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忘れえぬ猫たち

デジカメ千夜一夜

かんたん酒の肴

おじさんの料理日記

喜劇「猫じゃら行進曲」



小説「眠れない猫」

ベトナム四十八景

デジカメ あしたのジョー
 「馬鹿な事を言うな、俺が何を悪い事した?何が始末書だ」
  木枯社長が一段と大きな声を張り上げる。周りの職員がびっくりして木枯社長を見
る。
 「こんな事をする暇があったら、やる事がいっぱいあるだろう。学校でのいじめをなく
すとか、少年少女の非行をなくすとか、給食費の未収をなくすとか、教育委員会はこう
いう事にもっと力を注いだらどうだ。他にもまだまだあるぞ、お前の部署ではないが、
水道局の官製談合をなくすとか、市バスの民間移行の無駄遣いをやめるとか、生活
保護の不正受給をなくすとか、税金の無駄遣いを減らす事がいっぱいあるだろう?」
  木枯社長はだんだんエスカレートする。
 「わ、分りました。今日は一応注意を申し上げたと言う事で・・・・・・」
 「一応とは何だ。自分の保身のために仕事をするんじゃないよ」
 「もう十分あなたの言う事は分りました、今日はこれで結構です」

 「人を呼びつけておいて何て言い草だ。真面目に仕事をしろよ、山田。それじゃあ俺
は帰るぞ、あばよ」
  唖然とする教育推進課の職員を尻目に木枯社長は胸を張って堂々と出て行く。


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 「神田さん、木枯社長から電話よ、1番に」
 午後5時少し前、 階下から半井嬢が大声で告げる。
 「了解」
  神田は木枯先輩と聞いて不安を感じつつも電話を取る。
 「神田、まだ仕事してるのか?」
 「まだって一応勤務時間内ですから」
 「それじゃあ、これからロビンデパートの裏の八百鶴に来い。昨日のイベントの慰労
会をやるから」
 「こんな明るいうちから飲むんですか?」
 「五月蝿い、何時に飲もうと俺の勝手だ。来るのか来ないのか?」
 「行きますよ」
  神田は市の教育委員会に出頭した木枯社長の慰労会になるかもしれない、と思い
つつもサラリーマンの悲しい性でススキノへ足を運ぶ。
  冬は河豚、夏はすっぽんで有名な料理屋八百鶴は開店前とて暖簾がまだかかっ
ていない。
 「本当にこんな高級なところに先輩はいるのかな?」
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  神田は疑いつつもドアを開ける。
 「いらっしゃい、神田様ですね。木枯社長が3階でお待ちです。」
  ここのご主人と思われる赤ら顔の大男が迎える。3階へ上がって行くと廊下の突き
当たりに白い割烹着をきた若い仲居さんが待ち構えている。
 「木枯社長はこちらです」 
 若い仲居さんは木枯社長と顔なじみらしい。彼女は廊下の右手に三つしかない座
敷の一番奥の座敷の引き戸を開ける。
 「おっ、来たか?入れ」
  木枯先輩は六畳間の入口に近いところに陣取り、神田を中に招き入れる。奥に木
枯先輩と同世代の男性が座っている。温厚な顔をした中肉中背のその男は半袖のゴ
ルフシャツを着ていた。2人はすでに枝豆を肴にジョッキのビールを飲んでいる。
 「城下、これが今話した神田君、俺の前の会社春北商会の後輩だ。神田、この御仁
が市役所にいてその後観光協会に天下りして退職した城下君だ、彼も八百鶴のご主
人の鶴田もさっぽろ南高校の同級生でね」
 「城下さん、よろしくお願いします。そうしますと立川理事長もいっしょですね?」
 「そうそう、みんな悪ガキばかりでね、困ったものさ。お嬢さん、ジョッキをもう一つ」
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  と言って城下が神田のジョッキを注文する。
 「城下、こいつは酒天童子みたいな顔をしてアルコールは一滴も飲めないんだ。お
さん、ウーロン茶をジョッキに入れて持ってきて」
  木枯社長が城下氏に神田の不調法を詫びる。廊下の仲居さんが復唱する。
 「そうでしたか、珍しいですね。そうすると接待の多い春北商会鰍ナはたいへんだっ
たでしょ」
  城下が神田をねぎらう。
 「仕事ですからそれは何とか・・・・・・ところで木枯先輩、教育委員会は何と?」
 「それだよ、今城下に市役所の悪口をさんざん言ってやったところさ」
 「私はもうOBですけどね」
 「大体ね、市役所の偉い連中は自分のために仕事をやっているんだ。下の者は真
面目にやっている人もいるがね。このところの不祥事はどうにもならん。下田市長も
幹部を管理できていないよ。お互いに聞いた聞いていないって・・・・・・似非文化市
長だ、クラッシックコンサートばかり顔を出しやがって、子供の盆踊りに顔を出せって
んだ、昔の芝垣市長を見習えってんだ」
  木枯社長のビールを飲むピッチが上がる。戸を開けて廊下に待機している仲居さ
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第6話 適わぬ恋  その3 ★★★






















           

         





































































































































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