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デジカメ千夜一夜

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おじさんの料理日記

喜劇「猫じゃら行進曲」



小説「眠れない猫」

ベトナム四十八景

デジカメ あしたのジョー

    
 「うーっ、頭が割れるように痛い」
  神田は激しい頭痛と腰痛で目が覚める。汗をびっしょりかいていた。気がつくと神
田は掘っ立て小屋の板の間に寝ていた。真上に天井のない屋根裏が見え、小さな
隙間から太陽光線が放射していた。
  神田が寝たまま左右を見ると、木枯先輩と高木まり子がだらしない格好で転がる
ように寝ていた。3人とも所持品はいっさいない、着の身着のままである。
 「もっと冷たいビールはないのか?」
  その時木枯先輩がむにゃむにゃと口を動かしながら寝言を言う。壁の少ない大き
な部屋の中を熱い風が通り過ぎていく。
 (ここはどこだ?)
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  神田は起き上がって窓のない小屋の周りを見回す。神田のごま塩頭から汗が滴り
落ちる。じょじょにピント
が合ってきた神田の目に写るのはまるで東南アジアの景色
である。遠くに椰子のよ
うな木々が見え、小屋の周りには畑らしき物があり、ところど
ころハイビスカスや夾竹桃も咲いている。人家は見えない。
  「タイ?カンボジア?ベトナム?」
  と一瞬思ったが、壁に1枚のカレンダーが貼ってあった。雨風に晒されてはいるが、
紛れもなく日本のカレンダーである。2011年となっていた。
 「日本?沖縄かその近辺の島か?」
  神田はそう思いつつ、
 (たいへんだ、2人を起こさなきゃ)
  まずは木枯を起こしにかかる。
 「木枯さん」
 「何だ?朝飯か?」
  そう言いながら木枯ががばっと起き上がり、
 「なんだ、まだ出来てないじゃないか?」
  とふたたび眠ろうとする。
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 「先輩、たいへんだ。起きて下さい」
  神田は木枯の身体を起こす。汗臭い匂いがする。

 「神田、何を騒いでんだ?」

  と木枯はようやく重い目を開ける。

 「どうしたの?」
  2人の大きな声でまり子も目を覚ます。
 「あらいやだ。どうして私の傍で男が寝ていたの?ここはどこ?」
  あたりを見回しながら、レディらしく大きな胸の襟を掻き合わせる。
 「どうも南の島らしいよ」
  神田の答えに、
 「ラバウルか?」
  木枯が馬鹿の一つ覚えを言ってみせる。
 「想像ですが、沖縄かその近くですよ」
 「どおりで暑いと思った」
  木枯が汗でしわくちゃになった替え上着をかなぐり捨てる。
 「ところで何で俺たちがここにいるんだ?それにしても頭が痛いな、猛烈な二日酔
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いみたいだ」
  木枯はそう言いながら頭を振っている。

  まり子も自分の頭を叩いている。

 「手術の麻酔が切れた時の感じだ。注射を打たれたのか?」

  二日酔いを知らない神田が盲腸の麻酔が切れた時の不快感を思い出す。
 「ほら、やつぱり注射の跡よ」
  神田の言葉で自分の腕を確かめたまり子が二の腕をまくってみせる。
 「俺にも?」「俺にも?」
  木枯と神田が自分の二の腕を確かめる。
 「だけど、何で俺たちが麻酔を打たれなきゃならんのだ?」
  木枯が口をへの字に曲げる。
 「あんたは特別五月蝿いからさ」
  そう言う神田の答えに、
 「五月蝿いのはお互い様だ」
  木枯が反論する。
 「きっとここに連れて来るまで騒がれたら困る事情があったのね」
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第14話 ジジババ開拓団  その1 ★






















           

         


























































































































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