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ベトナム四十八景

デジカメ あしたのジョー

 「私達も出来る?」 とろうそく作りに参加して来た。
  しかし、たいての人は「何をやってるの?」と足を止めるが、「猫じゃら小路キャンド
ルナイト2008」の立て看板を見ては通り過ぎて行く。
  午後5時になり、第1回目の手作りろうそく教室が終わった。しかし今日半日でろう
そく作りに参加した人は数人、作ったろうそくは関係者を含めてもせいぜい10数個で
ある。
 (これでは足りない、キャンドルナイトは最低500個くらいないと様にならない。手作
りろうそく教室をこれからもっともっとPRしなきゃ)
  神田は教室の開講を急ぎ過ぎた自分を反省した。


  4月25日の夕方、神田はさっぽろ駅裏の居酒屋「又兵衛」にいた。
  今日は春北商
会のOB北山先輩を招待していた。遅ればせながら猫じゃら新鮮組

の猫のマークを描いてもらったお礼の気持ちである。
  神田の懐も今日は暖かい。1年経って神田の月給もそこそこ上がっていた。1年間
の活躍が雇い主の蓮華堂不動産社長立川に評価されたのである。
 「お言葉に甘えてやってきたよ」
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  昨年9月に退職した北山先輩は元気そうな顔でやって来た。
 「いいえ、その節はすっかりお世話になり、そのお礼が遅れまして・・・・・・」
 「神田君は酒が飲めないのにこんなところに誘っていただいてかえって悪いね」
  神田は北山が現役時代通っていた店を指定してした。北山はさりげない神田の厚
意を感じていた。
 「君の活躍は新聞・テレビで時々拝見しているよ。猫じゃら小路も少しずつ活気が出
てきたんじゃない?」
 「雰囲気だけはね・・・・・・根本的な解決にはなっていないんです。猫じゃら小路商
店街が生き残るため今何をすべきか?それは商店街が自分で決めなきゃ・・・・・・
我々猫じゃら工房だけでは限界があります」
 「そうかもしれないね」
  神田は一見華やかに駆け回っているように見えるが、実は覚めた目で物事を見て
いると北山は
感心していた。

  北山は飲み始めのビールを、神田はウーロン茶をそれぞれ飲んでいる。
 「先輩、何か食い物頼みます?」
 「それじゃあ。おやっさん、いつもの日本酒、北の勝と今日のお勧めを」
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 「カスベのぬたと標津の赤ボヤの刺身はどうです?」
  小柄で色の黒い親父は北山の好物をしっかりと覚えている。
 「いいね、それにしよう」
 「俺は、腹にこたえるホッケの開きと山菜のてんぷら、それからウーロン茶のお代わ
りで今度は大ジョッキで
ください」
 「分りました」 相変わらずこの店の親父は口数が少ない。
 「ところで北山先輩は最近春北商会へ行っていますか?」
 「行っていないよ、俺は木枯先輩のように昔の後輩を訪ねては歩かないから。
後輩
にしてみればたまに来た先輩をないがしろに出来ないし、かといって真面目に付き合
えば仕事の邪魔になるし・・・・・・どうかしたかい?」
 「総務課のマドンナ、高木まり子が会社を辞めたそうです」
 「本当かい?」
 「今さら結婚退職ではないと思いますが・・・・・・・」
 「そうだよねぇ」
  北山は親父がついでいった日本酒をごくりと飲み干す。
 「何故か木枯先輩があの子の事を心配しているんですよ」
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 「木枯先輩?彼は釧路時代あの子の父親高木善太郎と一緒だったはずだよ」
 「釧路時代?今は釧路に支店はないですよね」
 「釧路支店はとっくに帯広支店に統合されたからね。当時の釧路支店は社員も少な
く、まだ若い木枯さんと高木さんは家族ぐるみの付き合いをしていたって、いつか木枯
さんに聞いた事があるよ」
  そう言いながら北山は含み笑いをする。
 「どうかしました?」 神田が北山の顔を見る。
 「ある事を思い出してね・・・・・・ある時、木枯先輩と私が応接セットで話していると
高木まり子が傍を通り過ぎたんだ。そしたら木枯先輩が私の耳元に顔を寄せて『あい
つ澄まして歩いているが、俺はあいつが赤ちゃんの時オムツを取り替えてお○○を
見ているんだ』と真面目な顔して言うんだ」
 「ははは、それはいかにも木枯先輩らしいや」
 「高木先輩は退職して間もなく亡くなったから、木枯先輩はまりちゃんの事を心配し
ているのだろう」
 「そうですか、それで合点がいきました」
 神田が北山のお猪口に酒を注ぐ。
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第7話 キャンドル・ナイト  その5 ★★★★★






















           

         



































































































































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