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デジカメ千夜一夜

かんたん酒の肴

おじさんの料理日記

喜劇「猫じゃら行進曲」



小説「眠れない猫」

ベトナム四十八景

デジカメ あしたのジョー
  金森支配人が口を尖らす。
 「あんたは稼ぎがあるでしょ、まりちゃんは失業者だよ」
 「俺も今日だけ失業したいな・・・・・・だめか」
  佐々木氏支配人は笑って3人のやりとりを見ている。
 「お待たせしてごめん、佐々木支配人、ドリアランチを三つ」
  神田は残りの2人に相談せずに当店お勧めランチを注文する。ようやく注文を貰
い戻って行く佐々木支配人の背中に金森支配人が声をかける。
 「ビール大ジョッキ、1杯ね」

  料理が出てくるまでの間、それぞれが心の中で今年1年を振り返っている。
 「今年は本当に八方塞がりと言う感じだね、何か良い事ないのかね」
  神田が誰に言うともなく呟く。
 「今年はいろいろ頑張ったじゃないですか?掃除をやったり、ゲーム大会をやった
り、仮装大会をやったり、キャンドルナイトをやったり・・・・・・」
  金森支配人はここまで言ってからはたと気付く。
 「あれ?神田さん冬もキャンドルナイトをするんじゃなかった?」
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 「冬至は昨日さ、考えてみたら冬はイルミネーションがあるからキャンドルナイトは
適わないさ」
 「そう言えばそうですね、何と言っても冬は寒くて準備も大変だし・・・・・・」
 「それに何と言っても『もぐマート』も開店したし・・・・・・」
  神田が付け足す。
 「そうだ『もぐマート』は先週の金曜日19日にオープンしたんですよね。新聞でもテレ
ビでも大きく取り上げていたわよ。私はまだ行ってないけど、お客はいっぱい入ったの
かしら?」
  まり子が尋ねる。
 「そりゃそうですよ、あれだけ前宣伝したら」
  金森支配人が答える。
 「お待ちどうさま」
  金森支配人のビールが届く。
 「おっ、待ってました」
  金森支配人がジョッキを持ち上げると、
 「番頭さん、オープンに行ってきたの?本業をほっぽり出して?」
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  神田が金森支配人の顔をしげしげと見る。
 「だって、うちの立川社長いや理事長もオープンセレモニーに出席してましたから当
然ですよ。神田さんだって行ってたでしょ?」
  金森支配人は神田に反撃し、ようやくビールを口にする。
 「むむむ、俺は仕事だよ、猫じゃら工房の事務方として猫じゃら小路の動きを見極
めないと・・・・・・」
  神田も負けていない。
 「『もぐマート』のせいで6丁目の猫じゃら小路市場にも影響が出てるんじゃない?」
  金森支配人が他人の商売の心配をする。
 「市場には魚屋と八百屋と雑貨屋が1軒ずつあるが、井下野菜店のご主人に聞く
と『客はこの辺の飲食店だからもぐマートが出来ても関係ない』と言っていたよ」
  神田は抜かりなくリサーチを終えていた。
 「そうか」
  金森支配人は安心する。
 「まあまあ、話はその辺にして料理が来たわよ」
  まり子が2人の注意を喚起する。
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 「おっ、熱そう、いただきます」
  3人は湯気の立つ熱いドリアを黙々と食べ始める。これを食べている間はしばらく
音なしである。

 「そうだ、大事な話を忘れていた」
  まり子がスプーンを持った手を止める。
 「何だい?大事な話って?」
  昼酒で少し顔が赤くなった金森支配人がジョッキを下に置く。
 「『追い出し猫』って知ってた?」
 「何だ、それは?」
  今度は神田が手を止める。
 「若宮市の隠れた名物ですよ。そう、これこれ、これが『追い出し猫』ですよ」
  まり子がハンドバックから5cmほどの小さなマスコットを取り出す。真っ白く塗られた
土鈴に猫が描いてある。漫画風に顔がでかい猫は憎めない顔をして見る人を睨みつ
けている。
 「めんこいな」
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第9話 追い出し猫  その3 ★★★






















           

         





































































































































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