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 「そういう事・・・・・・坂本総務部長は相変わらずせこいねぇ、先田氏の話が分か
っているなら最初から言えっての!」  古谷が目をむく。
 「何でそんなに総務部長に執着するのでしょうか?ひょっとして大林会長の返り
咲きのためでしょうか?」  早川は疑問をぶつける。
 「しかし、この場に至ってはその芽はないと思うよ。それより本人が次期会長の
ポストを狙っているのかもしれないな?」
  と言いながら古谷は生のニンニクをかじる。
 「それが私には分からないのですよ。会長ってポストは忙しくて気苦労だけが多
く、そんなに良いものだとは思わないのですが・・・・・・名誉欲なのか?はたまた
金銭欲なのか?・・・・・・会長の権限で支出する額といったってせいぜい何10万
の世界ですよ?」
 「会長ポストへの執着は理事の前歴が何かで変わってくるよ」
  古谷が早川の目を見る。
 「と言いますと?」
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 「前歴が元勤め人か、元というか現役の地主かで、会長ポストへの思いが違うん
じゃないかな?元勤め人でそこそこ出世した人はその延長線上で会長になって社
会に貢献したいと思っているかもしれないし、会社で恵まれなかった人は町内会と
いう違う組織で一花咲かせたいと思っているかもしれない。
  しかし、元農家というか現在の地主は違うと思う。お金を持ってはいるが社会的
にも認知されたいという欲望が強いと思うよ。地元で生まれ育った彼らは、流れ者
のサラリーマンとは違って自分達の町内会を守るという意識もあると思うよ」
  10年間も町内会に携わってきた古谷はその辺の事情をよく把握している。
 「なるほどねぇ・・・・・・」  早川が古谷の洞察力に感心する。
 「ついでにもう一つ伺います」
 「なんだい?」
  古谷がぐっとビールを飲みこむ。
 「話は変わりますが、大林会長と坂本総務部長との関係ですよ。以前町内会の
同じ部に所属していたのは分かるんですが、それだけであんなに緊密な関係が
出来るのか、分からないのですよ」
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  早川にはどうしても2人の関係が納得できない。
 「それはこういう事らしい。どうも坂本総務部長は大林会長に借りがあるようだ」
 「借りが?」  早川は思わず声を上げる。
  すると、古谷は急にあたりを見回し早川の耳に顔を寄せる。吐く息がニンニク
臭い。
 「ここだけの話だが、大林会長はこの町内会に分譲マンションを一戸所有して
いて、それを坂本総務部長の親戚に貸していたようだ・・・・・・相場より格安で貸
したのか?家賃が滞納したのか?細かい事は分からないがマンションの賃貸を
巡り何らかの借りが出来て坂本総務部長は大林会長に今でも頭が上がらない
んだ」
 「そうだったのか?」
  早川にすれば2人の関係の謎がようやく解けた気がした。
 「しかし、大林のマンションを借りていた人は坂本総務部長ばかりではない」
  古谷の話はなおも続いた。
 「他にもいるの?」
 「坂本総務部長の後にも大林会長のマンションを借りた町内会役員は他にもい
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いる、〇〇も☓☓も借りていた」
 「〇〇も☓☓もですか?だとすると不用意に彼らに向かって話した大林会長に
対する悪口はみんな本人に伝わっているね」  早川がため息をつく。
 「そのとおり、口は災いの元で、みんな彼らに筒抜けさ、俺も君も大林会長連合
からすると反抗分子さ・・・・・・我々はそれを承知で話しているのだから、何と言わ
れても屁の河童だがね」
  10年以上町内会の理事をやっている古谷には恐いものがない。
  そんな話をしているうちに、
 「お客さんそろそろ閉店の時間です」 と店員がやってきた。
 「もうそんな時間か?」
  古谷が店内を見回すと残っていたのは2人だけだった。
 「今日は割り勘だな?」
 「そうしますか?」
  早川はそう言いながら腰を上げる。こうして長い一日が終わった。

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第12話 晴れのち曇り  その5 ★★★★★






















           

         

































































































































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