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イタリアかけある記
  早川と山内は同い年でしかも同じ6月生まれである。
 「何も良くないよ」
  この1年間、経理部副部長として海千山千の三役を相手に苦労してきた山内が
面白くなさそうに返事する。
 「どうしてさ?」
 「考えても見てごらん、今の体制がこのままで経理部長1人が変わっても何も出
来ないよ」
 「そうかもしれんが、みんな山内さんに期待しているんだ、みんな応援するからさ
・・・・・・」
 「5対1の戦いだよ?勝てると思う?考えただけで今夜眠れそうにもないや」
  と山内は憤懣やるかたない様子であった。
 「大丈夫だって・・・・・・千里の道も一歩からだって」
  状況が分かるだけに、早川にしても それしか言いようがなく山内の家の前で別
れたのであった。
 (今度は会長と副会長が変わる事になったから、山内さんも少しは気が楽になる
かもしれない)
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  遠くに座っている山内の顔が心なしかほっとしているように見えた。

  投票は一通り終わったものの、理事達は激震の結果をそれぞれ噛みしめてい
る。2年間威張っていた大林会長は口をへの字に曲げ恐い顔をしており、棚から
牡丹餅の宮城副会長はまだ信じられない様子であった。
 「黒板をご覧のように以上の方々が次期役員として決定いたしました。理事会と
してはこの原案で来る4月24日の定期総会にかけますので、正式の就任は総会
の承認後となります。役員選考にあたって長い間皆様のご協力をいただいた事を
あつく感謝いたします」
  大役を果たした館山選考委員長が淡々と挨拶をする。旧勢力の抵抗のなかで
数々の改革を成し遂げた館山氏に盛大な拍手が沸きあがる。
 (役員選考方法は一歩も二歩も前進した。ほんとうにお疲れ様でした)
  早川は館山氏の健闘を讃える。 早川は全体としては満足したものの、総務部
長選出の経過については不快感を禁じえない。

  そんな気持ちで外へ出ると2ヶ月前いっしょに酒を飲んだ古谷公園管理部副部
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長が立っていた。
 「早川君、次期役員も決まったし、この間の焼き鳥屋に行くか?」
  早川の顔を見た古谷がにやりと笑う。
 「そうですね、一区切りつけますか?」
  長時間の会議でお酒が欲しくなっていた早川は間髪を入れずに応える。
  2人は5分間ほど歩いて焼き鳥屋に到着し、例によって一番奥のトイレの前の
席に陣取る。
 「お兄ちゃん、ビールジョッキを2杯、特急でね!」
  古谷が大きな声を上げる。
 「お待ちどう!」
  今日は水曜日であまり混んでいないとみえ、程なくビールが到着する。
 「ああ、美味い、腹が減っていると酒が美味いや」
  古谷が唇に泡をつけながら話す。
 「貧乏酒飲みかもしれないが空腹が一番です」  早川が相槌を打つ。
 「今の若いもんの中にはご飯を食ってから酒を飲む奴がいるがまったく気が知
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れないや、なあ、兄ちゃん?」
 「はい?」  通路に立っている店員が困った顔をする。
 「あれ?あんたは何でここにいるの?」
  古谷が怪訝な顔をしながらビールを飲む。
 「焼き鳥はどうします?」
  店員は困った爺だとはおくびにも出さず古谷の顔を見る。
 「ああ、ここは焼き鳥屋だった、酒だけ頼んだら困るか?俺はいつもの豚のかし
らのニンニクつき・・・・・・さて、あんたは何だっけ?」
  と古谷は早川に続きを促す。
 「私は手羽先と砂肝とつくねを2本ずつ、それに日本酒の熱燗大を1本」
 「焼き鳥の前に、俺はビールのお代わり」
 「かしこまりました」 そう言って店員は踝を返す。

 「まずまずの結果となりましたが、後味が悪くて・・・・・・」
  ころあいを見て早川は本題に入る。
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第12話 晴れのち曇り  その4 ★★★★






















           

         

































































































































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