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デジカメ千夜一夜

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おじさんの料理日記

喜劇「猫じゃら行進曲」



小説「眠れない猫」

ベトナム四十八景

デジカメ あしたのジョー
 

出しが浮かぶ。
 「でも、あなたに迷惑がかかるわ」
  お母さんは電話の向こうでまだためらっている。
 「早く探さなきゃ」
  神田のこの一言でようやくお母さんは見ず知らずの神田に頼る気になった。他に
頼る人もいなかった。
 「それじゃ・・・・・北区北36条西4丁目○○です。角の2階建ての一軒家ですが」
  お母さんの声はだんだんか細くなってくる。
 「30分ほどで着きます、念のためにお母さんの電話番号も」
 「758の○○○○です」

  神田は相手の電話番号を自分の携帯に登録するや否や、
 「イベントに参加した中学生の麻耶ちゃんが行方不明だ。ちょっと探しに行ってくる。
遅くなったら先にご飯を食べていてくれ」
  と妻の美代子に伝え、愛車に乗り込む。酒の飲まない神田は葬儀屋も務まるくらい
である。
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  車は西野二股からまっすぐ北へ向う。途中パチンコ東京ドームを左手に見ながら旧
国道5号線を横切る。日暮れが早くなったせいでパチンコ東京ドームのネオンが夜空
にまぶしい。新川で札幌新道を右折し、北34条西4丁目を左折し少し走ると、三鉢麻
耶の家らしき一軒家が見えた。
 「三鉢 律子」という 表札を確認し、神田はインターホーンを押す。
 「遅くなりました、神田です」
  内側で慌てて鍵をはずす音がする。
 「先ほどは興奮していて、失礼な事を言ってすみません。お休みのところ申し訳あり
ません」
  ほつれ毛をかき上げながら出てきた母親は穴があったら入りたい様子である。彼女
の白い顔が逆光にいっそう青白く見えた。神田の白髪頭の赤い顔を見て警戒心が薄
らぐ。
 「入ってもいいですか?」
  返事も聞かず神田は靴を脱いでずかずかと居間に入る。女2人暮しの居間はベー
ジュを基調とした配色で統一され、家具も置物も実に整然としていた。神田はグレイ
のソファーに腰掛け、刑事のように質問を始める。
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 「友達と別れたのは何時?」
 「5時頃だって」
 「その子の家は?」
 「由香ちゃんの家はすぐ近く、麻生の観音寺の裏手のスズランマンションです」

  応接テーブルの上の赤い手帳が神田の目に入る。開いたページに電話番号らし
き数字が見える。

 「それは?」
 「麻耶の携帯に登録されている電話番号です。あの娘が心配だから寝ている隙に写
しておいたの」
 「見てもいいですか?」
 「は、はい」
  電話番号が30個ほど並んでいる。後ろのほうに「神田」 もあった。
 「由香ちゃんに聞くと『今日、猫じゃら小路新鮮隊募集で神田さんと親しげに話して
いた』って・・・・・・それでついつい悪い方に考えてしまって・・・・・・あの娘は父親がい
ないから親切な男の人に惹かれるんです」
  母親は恥ずかしそうに言い訳する。
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 「うちにも娘が2匹いますから、お母さんの心配する気持ちは良く分ります。ところで
お宅にはコピー機あります?ありましたら、この電話番号のコピーを1枚欲しいのです
が・・・・・・」

 「あります、お待ちください」
  彼女はそう言って隣の部屋のパソコンの複合機でコピーを取ってくれる。
 「それじゃあ、お母さん由香ちゃんに電話してください。これから猫じゃら工房の神田
が行くから話を聞かせほしい、と・・・・・・」
 「私は行かなくても?」
 「あなたはどこからか連絡が来るといけませんから家にいてください」
 「そうですか、分りました」
  母親が娘の友達の由香ちゃんに電話をするのを待ってから、神田が腰を上げる。
 「途中、何か分ったら連絡します」

  由香ちゃんのスズランマンションはすぐに分った。すでに1階の出入口に彼女は降
りてきていて神田を待っていた。彼女は猫じゃら新鮮組のTシャツを着ていた。
 「今日はありがとう」神田が先に声をかける。
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第5話 少女誘拐  その2 ★★






















           

         




































































































































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