きれいな花の写真

忘れえぬ猫たち

デジカメ千夜一夜

かんたん酒の肴

おじさんの料理日記

喜劇「猫じゃら行進曲」



小説「眠れない猫」

ベトナム四十八景

デジカメ あしたのジョー

 「ああ、木枯だ。何、昼食?いいねぇ。ちょっと待て」
  木枯社長は受話器を持ったまま神田の方を見る。
 「神田君、立川社長が『いっしょに昼食を食べないか』って?いいな」
  木枯社長の大きな声は電話の向こうの立川社長に筒抜けである。
 「神田は『いい』って・・・・・・」
  神田が答える前に木枯社長は勝手に答える。
 「12時に、場所は2丁目のサッポロジャガービアホールだな、分った」
  木枯社長はがちゃりと受話器をおろす。半井嬢はいつの間にかいなくなっている。
 「サッポロジャガービアホールか、なつかしいね。神田君、ビールを飲めるぞ」
 「俺は飲めないって」
 「分っている、お前の分まで飲んでやるよ。それまでちょっと床屋へ行ってくる。俺は
まっすぐ会場へ行くから、お前は会場に来るまでに猫じゃら小路商店街に気がついた
事をまとめておけよ」
  この年代の男は理髪店などとは言わない、あくまでも床屋である。木枯先輩はるん
るんとして事務所を出て行った。

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 「神田さん、いままで歓迎会も出来なくて申し訳ない。私としてはあなたが独創的な
アイデアを出していただけるものと多いに期待しております」
  正午過ぎに、サッポロジャガービヤホールの個室に3人がそろったところでで、立
川社長が神田に歓迎の意を表する。
 「どこまで出来るか分かりませんが、頑張ります。こういう性格ですから思いついた
事はどんどん言いいますが、一つでもお役に立てれば幸いです。それから遅くなりま
したが、昨日はお給料をいただきまして、ありがとうございました」
  と神田がお礼を言い、頭を下げる。
 「すずめの涙で返ってこちらの方が申し訳ない。お給料の方は今後のあなたの活躍
次第と言う事でお許しください」
  雇った立川社長もなかなか謙虚である。
 「そうだよ、立川に感謝しなくっちゃ・・・・・・ところでセレモニーはそのくらいにして早く
飲もうや、ボーイさん、ビール三つ」
  と木枯社長は立川社長を差し置いてビールを注文する。
 「私はいりませんよ」と神田が断る。
 「神田さんは車通勤ですか?」
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  赤ら顔で大酒飲みに見える神田に立川社長が尋ねる。
 「こいつは酒が飲めないのさ、だけど立川、心配しないでいいよ、こいつの分は俺が
飲むから」
 「分りました」  立川社長は飲み込みが早い。
  こうして3人の会食が始まった。会食と言っても昼のBコースで、料理はサラダとピザ
とパスタとなっている。

 「神田さんもほぼ1ヶ月経ちましたから、わが猫じゃら小路商店街をよくご覧になった
と思います。何かお気づきの点はありませんか?」
 「そうですねぇ、最初に全体の印象から申し上げると、全体として活気がありませんね、
これはいくつかの要因があると思います。猫じゃら小路の中に歯抜けのように閉まって
る店がところどころあります。これがまずわびしい感じを与えています」
 「歯抜け婆だな、感じ悪いよな」  木枯社長が口をはさむ。
 「そうですね、人が集まらなくて採算が合わない店がやめていく、その後に入り手がい
ない、私共も困っています」 立川社長はため息をつく。
 「活気がないという印象を受けるのはそれだけではありません。物理的にも明るさが
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少ない事、これは流行っている店が少ない事と閉まっている店が多いと言う事で、全
体として明るさが足りない感じがします。アーケード全体の照明も暗いのかもしれま
せん、夜になると明るいのでしょうが・・・・・・」
  ここまで話してきて神田はごくりと水を飲む。
 「また、小路のところどころでゴミや空いたダンボールが目につきます、これは女性が
もっとも嫌うところです」
  と神田は立川社長の顔を見る。
 「お前のところは毎日ゴミ掃除をやっていないのか?」
  ピザを食べるフォークの手を止めて木枯社長が言う。
 「それぞれの店が責任持ってやっているはずだが?」
  立川社長は釈然としない様子である。
 「空きビルや閉店の店の前まで目が向いていないのでは?立川社長これは大事な
事です。うちの娘達の話では、東京ディズニーランドにはゴミがひとつも落ちていない
と・・・・・・見に来てくれる女性や子供の夢を壊さないためだとか」
  神田が続ける。
 「そうですか、これは何とかしないと・・・・・・」
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第3話 プロジェクトS  その2 ★★






















           

         




































































































































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