屋
に行って必要な物を手に入れよう。2週間なんてあっと言う間さ」
  神田がすねているまり子をなだめる。
 「南の島の日の出は遅く、暮れるのも早いというが、もう暗くなってきた。おい、明
日からの2週間にそなえてしっかり寝ておくぞ」
  考えてみれば3人はこれ以上起きていても何もする事はない。木枯の言葉に神
田とまり子はしぶしぶゴザを敷いて寝転がる。
3人はここ数日の荒行とも言える長
距離移動で身体中が悲鳴を上げていた。板間に寝るのはそれぞれ何十年ぶりで
あったが、文句を言う前に身体が休息を必要としていた。木枯のいびきを最初にし
て神田、まり子と順に奈落の底に落ちるように深い眠りに入っていった。
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  南の島では盗みをしても逃げられないから盗人の心配はしない、第一盗まれるよ
うな物もない。台風でも風が抜けられるようにとの配慮で家には窓や戸がほとんど
ない。昼も夜も開けっ放しである。
  しかし、そこは外からの危険を回避する動物の本能が働いて3人はいつしか身を
寄せ合って寝ていた。お互いの吐息が目と鼻の先にある。
  神田は何度か寝返りを打つうちに、いつしかまり子の身体に触れていた。久しく忘
れていたふくよかな女の身体である。思わず大きな乳房を鷲づかみにしていた。
 「あんた、何するの?良い歳して?」
  大きな叫び声とともに神田の頬がバチンと叩かれる。
 「いいだろう?」
 「何言ってるの?起きる時間よ」
  驚いて開いた目の前に愛妻美代子の顔があった。
 (あれ?まり子じゃない?)
  神田は夢を見ていたのである。頭と身体が痛い。
 「あんた、お酒を飲んできたでしょう?酒が飲めないから飲んじゃいけないって、あ
れほど言っているのに?」
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  可愛い美代子の顔がまるで般若のようである。言われてみると神田の身体からア
ルコールの匂いがしいてた。

 「神田、どおした?顔色が悪いぞ」
  その日、神田が金森支配人と朝日のあたる家でコーヒーを飲んでいると、木枯社
長がやって来た。
 「昨晩、飲めない酒を飲んでとんでもない夢を見ちゃってさあ」
  神田はそう言いながら夢の内容をみんなに話して聞かせる。もちろん目が覚めた
きっかけは話さない。
 「何、俺たち3人が姥捨て島へ流されたって?ジジババ開拓団?ははは、それは
面白い話だ」
  木枯は笑う。
 「とってもこわい話ね、でもありえない話でもないわ」
  まり子は心配そうにうなづく。
  その時金森支配人が突然歌い出す。
 「ぼ・ぼ・ぼくらはジジババ開拓団
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  勇気りんりん るりの色
  望みにもえる 呼び声は
  朝焼け空に こだまする
  ぼ・ぼ・ぼくらはジジババ開拓団」
 「懐かしいわ、少年探偵団の替え歌ね」
  まり子が呟く。
 「そうです。我々には子供の頃夢と希望があった。いくつになっても夢と希望を忘れ
てはいけません」
  と金森支配人がにんまりと笑う。
 「番頭、お前もたまには良い事を言うじゃないか?」
  木枯の一言でみんなが大笑いをする。
 (このメンバーなら本当に島流しに会っても生き延びられるかもしれない)
  そう思うと夢見後暗かった神田の心がようやく明るくなってきた。
 

                                                 
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第14話 ジジババ開拓団  その6 ★★★★★★






















           

         
































































































































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