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おじさんの料理日記

喜劇「猫じゃら行進曲」



小説「眠れない猫」

ベトナム四十八景

デジカメ あしたのジョー
 「鮭をまたいだ猫の人形かい?そんなの売れるかなぁ、二番煎じ三番煎じは駄目だ
よ」
  神田が反論する。
 「私はとっても良いアイデアだと思うんだけど、どうです?まりちゃん」
  金森支配人はまり子に助けを求める。
 「そう言われても困っちゃうわね、何も今ここで結論を出さなくても・・・・・・来年じっく
り考えたら?」
  まり子ははやる金森支配人をたしなめる。
 「来年か?来年は猫じゃら工房は何をしようかな?」
  神田が考えを巡らしている。
 「私も来年になればこれまで以上にお手伝い出来るわよ」
  まり子がそっと言う。
 「ありがとう、それじゃあ来年が良い年でありますように」
  神田のこの一言で金森支配人が時計を見る。
 「あら?もうこんな時間?お名残惜しいが帰るとするか・・・・・・」
  金森支配人の一言で3人の年忘れ大昼食会はようやく幕を下ろす。神田と金森
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支配人はここでまり子と別れ1丁目の会社へ戻って行く。

 「みがき猫って良いじゃない?自分をみがくって、受験生やサラリーマンに受けそ
うですよ」
  帰り道、金森支配人はまだ自説に拘っている。
 「ところで、さっき若宮市の猫塚の話が出たが、北海道にも猫塚はあるんだよ」
 「ほんと?」
 「道南の知内町にあるよ」
 「北島三郎の出身地だね、どうして知ってるの?」
 「俺の故郷函館の近くだからさ、松前怪猫塚と言う猫塚がある雷公神社は北海道
最古の神社として有名なんだよ」
 「そんなに有名な神社なんですか、ところで何で松前怪猫塚と言う名前なの?」
 「雷公神社の社家である大野家に伝わる伝承さ。22代神主大野石見重敬は文武
両道に優れ、函館戦争の明治2年に松前藩の奇兵隊に参加して活躍したそうだ、
その時強敵と一騎打ちになりようやく敵の首を奪った。大野はその後帰郷して神主
に戻ったが、ある夜、打ち取ったはずの武士が物の怪となり現れて勝負を挑んで来
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た。驚いた大野はその物の怪を刀で切り倒すと大きな古猫が死んでいたと言う。大
野はこの猫の死骸を庭に埋めて石の祠とともに椿を植えて弔ったというんだ」
 「怖い話ですね、いわれを聞くと、あんまり見たいとも思いませんね」
  金森支配人がぶるると身を振るわせる。酔いも覚めてきたのかもしれない。
  こんな話をしているうちに2人は仏壇屋 蓮華堂の前に立っていた。ここで神田は
金森支配人と別れ2階の猫じゃら工房へ上がって行った。

  ホームページ「ヤマネコ山遊記:猫と縁のある山」によると全国に猫がついた地名
が無数にあるのが分る。
  猫川・猫ヶ沢・猫谷・猫池・ネコ滝など水辺の地名、猫峠・猫岩など山や岩につい
た地名、猫島など島につけられたもの、猫啼温泉など温泉につけられたものもある。
  猫寺・猫薬師・猫神社・猫明神・猫天神・猫稲荷・猫観音・猫地蔵・猫塚など信仰
の対象になるものも数知れない。
  この他、弘前市の猫右衛門町・桑名市の猫飛び町など猫の名前がついた地名な
どを丹念に拾い上げている。
  しかし何故かこんなに有名な猫じゃら小路は出ていない。
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  神田は「若宮追い出し猫」のホームページを見ていた。なるほど先ほどまり子に聞
いた追い出し猫の由来と人形の製作過程が載っている。また、人形の種類と注文の
仕方も載っていた。
  気がつくと時計は午後3時を回っている。
 (木枯社長もこの分ではもう出て来ないな。来週の月曜日は29日か、来週も出て
来ないな。今年はあの憎らしい顔に会えないのか?)
  そう思った瞬間、良いアイデアが浮かんだ。
 「これは面白いぞ」
  神田がにんまり笑う。そしてしばらくキーボードを叩いていた。

  一仕事を追え、ほっとしたところで神田の携帯が鳴った。
 「誰からだ?」
  画面を見ると函館に住む三男の弟三郎からだった。
 「三郎か?大助だ」
 「兄貴、今そばに誰もいないかい?」
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第9話 追い出し猫  その5 ★★★★★






















           

         




































































































































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