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の3丁目と4丁目では交通の混雑も予想され、7丁目でやる事に決まった。もちろん、
1丁目の仏壇屋蓮華堂の前でやる案は論外で誰からの提案もない。
  飲食店の廃油を使う「手作りろうそく教室」を開催する件も理事の賛同を得て、キャ
ンドルナイトと同じ7丁目のちょん月食堂の前で毎週土曜日に実施する事になった。
  商店街の猫じゃら工房に対する要望として、マスコミへのPRはもちろんの事、各商
店の店頭に飾るポスターを作る事、猫じゃら新鮮組の協力を仰ぐ事が提案された。
  逆に工房から商店街に対する要望として、猫じゃら小路のホームページに掲載す
る事、各商店の店頭にポスターをもれなく飾る事が提案された。
  木枯社長と立川理事長はこれらの提案をそれぞれ責任を持って実行すると明言し
た。それぐらいこのイベントは猫じゃら小路商店街のイメージアップにつながるとみん
なが期待していた。

  4月12日の土曜日は手作りろうそく教室の初日である。
  会場の7丁目のちょん月食堂の前には会議用テーブルが2本と折りたたみ椅子が
6脚並び、「猫じゃら小路キャンドルナイト2008協賛 手作りろうそく教室」という看
板が立っていた。開講時間は毎週土曜日午後2時から午後5時としてある。
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  教室の設営は神田と猫じゃら小路商店街振興組合の黒川事務局長とちょん月食
堂の若旦那佐藤の3人でかかり、今し方終わったばかりである。
  午後1時になると、麻耶と由香がやって来た。
 「高校生になったら急に大人びて見えるな。寒いだろう?これを飲みな」
  坊主頭にねじり鉢巻の若旦那佐藤が2人に温かい缶コーヒーを勧める。若旦那は
自分の店の前でこのイベントが行われる事になり、かなりハイになっている。
 「高校と言えば、由香ちゃん、あの草薙強はどうした?」
  神田が由香に訊ねる。
 「分んない、彼は私達と違う高校に行ったから」
  弱い男に女は冷たいものである。
 「そうか・・・・・さてそろそろ始めるか?」
  神田はそう言いながら2人にチラシを渡す。
 「この教室の趣旨はそこに書いてある通りで、ここでろうそくを作った方にはキャン
ドルナイトの優先券を渡します。自分のろうそくを開催の1時間前に好きな所に置け
る優先券です」
 「それはいいわねぇ」 2人はにんまりとお互いの顔を見る。
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 「ろうそく作りには基本的に無料です。何せ猫じゃら小路商店街の飲食店の廃油
を使ってもらうわけですから・・・・・・」
 「容器を持って来ない方はどうするの?」 由香が質問する。
 「そういう方は貸し賃として100円頂戴します。領収証を渡し、次回に代わりの容
器を持って来たら返します」
 「そうか」 由香がうなづく。
 「火と油を使うのでくれぐれも取り扱いに注意して、火災や火傷を起こさないように。
ふざける人には作らせないように」
  これで神田に白衣を着せたらまるで高校の科学の先生である。
  テーブルの真ん中にはカセットコンロと牛乳鍋と廃油の入ったペットボトルが置い
てあり、コンロの周りにタコ糸、割り箸、香料、クレヨン、凝固剤、ハサミ、ナイフ、セロ
テープなどが置いてある。
  前に神田とろうそくを作った事のあるちょん月食堂の若旦那は店に戻.る。残った
黒川と麻耶と由香の3人がろうそく作りに挑戦する。3人はそれぞれ自宅から持って
来た海苔の佃煮のびん、ジャムのびん、プリンのびんを取り出す。
 「それじゃあ、私といっしょにやってもらおう。まずろうそくの芯となるタコ糸を10p
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くらいに切って、タコ糸の端を割り箸の真ん中にセロテープでしっかりと貼り付ける」
  3人は小学校の工作をしているように楽しそうに神田の後を追う。
 「ここまで出来たらいよいよ油を温める。入れ物の7分目まで油を入れたらそれを
牛乳沸かし器に移すんだ。油が十分温まったら、好きな香料と好きな色のクレヨンを
削って入れ、良くかき混ぜる。そして凝固剤を入れこれも良くかき混ぜてから入れ物
に流し込む。ここにタコ糸を貼り付けた箸を芯が真ん中に来るよう載せる。後は固ま
るまで待つんだ」
  この辺まで来ると3人の生徒は必死である。
 「どのくらいで固まるの?」 理屈っぽい黒川が訊ねる。
 「外気の温度にもよるが、今日は外で寒いから数10分で固まると思うよ」
  この答えは妻の美代子の受け売りである。
  こうして3人3様の作品を作り上げた。ろうそくの色はそれぞれ黒、赤、黄でなん
となく元の中身を連想させる。
 「りっぱりっぱ」 神田が3人の作品を褒め称える。
 「やったね」 黒川は3人の作品を人目につくようにテーブルに並べる。
  その楽しそうな様子を見ていた若い2人連れが、
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第7話 キャンドルナイト  その4 ★★★★






















           

         




































































































































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