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おじさんの料理日記

喜劇「猫じゃら行進曲」



小説「眠れない猫」

ベトナム四十八景

デジカメ あしたのジョー
  まず最初に取り掛かったのは猫のマークを新しく作る事である。
  神田は春北商会鰍フ近くの喫茶店から2年先輩の北山総務部付を呼び出す。北
山部付は3月まで企画部長をしていたが、今年の9月に定年を迎えるため、部付と
言う閑職にある。北山は若い頃漫画家になりそこなったらしく、今でも似顔絵などは
あっと言う間に描いてみせる。
 「北山先輩、ご無沙汰しています、お元気ですか?」
  久し振りに見る北山は長年の重荷を下ろし達観した顔をしていた。頭髪はますます
白くなり、後退してきている。
 「元気も何も毎日暇を持て余しているよ、猫じゃらサービスへ行った神田君は?」
 「ようやく動き出したところです。今日は先輩の才能をお借りしにやってまいりまし
た」
 「何の取り柄もないがね」
  と言いながらコーヒーの伝票の裏に何かを描いている。
 「実は、今ボランテアによる猫じゃら小路のゴミ清掃隊を考えているんです。そのT
シャツに使う猫の顔を描いて欲しいんです、トムとジェリーのトムのように、元気で可
愛いくて、誰にでも愛される猫の顔を・・・・・・」
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 「こんなのかい?」
  神田が話しているうちに、北山の漫画は荒削りながら完成していた。
 「先輩は相変わらず早い、これは若者に受けますよ」
  出来たばかりの素描は神田の要望を見事に表現していた。
 「私はこの猫の顔を円の中に入れて、周りを『猫じゃら小路』と『きれいにし隊』という
ロゴで飾りたいのです。お手数ですがこれを黒一色で清書していただけませんか?後
はスキャナーでパソコンに取り込み使いますから」
 「一週間ほど時間をください、出来たら電話するよ」
 「ありがとうございます、いずれ何かでお礼します」
 「神田君にはこれまでも世話になったから、新しい仕事に役立つならお安い御用さ」
  と言いながら北山は猫の顔を描いた伝票をワイシャツのポケットにしまい込む。
 「あっ、それは私が払いますよ」
 「いいって事よ、後でお金を払った後、この伝票をもらって帰るから」
 「重ね重ねすみません。それじゃお言葉に甘えさせてもらいます・・・・・・ところで高木
さんはお元気ですか」
  高木まり子は北山と同じ総務部にいるはずだ。
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 「まりちゃんか?そう言えば最近元気がないな」
 「まりちゃんは私の同期なんですよ、いったいどうしたんだろう」
 「神田君の退職で4月に大幅な人事異動があったよな、そしてゴマすりで有名な若
山が総務部長になった・・・・・・役員の意向を嵩に来てやりたい放題らしい、ベテランの
言う事に耳も貸さないんだ。みんな意気消沈さ。私はもう定年だから良いものの、若い
人はしばらくたいへんだろう」
 「彼も上に弱く下に強いからねぇ、困りましたねぇ。一度まりちゃんの激励会をやって
あげなきゃ」
 「そうしたら、まりちゃんきっと喜ぶよ。じゃ作品が出来たら連絡するよ、電話は何番
だっけ?」
  北山は神田の携帯番号を自分の携帯に入れて帰って行った。
 
  1週間後、北山から素晴らしい原画を受け取った神田は、ただちにマスコミに投げ
込む「猫じゃら小路商店街イベントのお知らせ」の原稿と街頭で配るチラシの原稿を
作る。2日かかってようやく出来上がると、神田は木枯社長と仏壇屋 蓮華堂の金森
支配人に説明する。
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 「なかなか良く出来てるな、この猫もお前が描いたのか?」
  木枯社長が開口一番訊ねる。
 「まさか、私はこんな才能ありませんよ、これは木枯社長もご存知の春北商会竃k山
先輩の作品です」
 「そうか、あいつは仕事は今一だが、こういうセンスは抜群だよ」
  木枯社長は相変わらず口が悪い。
  新しいマークとロゴを使ったカラーの原稿は斬新で金森支配人の心も捉える。
 「なかなか良いと思いますが、問題はこのマークですね。はたして猫じゃら小路商店
街振興組合の理事会が受け入れるかどうかです」
  木枯社長が眉を吊り上げる。
 「次回の理事会は何時だ?」
 「8月末です」 と金森支配人が答える。
 「間に合わないな?」 木枯社長が呟く。
  木枯社長と神田の前に難問が立ちはだかっていた。


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第3話 プロジェクトS  その6 ★★★★★★






















           

         




































































































































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