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小説「眠れない猫」

ベトナム四十八景

デジカメ あしたのジョー
はうちの会社と同じになってしまうか?」
  とまずは神田が口火を切る。
 「例えば招き猫、みがき猫、またぎ猫とか・・・・・・」
  金森支配人が続ける。
 「まだその名前に拘ってるの?もっとかっこいい名前はない?」
  まり子が眉をしかめる。
 「キャッツアイとか?」
  金森支配人が即座に答える。
 「それはカラオケ屋の名前でしょ」
 「スリーキャッツとか?」
 「どういう意味?」
 「ここにいる3人さ」
 「意味が分んないよ。あんたの発想で行くと、食堂だったら猫まんまか?」
  金森支配人のおちゃらけ思考回路が神田にうつる。
 「もういい加減にしてよ」
  まり子が言葉遊びをする2人をにらみつける。
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  その時、金森支配人の携帯電話がなった。
「金森です。立川社長ですか?はい、高木さんはここにいますよ・・・・・・分りました
すぐに伺います」
  それまでふざけていた番頭さんは社長の電話で急に真面目な支配人に戻る。
 「立川社長が高木さんを連れて蓮華堂不動産に来なさいって・・・・・・きっと詳細を
聞きたいのじゃないかい?」
 金森支配人はまり子に立川社長の話を伝える。
 「分ったわ、それじゃあ、お手数でも案内してね」
 「お安いご用さ」
  こうして2人は猫じゃら工房を出て行った。
  広い2階は神田だけになった。
 (まり子に先を越されたか?)
  社名を猫じゃらサービスから猫じゃら工房に変えて、将来は自力で何かやりたいと
考えていた神田は一瞬複雑な思いに陥った。
  しばらく滅入っていたが、
 (そうは言っても、まり子の店は俺が手伝わなけれはばなるまい)
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  こう考え、神田はふたたびパソコンに向った。

  その後、高木まり子と立川社長との賃貸話は順調に進み、改装や手続きなど全面
的に支援してくれる事になった。
  こうなると、話は早いもので開店は5月2日土曜日、大安の日と決まった。残すとこ
ろちょうど6週間1ヶ月半である。話が決まって以来、まり子は毎日猫じゃら工房に出
勤している。猫じゃら工房はまるで新店設立準備室と化していた。
  あい変らず金森支配人がちょろちょろと出入りする。金森支配人は神田とまり子の
忙しそうな様子を見て、
 「開店までにやる事がいっぱいあるね。ところで店の名前はどうしたの?」
  と2人に声をかける。
 「まだ決まっていないよ」
 神田が答える。するとまり子が口を開く。
 「私は店に猫じゃら関連グッズを並べるからって、あまり猫の名前が入った店名に
拘りたくないの。フランスのミルクパーラーみたいに誰もがふっと立ち寄りたくなるよう
な店を考えてるの、ふと立ち寄ったら壁に猫グッズが飾ってあった、そんな感じの店
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にしたいのよ」
 「そうか」
  実利的で想像力のあまり豊かではない神田にもまり子の考えているイメージがお
ぼろげながらつかめたような気がした。
 「それで、朝日のあたる家って名前はどう?」
  まり子が続ける。
 「朝日のあたる家?それってイギリスのロックバンド『ジ・アニマル』の歌の名前じゃ
ない?」
  思いがけないまり子の提案に金森支配人が驚きの声を上げる。
  金森は工業高校時代エレキバンドに所属しており、最初のフォーク・ロックと言わ
れる迫力のあるこの歌を一度聞いてすっかり魅入られた。意味も分からず何度も聞
いていたし、歌ってもいた。その後はボブ・ディランやジョーン・バエズなどの歌も聞い
ていたが、金森は最初に衝撃を受けたジ・アニマルの歌がいちばん好きである。
 「そういう歌もあったわね、私は浅川マキやちあきなおみの歌の方が好きだけど」
 「そうしたらタイトルの意味も知っているよね?」
 「淺川マキとちあきなおみの歌詞は娼婦の家という意味よね」
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第10話 朝日のあたる家  その3 ★★★






















           

         






















































































































 












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