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デジカメ千夜一夜

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おじさんの料理日記

喜劇「猫じゃら行進曲」



小説「眠れない猫」

ベトナム四十八景

デジカメ あしたのジョー

    
 「神田さん、こんにちわ。お元気?」
 「おっ、高木さん、久し振りだねぇ、生きていたか?」
  だっこちゃん事、高木まり子が久し振りに猫じゃら工房へ顔を出した。6月のキャン
ドルナイト以来6ヶ月ぶりである。神田はびっくりして腰を上げる。
 「このとおりぴんぴんですよ」
  高木まり子は首に巻いていた象牙色のマフラーをはずし、暖かそうな赤いダウン
ジャケットを脱ぐ。少ししぼんだとは言えまだ人目を引く胸が飛び出す。今日は200
8年12月22日、冬至を過ぎたばかりの外は寒くまり子の鼻がほんのり赤い。
 「まあ、かけなよ、しばらく音沙汰なかったけれど、今まで何をしていたのさ?」
  まり子は会議用テーブルの傍の折りたたみ椅子に腰掛ける。
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 「何をって、ハローワークに通っていたのよ」
 「そうか、失業保険を貰いに行っていたんだ」
  春北商会鰍退職してすぐさま蓮華堂不動産鰍ノ再就職した神田は失業保険な
るものを貰っていない。
 「今は失業給付って言うのよ」
 「どっちでもいいや、だけど失業保険をもらうのは昔と違って大変なんだって?」
 「そうなのよ。認定されるまで何回もハローワークへ通って、職業相談、職業紹介、
職業訓練などを受けないとならないのよ、それも日日が決められるから身動きでき
ないのよ」
 「おかしな話だよな、失業した時のために長い間保険料を払ってきたのに、辞めた
途端に出し渋るんだから・・・・・・給付を渋るのは国も民間の生命保険会社と同じだ
な」
 「本当よねぇ、でも努力の甲斐あってようやく貰えたのよ」
 「そりゃご苦労様でした」
  神田がそう行った途端、入口のドアが開く。
 「コーヒーお待ちどうさん」
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  なんといつもの半井嬢ではなく金森支配人がお盆に紙コップを三つ載せてやって
来た。金森支配人は高木まり子とはあさひかわ市西鷹栖中学校の同級生である。
金森支配人は仏壇屋 蓮華堂の入口で高木まり子の顔を見てやって来たのである。
 「あら、ありがとう。久し振りね、元気だった?」
 「元気で男性ホルモン過剰でこのとおり額がますます後退していますよ」
  金森支配人はまり子の前に髪の本数が減ったてかてかの頭を突き出す。
 「男性ホルモン過剰じゃなくて酒の飲みすぎだよ、まるで赤鼻のトナカイさ」
  神田が横から冷やかす。
 「それなら神田さんはさしずめ太った赤ら顔のサンタさんだ、重くてそりに載せられ
ないよ」
 神田は金森支配人に逆襲される。
 「あはは、相変わらず面白い人達ね、ところで半井さんはどうしたの?」
  まり子が金森支配人に訊ねる。
 「今日はお休み、お母さんとまた近間の温泉でも行ったんでないかい?」
  金森支配人は半井嬢が若いにもかかわらず温泉が大好きだと知っている。
 「温泉か?そう言えば私先月脇田温泉へ行ってきたのよ」
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 「脇田温泉?聞いた事ないな、どこにあるの?」
  神田は現役時代全国各地の温泉へ行っているが、これまで脇田温泉の名前はあ
まり聞いた事がない。
 「福岡県若宮市にあるの。福岡空港から車で1時間弱のところよ、脇田温泉は博
多の奥座敷と言われているの」
 「若宮市?」
 「どういったら良いのかな、レクサスの生産で有名なトヨタ自動車九州鰍フあるとこ
ろよ、そのレクサスも最近は不景気で売れ行きは今一だそうですけれど・・・・・・」
 「ああ、レクサスの九州工場ね」
  高級車に一度は乗ってみたいと考えている金森支配人はすぐに反応する。しかし
車は走れば良いと考えている神田には感心がない。
 「それで誰かおっさんとお忍び旅行かい?」
  神田は脇田温泉に誰と行ったかの方が気になる。
 「いやねぇ、母親とよ」
 「母親?」
 「母親の姪っ子、私のいとこがトヨタ自動車九州鰍ノ勤めている彼氏と結婚したの、

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第9話 追い出し猫  その1 ★






















           

         


























































































































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