きれいな花の写真

忘れえぬ猫たち

デジカメ千夜一夜

かんたん酒の肴

おじさんの料理日記

喜劇「猫じゃら行進曲」



小説「眠れない猫」

ベトナム四十八景

デジカメ あしたのジョー
で何人目だ?』、『だけどそのお陰で俺たち若い者はこうして仕事にありつけたんだ
から感謝しなければ・・・・・・』、『この後何10年かすると今度は俺たちが捨てられる
番だ、嫌な世の中だね』とか何とか言っていたよ」
  神田が記憶を辿り黒服の若い2人の会話を復元してみせる。
 「何?そうすると、ここは姥捨て島で、われわれ3人は捨てられたのか?今まで何
百人何千人の年寄りが所在不明だと思ったら、こう言う事なのか?・・・・・・俺が何
をしたと言うんだ、これまで真面目に税金を払ってきたのに?今の政府は何て事を
するんだ?この善良な国民を?」
  木枯が驚いて目を剥く。
 「とんでもない話ね、まだ若いこんなレディを人里はなれた不便な場所に投げ捨て
るなんて?どうかしているわよ。携帯も財布も歯ブラシも着替えも何にもないじゃな
い?非人道的な扱いよ」
  とおとなしいまり子が目を吊り上げる。
 「全国各地からこんな遠い島まで連れて来て税金がなんぼかかっているのか?考
えているのかね?」
  木枯は憤懣やるかたない様子で話す。
321

 「それでも、高齢者の失踪として何千人もの年金の受給資格は無くせるし、高額な
老人医療の国の負担が大幅に減るわけだから、差し引きは大黒字さ」
  神田がこのからくりを解説する。
 「こんな馬鹿な事をしないで、税金の無駄遣いをなくせば良いのに、事業仕分けは
どうなったんだ?」  
  木枯の怒りは収まらない。

 「腹が立ったら、腹が減ってきたな?何も食い物は無いのか?」
  と木枯が部屋の中を見回すと、外で車の止まる音がした。そして間もなく黒尽くめ
の若い男が2人それぞれ大きなダンボール箱を抱えて入って来た。2人は重たそう
な段ボール箱をどんと音を立てて板間に置く。3人は何事かと身構える。
 (ん?どこかで見た顔だ)
  この2人の顔を見て神田はふと思った。
 「お目覚めですか?お三方」
  背が高く口のとんがったぎょろ目の男が年配の木枯に声をかける。
 「何だ、お前たちは?」
322

 木枯は一瞬たじろぎながらも口を返す。
 「沖縄からここまでみなさんをご案内した者です。今声をかけたでっかいのが太田、
ちっこい私が田中です。みなさんお腹がすいたでしょう?」
  背の低い小太りの人の良さそうな男はそう言いながらにっこり笑う。この2人の声
を聞いて神田は貨物船で会話を聞いた男たちだと気がつく。
 「すいた事はすいたが、そもそもここに俺たちを連れてきたお前たちは何者だ?」
  木枯は開き直り大きな座布団はないが牢名主のように胡坐をかき腕を組んで2人
を睨みつける。
 「まあまあ落ち着いてください、私たちはけっして怪しい者ではありません」
  太田が木枯をなだめる。
 「その格好で我々にこんな事をしでかして怪しくないと?」
  木枯は2人を交互に睨みつける。しかし、顔付きを良く見ると2人はどこか間の抜
けた顔をしていた。
 「これも仕事なんで・・・・・・止むを得ないんです」
  今度は小太りの田中が頭をかきながら答える。
 「これはりっぱな誘拐だぞ」
323

  木枯がわめく。
 「だって3人ともまことに失礼ながらお金持ちじゃないでしょ?どう見ても家族は高
い身代金を払えるとは思えない」
  背の高い太田がニヤリと笑う。
 「ははは、こいつの言うとおりだ」
  神田が思わず笑う。
 「五月蝿い、お前まで何だ、俺を馬鹿にしているのか?」
  木枯の怒りは神田に向う。
 「まあまあ、2人とも落ち着いて」
  今度はまり子が2人をなだめにかかる。
  この様子を見ていたリーダーらしき太田が唾を飲み込んでおもむろに話し始める。
 「よろしいですか、良くお聞きください。私たちは身元は明かせませんが、大きな組
織の元で年寄りを自給自足できる場所に移住させています。海外移住とか開拓団
の派遣は国土が狭く人口が過剰な日本が昔から選択せざるを得なかった政策で
す。海外では南米、アメリカ西海岸、ハワイ、満州、国内では北海道、樺太などなど
数えれば切がありません。今日では総体の人口のこそ減っていますが、高齢者の人
324
タイトルイメージ   タイトルイメージ 本文へジャンプ



第14話 ジジババ開拓団  その3 ★★★






















           

         



































































































































前のページへ 次のページへ


トップページへ戻る