きれいな花の写真

忘れえぬ猫たち

デジカメ千夜一夜

かんたん酒の肴

おじさんの料理日記

喜劇「猫じゃら行進曲」



小説「眠れない猫」

ベトナム四十八景

デジカメ あしたのジョー
 「それで結婚式に行ったのよ」
 「あんたのいとこったら相当歳だな?」
  神田が混ぜっ返す。
 「失礼ね、いとこって言ったって年齢はいろいろでしょ」
  まり子は神田を軽く睨みつける。
 「それでね、脇田温泉のホテル楠水閣に泊まったの、紅葉がとてもきれいだったわ。
脇田温泉は美肌の湯として有名なの、ほらとてもきれいになったでしょ」
  と金森支配人に顔を突き出す。
 「そうかなあ?変わらないと思うけど」
  金森支配人がまり子の顔をしげしげと見つめる。
 「何よ」
 「ごめんごめん」
 「2人とも久し振りに会ったからといってそんなにじゃれ合わなくても・・・・・・そうだ、
今年みんなが揃うのは今日でおそらく最後だろうから年忘れ昼食会でもしようか?」
 「いいですねぇ、ところでお酒は飲めますか?」
  お酒の好きな金森支配人は神田に酒の有無を問う。
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 「注文すればあるさ。俺がおごろうと思ったが、そういう人もいるんで、今日は割り勘
だ。どんどん飲んで構わんよ」
  神田が答える
 「分りましたよ・・・・・・ついでにひちょりも呼びますか?」
 「ひちょりって?」
 まり子が訊ねる。
 「ちょん月食堂の若旦那佐藤銀次郎の事さ」
  神田がまり子に解説する。
 「わはは、ほんと似ている」
  まり子は面白そうに笑い転げる。
 「だけどひちょりは食堂が昼時で忙しいはずさ、暇なのはあんただけさ」
  神田が金森支配人の顔を見る。
 「そうか」
  金森支配人が肩をすぼめる。
  かくして3人は年忘れ昼食会にサッポロジャガービヤホールへと向った。

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  世の中はいぜんとして混沌とした状況にあった。
  原材料価格の高騰で昨年から食料品や日用品の値上げが加速していた。サブプ
ライムローン問題による金融市場の混乱で行き場を失った投機マネーは原油取引に
向かい、原油価格も高騰した。
  企業は原材料の価格を吸収できず、消費者は生活防衛のために買い控えを起こ
し、その結果企業の業績がさらに悪化し、大企業のリストラが始まり、派遣切りなど
雇用の不安へとつながっていった。
  10月27日には東京株式市場で日経平均株価が7162円90銭を記録、バブル
崩壊後の最安値の7607円88銭を5年6ヶ月ぶりに下回った。当然企業と国民の
資産価値は大幅に下落した。11月4日の米国大統領選挙では「チェンジ」をスロー
ガンにした民主党のバラク・オバマ上院議員が圧勝し、米国史上初の黒人大統領が
誕生した。日増しに悪化する国民生活を変えて欲しいという米国民の切実な願いで
もあった。
  11月18日、元厚生事務次官宅が2軒襲われ3人が死傷した。22日に出頭した
犯人は「34年前保健所に犬を処分された仕返しだ」と述べているが、その日まで厚
生年金施設のずさんな管理や間違いだらけの年金事務など厚生省の仕事振りに対
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する仕返しと早合点した人も多かった。
  日本中が逃げ道のないトンネルに投げ込まれたような閉塞感に覆われていた。

 「おや、みなさんおそろいで、今日は何ですか?」
  神田らご一行を迎えたサッポロジャガービアホールの佐々木支配人が笑顔で迎え
る。
 「猫じゃら工房のささやかな忘年会さ」 神田が答える。
 「夜にいらっしゃれば良いのに」
  佐々木支配人はそう言うが神田があたりを見回すと昼でも店はがらがらである。
 「酒を飲むのは金森支配人しかいないからわれわれは昼で十分さ、金森支配人の
分は彼に貰ってね、まりちゃんと俺の分は俺が払うから」
 「あら、悪いわ」
  先ほどの神田の提案と違う内容にまり子が頭を下げる。
 「いいって事よ、一年間手伝ってくれたお礼さ」
  と神田が言うと、
 「俺に対してはお礼はないの?」
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第9話 追い出し猫  その2 ★★






















           

         




































































































































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