きれいな花の写真

忘れえぬ猫たち

デジカメ千夜一夜

かんたん酒の肴

おじさんの料理日記

喜劇「猫じゃら行進曲」



小説「眠れない猫」

ベトナム四十八景

デジカメ あしたのジョー
  金森支配人は北海道弁丸出しでお守りを手に取る。
 「おっ、ころころ音がする」
 「そうよ鈴になってるの、これを裏返すと」
 「笑い顔だ」
 「こちらは招き猫よ」
 「これは面白いね」
  金森支配人の顔が思わずほころぶ。
 「表と裏で、災いを追い出し福を招くそうよ」
 「なるほど」
  金森支配人が感心する。

 「まりちゃん、ところで何で追い出し猫なのさ?」
  神田が追い出し猫の由来を訊ねる。
 「西福寺に伝わる伝説から来ているそうよ。400年ほど前に西福寺には猫を可愛
がる和尚さんが住んでいたそうよ。ある時お寺に一匹の大ねずみが住み着きお寺は
もちろん近隣まで荒らし始めたそうです。困り果てた和尚を見かねた飼い猫が何百
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匹もの仲間を集め、ある晩大ねずみに戦いを挑んだそうです。翌朝和尚が起きて見
るとお寺は大ねずみと猫たちの死骸で一杯だったとか・・・・・・そんな猫たちを哀れん
だ和尚は猫たちのお墓を作りいつまでも手厚く供養し続けたそうです」
  まり子がみやげ物屋で聞いた話をそのまま語って聞かせる。
 「ふうん、そうなのか、なるほど・・・・・・ところで誰か招き猫の由来を知っている?」
  神田が2人の顔を見渡す。
 「何気なく招き猫という言葉を使っていましたが由来があったんですか?」
  金森支配人が訊ねる。
 「招き猫はね、彦根藩主井伊家の菩提寺として知られる東京世田谷の豪徳寺の伝
説だそうだ。ある時雷雨に出会い途方にくれていた井伊直孝を一匹の猫がお寺に招
き入れたそうだ。そのお陰で直孝はお寺の和尚の尊い法談を聞く事が出来たとか」
  一度豪徳寺を訪ねた事のある神田がうんちくを傾ける。
 「そうなの、知らなかったわ」
  まり子が呟く。
 「豪徳寺は招き猫だが、若宮市の方は追い出し猫か・・・・・・それにしても追い出し
猫と招き猫の両方を表裏にして人形を作るとはね・・・・・・欲張りと言うか、サービス
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精神旺盛と言うか、商売上手と言うか、誠にユニークな発想だね」
  神田が感心する。
 「それから若宮市には面白い話がまだあるんですよ。脇田温泉からはちょっと遠い
けど、伝説となった西福寺の跡地には猫塚公園もあるんです・・・・・・そして猫塚の
前にはバスが来ないのに招き猫をかたどったバス停があるんです、これも面白くて
可愛くてお客さんが大喜びでした」
  とまり子はさらに猫塚公園とバス停の話も付け加える。
 「バス停は追い出し猫じゃなくて招き猫か、そりゃまた商売優先だね」
  金森支配人は愉快そうに笑う。
 「そもそも追い出し猫は十数年前若宮市の町おこしのために考え出したんだって、
はじめはさっぱり人気が出なかったけれど最近の不景気でぼちぼち人に知られるよ
うになってきたらしいわ、振興会の人達も偉いと思わない?この猫じゃら小路にも何
かそんなお土産があっても良いわね」
  まり子はそう言ってようやくデザートのアイスクリームに手を出す。長い話でアイス
クリームは融けかけていた。
 「そう言う事なら、この猫じゃら小路はさしずめみがき猫じゃない?」
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  金森支配人の提案に、
 「ぷっ」
  とまり子はアイスクリームを噴き出しそうになる。
 「みがき猫?」
  今度は神田が金森支配人に問い返す。
 「そうさ、猫じゃら小路にも立派な伝説があるでしょう?少々頭の回転が遅い米屋
の息子が米を食うねずみを退治するためにみがきニシンを持って猫を集めて歩いた
と言う・・・・・・これをみがき猫のいわれにするんですよ」
  金森支配人は真剣な顔をしている。
 「みがき猫ねぇ、口にみがきニシンを咥えさせるの?北海道名物ヒグマの木彫りみ
たいじゃん、あまりピンと来ないなぁ」
  神田が金森支配人の顔をみやる。
 「それじゃあ、またぎ猫では?北海道では川に上がった産卵後の秋鮭はホッチャレ
と言って猫も食わないでしょ、だから猫またぎって言いますよね。またぎ猫は災難をま
たぐとかなんとか屁理屈をつけたら?」
  金森支配人はなおも食い下がる。
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第9話 追い出し猫  その4 ★★★★






















           

         




































































































































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