きれいな花の写真

忘れえぬ猫たち

デジカメ千夜一夜

かんたん酒の肴

おじさんの料理日記

喜劇「猫じゃら行進曲」



小説「眠れない猫」

ベトナム四十八景

デジカメ あしたのジョー
 「いいえ、神田さんは私が麻耶のお母さんにイベントの話をしたから来たの?」
  神田はなかなか頭の回転が良い娘だと感心する。
 「あなたのせいではありません」
 「摩耶の事、私は何でもないと思うけど、お母さんが心配性でね」
 「連絡がないから、お母さんはそれで心配しているんです」
 「あの子はそんな変な子じゃないよ、しっかりしているもの。お母さんの方が心配し
過ぎるのよ、まだ6時半過ぎでしょ。だいたいあの母親は子供を少しかまい過ぎるん
だ、母子家庭だからしょうがないかも知れないけど・・・・・・」
  由香の観察は鋭い。
 「麻耶ちゃんとはここでどんな話をしたんですか?」
 「今日の猫じゃら新鮮隊の話や先公やダチ公の話さ」
  三鉢 麻耶より活発そうな彼女は話しながらTシャツの裾をばたばたさせながら風
を入れている。
 「そう、いつもと違う話は?」
 「いつも同じさ、女の子の話は・・・・・・・」
  そこまで言ってから何かを思い出したらしい。
105

 「そう言えば、もう1人の友達がトイレに行った時に犬猫病院の話しをしたよ」
 「犬猫病院?」
 「そう、先週家族で支笏湖にドライブして帰るとき千歳で三鉢犬猫病院って看板を
見たんだ。こんなところにも同じ名前の人がいるもんだと・・・・・・」
 (この話は摩耶の行方不明に関係あるかもしれない)
  神田の第六感が騒ぐ。
 「麻耶ちゃんの反応は?」
 「『そう』って何も言わなかったよ」
 「その話、麻耶ちゃんのお母さんに話した?」
 「いいえ、もし関係があったたらヤバいから、母子関係をこじらせるから・・・・・
麻耶が3歳の時両親が離婚して、それからお父さんに一度も会っていないそうよ、
だからお父さんに一度会いたいって、だけどお母さんは居場所も教えてくれないん
だって・・・・・・だから麻耶は父性愛に飢えているんだ」
 「そうか、ありがとう、麻耶ちゃんから電話があったらお母さんにも連絡して上げて
くれないか」
 「分ったわ、見つかったら私にも教えてね」
106

 「うん」 

  神田は由香ちゃんと別れ、札幌新道の北インターから高速に乗り千歳へと車を駆
る。麻耶ちゃんのどこか寂しげな青白い顔が暗い空に浮かぶ。
 (麻耶ちゃんは父親を探しに行ったに違いない。彼女の悩みとはこれか・・・・・・)
  車は千歳インターにあっと言う間に着く。日航ホテルの駐車場に車を止め、電話
案内104で三鉢犬猫病院の番号とともに住所を聞く。
  支笏湖へ向う道を走ると、住宅が途切れるあたりに三鉢犬猫病院の看板があっ
た。診療が終ったのか正面の診療所も裏の住宅部分も灯りがない。看板だけの灯り
の下、神田は車を止める。
  車のライトを消して暗闇に降り立つと、建物の裏手から何かが出て来る足音がし
た。(泥棒か?)神田が目を凝らす。忍び足で出てきたのは三鉢 麻耶だった。
 「摩耶ちゃん」神田が声をかける。
 「ええっ、神田のおじさん、どうしてここに?」 摩耶は腰を抜かさんばかりに驚く。
 「どうしてじゃないぞ、お前を探しに来たんだ。お母さんが心配しているぞ」
107

 「何でおじさんが?お母さんが頼んだの?」
 「それは・・・・・・」
  神田が訳を説明しようとした時、こちらへ向って来る車のライトがあった。
 「誰かが来る。麻耶ちゃん、車の中へ」
  神田は本能的に彼女を後部座敷に押し込め、頭を下げているよう指示する。間一
髪で赤いホンダのアコードがいかにも手慣れたようにカーブを切り神田の車の左側
に止まった。 降りてきたのは犬猫病院のオーナーと見られる3人の家族だった。40
代の父親と30代の母親と5歳ぐらいの男の子だった。
  いかにも犬猫病院の先生と思われる優しい顔をした男性は右手に立っている神田
の顔を見て、
 「今日の診療は終りました。重症でなければ、明日またいらしてください」
  と丁重に言う。
 「はい、分りました、そうします」
  と神田は笑顔で答える。
 「ババ、早くおうちへ入ってポケモンをやろう」
  男の子が両親の腕にぶら下がりながら玄関へ向って行った。

108
タイトルイメージ   タイトルイメージ 本文へジャンプ



第5話 少女誘拐  その3 ★★★






















           

         





































































































































前のページへ 次のページへ


トップページへ戻る