きれいな花の写真

忘れえぬ猫たち

デジカメ千夜一夜

かんたん酒の肴

おじさんの料理日記

喜劇「猫じゃら行進曲」



小説「眠れない猫」

ベトナム四十八景

デジカメ あしたのジョー
  摩耶の気持ちが落ち着きつつあると見た神田は気になっていた事を訊いてみる。
 「お父さんとお母さんはどう見ても似合いの夫婦に思えるけど・・・・・・」
 「そうね、2人とも良い人よ、原因はお母さんの潔癖症だって・・・・・・お婆ちゃんの兄
が言ってたわ」
 「お婆ちゃんの兄?」
 「銭函に独りで住んでいる母の伯父さん、昔から猫をいっぱい飼っているの。お母さ
んは寄り付かないけど、私は動物が好きだから時々母に隠れてこっそり行ってるの」
 「どうしてお母さんは伯父さんが嫌いなの?」
 「動物が嫌いなの、臭いとか、毛が散らからってとか・・・・・・私が伯父さんのところ
から帰るとすぐばれるわ『摩耶、臭い、臭い』って」
 「それで?」
 「銭函の伯父さんによれば、お父さんは動物が大好きなんだって、ところがお母さ
んは動物が大嫌い、見合い結婚の2人はそこまで気がつかなかったそうよ。結婚し
てしばらくすると父は動物を飼いたい、母は絶対反対で、2人の仲はだんだんうまく
行かなくなった、と・・・・・・」
 「そうなのか?それでお父さんの仕事は元々獣医師かい?」
113

 「お母さんは父の事をいっさい教えてくれないけれども、伯父さんの話によると、父
はノンポロ大学の獣医学部を卒業してノンポロ市役所に勤めていたそうです。離婚
後に獣医師になりたいとノンポロ大学の大学院に入りなおして獣医師の免許を取っ
たそうよ・・・・・・銭函の伯父さんは『お前の父親も今頃はどこかで動物病院でもやっ
ているのではないか?』っていつも言っていたの」
 「それで麻耶ちゃんは真央ちゃんの言葉に反応したんだ」
 「そうなの、だけどお母さんに言うわけにはいかないんだ」
 ここまで話した時、車は北インターに近づいていた。
 「麻耶ちゃん、お母さんに何て言おうか?」
 「本当の事を言っていいよ」
  中学生の摩耶はある時は大人のような分別を見せながら、一方でこのように大人
の心臓を刺すような事を平気で言う。
 「そうかい?麻耶ちゃんがお母さんに内緒でお父さんに会いに行ったと聞いたら、お
母さん卒倒するんじゃないかい?」
 「お母さんだって、私に同じような事をしているんだよ」
  女が女を見る目は厳しい。
114

 「困ったなあ、何か良い嘘はないかな?」
 「嘘は泥棒の始まり」
 「嘘も方便と言う言葉もあるよ」
 「都合の良い事ばっかり、だから大人は嫌いよ」
 「困ったなあ」
  神田は摩耶の母親に何と言うか、まだ思いあぐねていた。
  そうこう話しているうちに車は三鉢麻耶の自宅に到着した。
 「そうだ、銭函の伯父さんのところに行っていた事にしよう、いいね」
 「分った」
 「それから、真央ちゃんも心配していたから、電話してくれ。真央ちゃんにも銭函の伯
父さんのところに行っていたと言うんだぞ」
  神田は摩耶ちゃんに念を押す。

  インターホンの呼ぶ声で、母親の律子が慌しくドアを開ける。
 「どこに行っていたの?お母さん心配したのよ。神田さん、ありがとう、どうぞ入って
お休みください」
115

 「ごめんなさい」
  摩耶ちゃんはいつもと変わらぬ様子で靴を脱ぐ。
 「今、温かいコーヒーを入れますから。食事もしていってくださいね」
  母親は神田の電話後急いで晩御飯を1人前増やしたようである。
 「晩御飯は神田さんにカレーライスをご馳走になったよ」
 「それは申し訳ありません、それでおいくらでした?」
 「お気遣いなく、私のお腹が我慢できなかったもので」
  神田は慌てて辞退する。
 「そうですか?散財をさせてしまってすみません。摩耶、由香ちゃん他お友達に電
話してね、みんな心配してくれたわ。ちょっと失礼」
  母親はコーヒーを入れに台所へ向う。
 「うん、分った」
  素直に返事して、電話をかけるために2階の自分の部屋に行った。
 「ところで摩耶はどこにいたんですか?」
  神田の前にコーヒーが出される。
 「それは・・・・・・銭函の伯父さんのところです」
 116
 
タイトルイメージ   タイトルイメージ 本文へジャンプ



第5話 少女誘拐  その5 ★★★★★






















           

         




































































































































前のページへ 次のページへ


トップページへ戻る