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喜劇「猫じゃら行進曲」



小説「眠れない猫」

ベトナム四十八景

デジカメ あしたのジョー
  金森支配人はその足で仏壇屋 蓮華堂のすぐ傍の「メンズ・ジーンズ」に来てい
た。店内はジーンズが所狭しと並び、天井からもぶら下がっている。まるでジャング
ルに迷い込んだようである。今日は月曜日という事でお客もあまり見当たらない。
  高橋社長は定位置の奥まったところに座って雑誌を見ていた。高橋社長は猫じゃ
ら小路商店街振興組合の副理事長でもある。
 「こんにちわ」
 「おや珍しい、金森支配人か。仏壇屋が来てもうちには売るものがないよ、まさか
三途の川を渡るのにジーンズってわけにはいかんだろうからね」
 「はは、高橋社長は相変わらず冗談がきついな。ところでキャンドルナイトが終っ
たばかりだけれど猫じゃら小路商店街振興組合でも何かやるんだって?」
 「組合でも何かしなきゃならないと考えているよ、このあいだもその件で三役会議
が開かれたから」
 「そうしたら、当然高橋社長も出席したんですね」
 「ああ、このままでは駅前に押されっ放しで、何か対策をしないとと言う話が前々か
らあってね、しかし組合が新たに投資するとなるとメンバーの負担も大変だから空き
ビルを使えないかと、コンサルタントにお願いしていてね。今回いくつかの案が出て
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来たのさ」
 「それで?」
 「その答申があったばかりでこれから検討する事になってるよ」
 「飲食店に関する案もありました?」
 「それもあったが今の段階では何とも言えないね・・・・・・すべてこれからさ」
 「そうですか、決まったらまた教えてください。たまにはうちの店にも遊びに来て下
さいよ」
 「馬鹿な事を言うな、仏壇屋なんかに遊びに行かれるか、縁起でもない」
 「そんな事言わないで・・・・・・老いも若きもきれいどころがそろっていますよ」
 「ははは、分ったよ」
  高橋社長は苦笑いする。
  こうして金森支配人は高橋社長と別れた。

  店に戻った金森支配人はすぐさま2階に駆け上がり、神田に高橋社長の話を再現
して聞かせる。
 「コンサルタントの答申ね、何をするんだろう?」
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 「何でしょうね?飲食店の話もしてみたんですが、具体的にはまだ決まっていない
ようでした」
 「そうか、それじゃあ決まるまでひちょりの悩みは続くね・・・・・」
  神田がため息をつく。
 「そうですよね」
  金森支配人も他人事ながら落ち着かない様子であった。
  
  こうして猫じゃら小路もあっと言う間に7月を迎え、7月下旬から1か月間恒例の
「猫じゃら祭り」が開かれた。この期間中おなじみのナイトバーゲン、子供御輿、猫
じゃら徳例大祭が続く。この季節は子供や学生が夏休みとあって久し振りに猫じゃ
ら小路に人が集まり活気づいていた。
  この間、中国当局のチベット暴動鎮圧に対する抗議運動が世界各地で起こり、聖
火リレーが混乱したが、8月8日に北京五輪が予定通り開催された。日本は金メダル
が9個を獲得、競泳では北島選手が連覇という偉業を成し遂げた。
 一方、9月1日には福田首相が退陣を表明した。8月に内閣改造を図ったが、内閣
支持率は上がらず政権続行を断念した。安倍前首相に続き在任期間約1年の政権
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となった。 後継に麻生太郎が就任したが、問題発言や失言を繰り返していた。
  9月15日には米国の大手証券会社リーマン・ブラザーズが過去最大の負債を抱
えて経営破たんした。信用不安が世界中に広がり、日本への影響も徐々に表面化
していった。

 「おいおい、日本の政治はどうなつているんだ」
  9月の第4月曜日の22日に久し振りに猫じゃら工房に顔を出した木枯社長が開口
一番大声を出す。
 「日本はどうなっているって?最近はいつもこんなもんですよ」
 「毎年毎年一国の首相が替わり、一度も衆議院を解散せず、国民の信を問うていな
いのだぞ。麻生首相はいくら漫画が好きだからつて日本語ぐらいきちんと読んだり使っ
てもらわないと、まったくお粗末極まりない話さ。世界的な大不況だと言うのに何も手
を打たない、このままで行くとひょっとすると昭和の大恐慌みたいになるぞ」
 「木枯先輩はその頃生まれていませんよね?」
 「あったり前田のクラッカーさ」
 「古いギャグ!」
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第8話 さまよえる子羊  その4 ★★★★






















           

         




































































































































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