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忘れえぬ猫たち

デジカメ千夜一夜

かんたん酒の肴

おじさんの料理日記

喜劇「猫じゃら行進曲」



小説「眠れない猫」

ベトナム四十八景

デジカメ あしたのジョー
  立川が怒り出す。
 「冗談、冗談。ところでそろそろさっぽろ南高校の集まりをしないか?」
  木枯がにんまりと笑う。
 「急にどうしたんだ?」
  コーヒーを飲む手を止め立川が訊ねる。
 「そこで朝日のあたる家を宣伝するのさ」
 「わざわざ集まらなくても・・・・・・あんたは暇なんだからみんなを訪ねて歩いたらど
う?その方がみんな喜ぶし、効果があると思うよ」
  立川もうまい事を言う。
 「そうか、みんな喜ぶか?・・・・・・それじゃあ、早速行ってくるか」
  木枯が入口に向いかけて急に立ち止まる。
 「そうだ、みんな、聞いてくれ」
  木枯が大声を上げてみんなの注意を喚起する。
 「わたくし、木枯はこれからこの店の宣伝のために知り合いを回って来ます。みんな
も機会あるごとにこの店を宣伝していただきたい。それから・・・・・・」
  木枯は一息飲み込んで、
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 「お暇なら来てよね、私さびしいの〜」
  と、五月みどりの歌の一節をしなをつけて歌い、消えて行った。
  店の中は一瞬あっけに取られたが、その後大爆笑が渦巻く。
 「ああ、気持ち悪い。私も会社へ行かなくっちゃ」
  ダンディな立川社長は苦笑しながら朝日のあたる家を出て行った。

 「佐々木支配人、5丁目のもぐイートへ行って見たかい?」
  メンズ・ジーンズの高橋社長が店の入口近くでコーヒーを飲んでいたサッポロジャ
ガービヤホールの佐々木支配人に声をかける。昨年暮れのもぐマート開店に引き続
きいて、もぐイートが2月5日に開店していた。
 「もちろん行って見ましたよ。森繁支配人もばんばん広告費を使っているから、今
のところ人は入っているようだが、採算が合うのかどうか?」
  佐々木支配人が疑問を呈する。
 「それでおたくのビヤホールの景気は?」
  高橋社長はそう言ってコーヒーをすする。
 「もぐイートの影響ですか?うちはもぐイートとは離れているし、メニューも豊富だか
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ら影響ないんですが、それよりも不景気ですよ。サラリーマンの財布の紐が固いか
ら、どこの居酒屋も安い料金で食べ放題・飲み放題を設定しているんですよ。その
影響が大きいですね。来客数も客単価も落ちて来ていますよ」
  佐々木支配人がため息をつく。
 「ジーンズ業界も同様さ、ユニクロやら大手スーパー、百貨店まで格安ジーンズを
売り始めたから大打撃だよ。うちの店には量産していない個性的な物を求めて来る
客がいるからまだ落ち込みは少ないが、それでも減る事は減っているよ」
  高橋社長も冴えない顔をする。
  そうこう話しているうちにちょん月食堂の若旦那、ひちょり事佐藤銀次郎が2人の
傍に寄って来る。銀次郎はあい変らず坊主頭に豆絞りの手拭いを締めている
 「あまり愉快な話をしていないね?」
  佐藤の若旦那がニヤリと笑いながら話しかける。
 「そう、不景気でぱっとしないという話さ、銀次郎さん、お宅の店のはどうだい?もぐ
イートの影響は?」
  同業の佐々木支配人が訊ねる。
 「うちはもぐイートに近いけど、今のところ影響はありませんよ。あちらさんはどちら
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かと言えば一見の観光客が相手でしょ、うちは近隣の常連客が主体だから・・・・・・」
  銀次郎はもぐイートをまったく気にしていない。
 「そうか、それは良かった。神田事務局長や金森支配人がちょん月食堂の影響を
気にかけていたから・・・・・・」
  高橋社長がさりげなく話す。
 「神田さんや金森支配人が?俺の店よりもこの店を心配すべきだよ、軽い飲み物だ
けで商売が成り立つかなぁ」
  ひちょりのこの一言で高橋社長は(この男は自分の尻に火がついているのも知ら
ずに他人の心配をしているわい)と思わず苦笑していた。
 「あんまり長居しても本当のお客さんが来たら悪いから俺は帰るよ。まりちゃん、ご
馳走さん、また来るよ」
  高橋社長は2人とまり子にに断って店を出て行く。それを聞いた他の関係者もぼち
ぼち帰り始める。
 「お忙しいところ、みなさん、ありがとうございます。また、来て下さいね」
  帰るみんなに向ってまり子がていねいにお礼を言う。

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第11話 猫曼荼羅(ねこまんだら)  その2 ★★






















           

         



































































































































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