きれいな花の写真

忘れえぬ猫たち

デジカメ千夜一夜

かんたん酒の肴

おじさんの料理日記

喜劇「猫じゃら行進曲」



小説「眠れない猫」

ベトナム四十八景

デジカメ あしたのジョー
 「いいえ、お安い御用で、新聞・テレビに大きく取り上げてもらって、わが猫じゃら小
路商店街振興組合も大助かりですよ、ところで立川理事長には?」 
 「今、蓮華堂不動産で先に会って来たよ」
 「ご機嫌だったでしょ?」
 「うん、大喜びだったよ。『猫じゃら小路商店街振興組合も今度は自力で何かしない
と』とおっしゃっていたよ、何をするのかね?」
 「それは・・・・・・まだ」
  いつも饒舌な黒川事務局長の口がやや重くなる。
 (ひょっとしてこの事が原因か?佐藤の若旦那とのトラブルは)
  神田の第六感がぴくぴく働く。
 「そう、ところで金森支配人に聞いたんだが、キャンドルナイトの晩に佐藤君と何か
あった?」
  黒川事務局長は神田の突然の突っ込みにうろたえる。
 「何もありませんよ。仲間ですから、飲んで言い合うのはいつもの事ですよ」
 「そうですか・・・・・それじゃあこれで」
 (何かあるぞ、これは・・・・・・)
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  神田はそう思いつつ、猫じゃら小路商店街振興組合を出てさらに西へ向かう。出
会った商店主に猫じゃら小路商店街の新たな動きを聞いてみるが、まだ誰も知らな
い様子である。

  そうこうしているうちに7丁目のちょん月食堂に到着する。
 「ご主人、こんにちわ」
  いつもの席に座っている2代目万之助に挨拶をする。神田の声に気付いた「ひちょ
り」こと佐藤銀之助は入口の右手、2代目からもっとも遠いテーブルに神田を誘う。
 「この前はご協力ありがとう。ところで一昨日の夜、黒川事務局長と何かあった?金
森支配人が心配していたよ」
  佐藤君を前にして回りくどい事の嫌いな神田は単刀直入に訊ねる。
 「この間、黒川が飲みながら変な事を言い出したんだよ、『この店もいつまでも繁盛
すれば良いんだが・・・・・・』ってね。人の店で飲んでいながら・・・・・・俺は思わず『そ
れってどういう事だ?』と問い返すと、『もしも猫じゃら小路に新たな飲食街が出来た
らね』と答えやがんの」
 「それで?」
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  神田が続きを促す。
 「『そんな話があるのか?』って聞き返すと慌てて『それはまだ言えない』ってのた
まうのさ、それなら言わなきゃ良いのに、頭に来たよ」
  佐藤君は思い出したくもない様子である。
 「彼はもともと皮肉っぽい言い方をするからね。俺も先ほど彼に会って聞いてみた
が、具体的な事は決まっていないとみえ、何も言わなかったよ」
  神田は2代目が入れてくれたお茶をごくりと飲む。
 「そうか、我々の知らないところで何かが進んでいるのかも知れないな?猫じゃら
小路商店街振興組合も夏の猫まつりや冬の現金つかみどりなど恒例の行事ばかり
で新しい物は何もないからな、何か考えているのかも知れないな」
 「そうかも知れないが、佐藤君もあまり気にしないほうが良いよ」
 「そうですね」
  こうして2人は別れた。
 

  その日の午後、神田が猫じゃら工房に戻るとすぐさま金森支配人が駆けつけた。
 「何か分りました?」
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  金森支配人が神田の顔を覗き込む。
 「もめ事の原因は分ったよ。黒川事務局長が佐藤君に『猫じゃら小路に新たな飲食
街が出来たらちょん月食堂が困るんでないか』と言う話をしたらしい。猫じゃら小路に
飲食街か何か出来るらしい」
 「飲食街?」
 「ひちょりによれば、黒川事務局長はそれらしい事を匂わしながら教えてくれない、
それで頭に来たんだな」
  神田もいつの間にか佐藤の若旦那をひちょりと呼んでいた。
 「そうですか、分りました。それで猫じゃら小路商店街振興組合は具体的に何をしよ
うとしているんでしょうかね?」
 「それが問題さ、金森支配人も何か耳にしたら教えてね」
 「任せておいてください、早速行って来ます」
 「おいおい」
  神田が止める間もなく金森支配人は出かけて行った。
 「やれやれ、本業もほっぽり出して・・・・・・ま、そんなに客も来ないか?」

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第8話 さまよえる子羊  その3 ★★★






















           

         



































































































































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