きれいな花の写真

忘れえぬ猫たち

デジカメ千夜一夜

かんたん酒の肴

おじさんの料理日記

喜劇「猫じゃら行進曲」



小説「眠れない猫」

ベトナム四十八景

デジカメ あしたのジョー
 「猫じゃら小路にいるのは猫の人形ばかりか?そうだねぇ、今は店舗ばかりで人が
ほとんど住んでいないから猫はいないさ。 だが、ネズミは一杯いると思うよ。食品を
売っているし、食堂もあるから・・・・・・」
 「怖いなぁ」 日常でネズミを見た事もない半井嬢は肩をすくめる。
 「半井さん、名前の由来にはもう一つの説もあるんだ。『猫だまし』から来ていると
言う説さ」 神田が にやりと笑いながら言う。
 「猫だまし?」半井嬢が聞き返す。
  若い娘には話が通じないと見た木枯社長が神田の話を取り上げる。
 「『猫だまし』って言うのはね、相撲の仕切り後、出会い頭に相手の目の前でぱち
んと両手をたたくと、相手は目がくらんで一瞬ひるむ。その瞬間に相手の回しを取っ
てしまう事さ。昔は女性と遊んだり、酒を飲んだ男が高い料金ふっかけられたり、商
店で田舎者が高く買わされたり した事もあったようだ。そんな人々は小路で『猫だま
しに会った』と言うんだな。猫はそこから来ているという話さ」
 「そうなんですか?そんな事はススキノでは今もあるようですが・・・・・・」
  誰から聞いたのか半井さんがつぶやく。
 「猫じゃら小路も昔はそういう店がなかったとは言えまい」
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  ふたたび木枯社長が付け加える。
 「なるほどねえ、勉強になりました。友達にも教えてあげなくっちゃ」
  長居をした半井さんが蓮華堂に下りていく。
  その後、木枯社長はバーバリーコートのポケットから文庫本を、背広の胸ポケット
から老眼鏡を取り出し、おもむろに本を読み始めた。
  神田も普段なら「今でも本なんか読むんですか?」と先輩を冷やかすところだが、
そうしてもいられないと、ホームページの猫じゃら小路商店街の歴史を読み始める。

  明治2年、明治政府は北海道開拓使をさっぽろに置いた。その頃、2丁目から3
丁目にかけて商家や飲食店が建ち並ぶようになり、明治6年頃にはその一帯が
「猫じゃら小路」と呼ばれるようになった。
  明治18年には西3丁目に今で言う官営のデパートのような「第一勧工場」が建
ち、それ以降周辺の店舗も含めて多いに賑わっていった。
  昭和2年にはスズラン灯が、昭和11年にはネオンが設置され、2丁目から6丁目
まで明るく華やかになっていった。特にスズラン灯は猫じゃら小路のシンボルともなっ
て多くの人々を呼び寄せた。しかし、日本は昭和12年の日華事変より太平洋戦争へ
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と戦火を拡大し、スズラン灯も撤収され、猫じゃら小路は暗く長い時代を過ごした。
  だが、戦後の日本の復興は早く、昭和24年にはスズラン灯も復活し、同時に歳末
大売出しの「現金つかみどり」が始まった。 この「現金つかみどり」は今日も猫じゃら小
路商店街の名物となっている。
  ダッコちゃん人形が流行った昭和35年、猫じゃら小路は1丁目から7丁目までの
全天候型のアーケードが完成し「横長デパート」と呼ばれるようになった。 昭和57年
には国道部分を除いて1丁目から6丁目までつながる現在のアーケードとカラー舗
装が出来上がった。
  平成14年、翌年オープンするさっぽろ駅再開発構想に対応し、猫じゃら小路商店
街はアーケードの大改装を行なった。同時に天板・電気設備を改修するとともに、光
ケーブル・商店街無線LAN・LED掲示板・防犯カメラなどが整備された。
           (参考資料: HP「さっぽろわくわく商店街 第1回 狸小路商店街」)

 「猫じゃら小路商店街振興組合もやる事はやってきたんだ」
  ここまで読んできた神田はパソコンから目を離し、ぽつりとつぶやく。
 「何だ?」
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  木枯社長は文庫本を持ったまま、眼鏡を少し下げて神田の方を見る。
 「猫じゃら小路商店街振興組合もその時代その時代に手は打って来たんですね」
  神田が答える。
 「そりゃそうだ、しかし、最近は世の中の変化が早過ぎるからな、その変化のスピード
に猫じゃら小路商店街も追いつかないんだろう」
 「今の若者は新しいショッピングセンターが出来るたびにそこへ足を運んでいます。
流行に敏感といえば敏感ですが・・・・・・」
 「そこで中小企業はリニューアルとなるんだが、そんなに金も続かないしな・・・・・・」
  猫じゃらサービスの2人の話は袋小路に入っていた。
  先月猫じゃら小路を端から端まで歩いて見た神田は、(全体に活気がない)と言う印
象をぬぐえない。
 (猫じゃら小路商店街に生き残る道はあるのか?)
  神田は腕組みをして古いベニヤの天井を見上げた。
 


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第2話 猫じゃら小路  その6 ★★★★★★

























































































































































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