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デジカメ千夜一夜

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おじさんの料理日記

喜劇「猫じゃら行進曲」



小説「眠れない猫」

ベトナム四十八景

デジカメ あしたのジョー
 「木枯社長、昨夜テレビで面白い話をしていましたよ。自民党は長い間水風呂につ
かっていた、だから水が少しずつ熱くなって来ているのに気がつかない、熱いお湯か
ら出るには新しい政策が必要なんだ、と・・・・・・評論家はまことにうまい事を言うもん
ですね」
  神田の反論に勢いづいた金森支配人がそう言ってニヤリと笑う。
  木枯は2人の後輩の反撃に一瞬ひるんだが、
 「民主党になっても何も変わらんのだよ、もともと自民党を飛び出した連中が牛耳っ
ているのだから」
  と攻撃する。
 「そうかもしれないけど、みんな政治が変わって欲しいのさ」
  神田も負けてはいない。
 「みんな民主党を過大評価しているのさ。民主党のやる事は自民党と同じさ、何も
変わらんよ」
 「そうかなあ?民主党は選挙前にいろんな公約をしていますからね」
 「マニフェストかい?あんなもの信じちゃいかんよ」
 「だって有権者は他に判断するものがないでしょ」
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 「いいかい?選挙前は一票欲しさにどこの政党もうまいことを言うんだ、鵜呑みにし
てはいかんよ。お前だって嫁さんの美代子を口説く時には歯が浮くような美辞麗句を
いっぱい並べたろう?結婚してから公約を全部実行したか?」
 「それは・・・・・・」
  神田も思わずたじろぐ。
 「それと同じさ、だいたい民主党は財源の事を何も考えていない。無駄な事業を止
めろと言っても役人がうんと言わない、長い間政権を取っていた自民党ですら出来な
かったんだ。それなのに政治の素人集団の民社党に何が出来るってんだ?」
 「だけど、やらせてみなけりゃ、分んないっすよ」
  しばし休戦していた金森支配人が再び参戦する。
 「だから今の若いもんは甘いって言うの、今にその付けが回ってくるよ。鳩山首相
は外交音痴だからとりあえず沖縄の基地移転でにっちもさっちもいかなくなるよ」
 「とりあえずですか?その次は?」
  金森支配人が訊ねる。
 「その次に夢みたいなマニフェストを全部実施していくとなると、財源が無い。無駄
な事業も減らせないし、不景気で税収が減っているから赤字国債を乱発するか増税
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するしかないんだ」
 「増税かそれはご免だな、ますます国民の生活が苦しくなるよ」
  金森支配人が舌をぺろりと出す。
 「みんなが開けてはいけないパンドラの箱を開けてしまったんだ、これからみんな
苦労するぜ、覚悟するんだな」
 「パンドラの箱って?」
  金森支配人が眼を白黒させる。
 「パンドラの箱も分らんのか?馬鹿馬鹿しくてこれ以上お前らには付き合っておれ
んよ、あばよ」
  木枯社長は口元をへの字にしたまま夕陽のガンマンようにソフト帽をかぶり店を
出て行った。

  残された3人は自分の不始末を父親にとがめられたように滅入った気分で座って
いた。壁の猫曼荼羅の猫の仏様が大勢で3人の様子を見ていた。子猫のサンは急
に静かになった店内であくびをしていた。
  しばらくして、
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 「木枯社長はあい変らずね、でもああきっぱり言われると何だか不安になるわね」
  まり子がそう言いながら木枯のコーヒーカップを片付け始める。
  その時、金森支配人が何かを思い出したように、
 「ところで木枯社長がさっき言った『パンドラの箱』って何だったっけ?なんか大昔
に聞いた事があったような気がするけど・・・・・・」
  とまり子に尋ねる。
 「パンドラの箱ってギリシャ神話でしたか?」
  まり子は正確に思い出せず困って神田の方を見る。
 「俺も子供の時に絵本で読んだきりだから、まともには覚えてはいないが・・・・・・神
のゼウスが最初に創った人間の女性がパンドラさ。ゼウスはパンドラの夫に『けっし
て開けてはいけない』と言って箱を渡した。しかし、パンドラはその箱がとてもきれい
だから宝石でも入っていると思って夫にせがんで開けてもらったんだ」
  神田はかすかな記憶を頼りに話し出す。
 「それで何が出てきたんだっけ?」
 金森支配人が話の先をせがむ。
 「出てきたのは、病気、盗み、ねたみ、憎しみ、悪だくみなどさ。ゼウスは人間を創っ
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第12話 パンドラの箱  その5 ★★★★★






















           

         



































































































































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