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小説「眠れない猫」

ベトナム四十八景

デジカメ あしたのジョー


 「半井(なからい)さん、昨日初めてのお給料だろう、ご両親に何か買ってあげた?」
  2007年4月26日、階下の仏壇屋 蓮華堂から2階の猫じゃらサービスの神田に
お茶を持ってきた半井嬢に神田が声をかける。神田もここへ来て始めてのお給料を
もらっていた。
 「いえ、何も・・・・・・」
  半井嬢はいつも違って歯切れが悪い。
 「最初のお給料はご両親にケーキでも買って帰るもんだよ」
 「実は、最初のお給料でこれを買う事になっていたの」
  と半井嬢が上着のポケットからぴかぴかの携帯電話を取り出す。半井さんは喜びを
隠し切れない様子である。
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  あまりの喜びように神田は思わず訊ねる。
 「携帯を持つの初めてか?」
 「はい」
 「へぇー、今は中学生から持っているんでないの?」
 「そうなんですけれど、父親が『子供に携帯電話は必要ない』って持たせてくれない

の。それで昨日初めてのお給料もらったから、早速買ってきたの」
 「あんたの親父は偉い!今時の親は子供の言うなりなのに・・・・・・それに素直に親
の言う事を聞く娘もりっぱだ」
  神田はさっぱり父親の言う事を聞かない自分の娘達を思い浮かべていた。
 「うちは子供が3人もいるから、親も大変なんです。冬休みに取った運転免許の費用
もこれからのボーナスで親に返して行くんです」
  と半井嬢は肩をすくめる。

 「そうか、偉いなぁ」
  と神田が今では少なくなった半井さんの堅実な家庭に感心していた。
 「そうだ、俺の電話番号を教えるから、半井さんの番号を教えてや。めったにかける
事はないと思うけれども何かの時に役立つかもしれない」
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 「そうですね、お互いに登録しましょう」 
  半井さんは楽しそうに携帯に神田の電話番号を登録する。

  そこへ木曜出勤の木枯社長が姿を現す。
 「お前ら、2人で楽しそうに何をやっているんだ」
 「半井さんが初給料で携帯を買ったんですよ、お互いに登録しておいた方が何かと
便利ではないかと、今登録しているところです」
  と神田が答える。
 「そんな面倒くさいの、俺はいらないね、電話代がもったいないよ、自宅の電話で十
分さ」
 「そうでなくて使えないんでしょ」
 「半井さんの前でそこまで言うか」
 「ふふふ」
  半井嬢は笑いながら木枯社長のお茶を入れに階下へもどる。

 「携帯のせいで、公衆電話が減って困るよ」
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  と木枯社長は呟く。
 「奥さんは持っていないのですか?」
 「持っているよ、暇なし友達とぺちゃくちゃ、本当に五月蝿いわ、それにどうして女
は電話が長いんだから・・・・・・だから電話が来るたび『あっちへ行け』とぼったくって
やるんだ」
 「メールもやってるの?」
 「やっているよ、老眼で『肩がこるわ』だとさ、肩がこるんならやらなきゃいいのに」
 「いいじゃないですか、きっとボケませんよ」
 「うちのおっかはメールなんか始める前からとっくにボケてるよ。『お父さん、今日は
何曜日?』って、しょっちゅう聞くんだ。自分で新聞を見ろってんだ」
  木枯社長は自分の事を棚に上げて手厳しく言う。

 「木枯社長、立川社長からお電話です」
  お茶を持ってきた半井嬢がお盆を机に置いて、電話を取り上げる。
 「おお、そうか、何だろな」
  立川社長の机に座っている木枯社長は受話器を受け取る。
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第3話 プロジェクトS  その1 ★






















           

         


























































































































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