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ベトナム四十八景

デジカメ あしたのジョー

    
 「神田さん、北海スポーツ、見た?これ私よ、きれいに写っているわ」
  猫じゃら工房の最初のイベント、猫じゃら新鮮組、隊員募集が終って2日後の8
月13日の月曜日、半井嬢が昨日発行の北海スポーツ新聞を持って2階にやって
来た。
 「これが半井さん?言われないと分んないよ」
  神田が地元スポーツ紙のさっぽろ市内版を見る、一昨日のイベントを比較的大
きく取り上げていて、その写真の片隅に半井嬢らしき人物が豆粒大に写っていた。
 「みんなに電話して教えてあげたさ、ふふふ。参加したみんなは大喜びよ」
 「それは良かった、みんなよろしく言っておいてね」
  記事の見出しは「ゴミ拾いに興じる若者達」となっており、本文では「家庭では家
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事をいっさい手伝わない若者たちがゲーム感覚でゴミ拾いに参加していた」と評し
ていた。

 「夕方のテレビニュースにもけっこう映っていましたよ」
 「おじさんも6時のニュースは見たよ」
  三鉢麻耶を探しに出かけた神田はそれ以降のテレビニュースは見ていないが、
ノンポロ大学の内藤教授ほか大学の同級生からも「テレビを見た」と携帯にメール
が入っていた。
 「今度なんかやる時はまた教えてね」
 「もちろん、またお手伝いを頼みます」
 「きっとよ」
  仏壇屋 蓮華堂の仕事より猫じゃら工房のお手伝いの方がよほど面白いとみえ、
半井嬢はるんるんと戻って行く。
 
  マスコミ報道の効果は絶大である。猫じゃら小路商店街の神田に対する態度がこ
ろっと変わっていた。出勤途上に出会った商店街の人達は、
 「神田さん、一昨日のイベントは良かったよ。ありがとう」
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  と声をかけてくる。猫じゃら工房も神田も商店街の皆さんにようやく認知されつつ
あった。しかし、それでも神田はまだまだ気を緩められない。
 (人の噂も七十五日、このままでは猫じゃら新鮮組も忘れ去られる。ここで矢継ぎ
早に次の手を打たないと・・・・・・)と考えていた。

  神田が次に打った手はポケットモンスターゲームのチャンピオン大会であった。
  この2007年は家庭用ゲーム機の大転換の年であった。ゲーム機の中心が据
え置き型から携帯型へと大きく変わったのである。
 
2004年の年末に発売されたニンテンドーDSとプレイステーションポータブルの
熾烈な販売競争により携帯型ゲーム機への関心が急速に高まっていったのであ
る。この結果、携帯型ゲーム機は市場を拡大し大ブームとなった。また深刻な品不
足を引き起こした。 特に任天堂のDSの人気は高く2006年まで品薄状態が続い
た。この年7月携帯型ゲーム機のシェアが据置型ゲーム機のシェアを初めて上回
り、家庭用ゲーム機は携帯型ゲーム機が主流となった。

  2007年2月、ニンテンドーDSの販売台数は累計で1500万台を記録していた。

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  この携帯型ゲーム機の普及を見逃す手はない。
  神田は任天堂の全面協力を得て9月の連休(16、17日と23、24日)に小学生
高学年を対象としてポケットモンスターゲームチャンピオン大会を実施した。
  会場は猫じゃら小路6丁目の渋谷アニメ学院の講堂、休日だからと格安で借り
る。
渋谷アニメ学院、猫じゃら小路商店街、猫じゃら工房三方両得の仕掛けである。
最初の3日間は予選、最終日の9月24日が決勝大会である。ゲーム機は各自持
参で、予選を通過した30人が決勝大会へ出場する。チャンピオンと準チャンピオン
には副賞としてニンテンドーDS Liteが贈られる。
  告知はマスコミへの投げ込みと猫じゃら新鮮組へのメールだけだったが、ポケモ
ンゲームの人気は想像以上に高く、瞬く間に小学生達の間に伝わっていった。
  初日の16日はさっぽろ市内のみならず近郊からも小学生がやって来た。6丁目
のアーケード内は小学生と保護者の群れでいっぱいになり、通行客が歩く事も出
来ない混みようだった。
  例のTシャツを着た猫じゃら工房事務局と新鮮組が総動員で事に当たる。ちょん
月食堂の佐藤若社長ほか商店街の方々も自発的に手伝いに出てくる。まずは参
加者の出場日を決める。先着100名は当日の16日、次の100名は17日、それ

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第6話 適わぬ恋  その1 ★






















           

         

























































































































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