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デジカメ あしたのジョー
  雑学の権威とも言ってよい神田が喫茶店の開業に必要な要件を思い出していた。
 「何をぶつぶつ独り言を言っているんですか?」
  まり子が北山先輩にファックスを送り終え戻ってきた。
 「まりちゃんの先ほどの発言さ、『ミルクパーラーみたいな店』だったら、喫茶店や飲
食店となり、食品衛生法の対象となるよ。設計のときから水周りをきちんとして、保
健所に営業許可申請をするんだ。それに食品衛生責任者も必要だよ」
  神田の説明にまり子はにこにこうなづく。
 「知っていたわよ、この店は喫茶店の営業許可を申請するのでそれを頭に置いてレ
イアウトやらデザインをしてくれるよう北山先輩に頼んだの」
 「ふうん、それじゃ食品衛生責任者は?」
 「それは私よ、資格を取ったもの」
 「何時の間に?」
 「昨年失業保険を貰いにハローワークへ通ったでしょ、その時講習を受けて資格を
取ったのよ」
 「これは参りました」
  神田が脱帽する。
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 「その時は店を開くとは思っていなかったんですけど」
  まり子がにっこり笑う。

 「おっ、けっこうお客さんがいるじゃん」
  金森支配人が声を上げる。
  開店準備で疲れたまり子と神田と金森支配人は2月5日に開店した「もぐイート」
に昼食を取りに来ていた。新しく出来た「もぐイート」の流行り具合を確かめるため
でもあった。
  「もぐイート」は5丁目の西宝プラザの中にある。左手に道産食材を直売している
「もぐマート」があり、右手に道産食材を使った飲食店街「もぐイート」がある。細長い
スペースには真ん中に通路があり両側と奥にうどんそば、ラーメン、豚丼、ステーキ、
寿司、チーズ料理、韓国料理、焼き鳥など11の店舗が並んでいる。
 「ここでも食べられるのね」
  まり子が呟く。 通路に置かれたテーブルでは若いグループが好きな料理をチョイ
スして食べている。言ってみれば東南アジアで良く見られる集合屋台の小型版であ
る。
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 「それじゃあ、ここのテーブルが空いたらわれわれも好きな物を食べるとしよう」
  神田が何を選ぶか、回りの店を見回す。
 「私は寒いから石焼ビビンバ」
  まり子が一番先に決める。
 「おいらは久し振りに豚丼」
 「俺はやっぱりあんかけ焼きそば」
  金森支配人も神田もそれぞれ好きな物を頼む事にする。
 「こんなところで寿司なんか食べる人はいるのかね?」
  突き当たりの寿司のカウンターを見ながら神田が呟く。
 「観光客なら食べるかも、待たなくてもいいから」
  金森支配人が答える。
 「寿司屋のまかない丼なら700円だから私たちにも食べられるわ」
  もぐイートのパンフを見ながらまり子が2人に話しかける。
  3人はいらいらしながら15分も待ってようやく席を確保する。かくしてようやく昼飯に
ありついた3人だった。
 「味はまあまあだけど、周りを人が通るから何かあずましくないわ」
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  まり子は北海道弁で感想を述べる。
 「こういう店はわれわれおじさんやおばさん達には向いてないかも・・・・・・」
  金森支配人が箸を置く。
 「味では多少落ちるけれど、ちょん月食堂の方がゆっくり食べられるよ」
  神田が爪楊枝をくわえながら話す。
 「それじゃあ、佐藤の爺さんの心配も消えるか?」
  金森支配人は神田同様ちょん月食堂の未来を心配していた。
 「そもそも客層が違うからね、常連を大事にして、少しずつ新しい客も取り込めたら
何とかなると思うよ、若旦那の努力次第さ」
  そう言いながら神田は伝票を持って立ち上がる。
 「代金は?」
  金森支配人が神田に訊ねる。
 「当然、割り勘さ」との神田の声に、
 「やっぱり・・・・・・」
  金森支配人が肩を落とす。
 
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第10話 朝日があたる家  その5 ★★★★★






















           

         



































































































































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