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 「ねこふんじゃった、ねこふんじゃった、ほらひるねのこねこ・・・・・・」
  早川四郎が小学校6年生だったある日のこと、図書室からかばんを取りに教室
へ戻ると、教室の中からへんてこりんな歌が聞こえてきた。
 「川上先生か?」
  担任の川上先生は事情があって今年の4月に東京から苫前小学校に赴任して
きたばかりである。先生はしゃれこうべみたいな肉のない顔に分厚い大きな丸い
眼鏡をかけていた。
  独身の先生はちゃんと食事をしているのか、身体は痩せてがらがらで、生徒達
は「とんぼ」とあだ名をつけていた。
早川四郎はとんぼ先生の歌の邪魔をしては
いけないと廊下にたたずんでいた。
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 「早川君はまた、図書室で読書か?」
  人の気配を感じた川上先生は手を止めてにやりと笑う。
 「そうです」
 「入っておいで・・・・・・いくら苫前の神童でもこの歌は聞いた事がないだろう?」
 「はい、何という歌ですか?」
 「歌詞の通り『ねこふんじゃった』という歌さ、面白いだろう?今、東京で大流行の
歌さ、教えてあげるよ、いっしょに歌おう?」
  川上先生はオルガンを弾いて歌いだす。
 「ねこふんじゃった、ねこふんじゃった、ほら、ひるねのこねこ・・・・・・」
  早川四郎も後を追いながら歌いだす。
 「それじゃあ、オルガンも弾いてみるか?」  先生がオルガンの席を替わる。
 「ねこふんじゃった、ねこふんじゃった・・・・・・だめだぁ、指がついていかないや」
  四郎が声を上げる。
 「ははは、苫前の神童でも音感はないか?」  先生は大声を上げて笑う。
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  当時、家庭で猫と鶏を飼っていた四郎はそれ以来すっかりはまってしまい、オル
ガンはまともに弾けないがその歌だけは鮮明に記憶する事となった。
 
  早川が川上先生から教わったのは作詞が丘灯至夫(1954年作詞)の歌だった。
丘灯至夫は後年(1963年)「高校三年生」を作詞した作詞家として有名である。
     ねこふんじゃった ねこふんじゃった ほら ひるねのこねこ
     ねこふんじゃった ねこふんじゃった ねこ あわてて とんでった
               早く 来てよ ほらごらん 金魚ばちを けとばした
               あら まあまあ 水だらけ おや まあまあ 水だらけ
     ねこ どこいった ねこ どこいった ねこ あちらへ にげてった
     あら とりごやだ あら とりごやだ ほら ぎゃあぎゃあ ないてるよ
  
  みんなが良く知っている「ねこふんじゃった」の歌は、親が幼い子どもにおもち
ゃのピアノを買い与えた時に子どもに興味を持たせるために親が弾いて聞かせ
たり、ピアノ教室の先生がバイエルに飽きた生徒に遊びとして教えるケースが
多かった。いわば飴玉である。
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  しかし、「ねこふんじゃった」は1966年にNHKの「みんなのうた」で取り上げら
れてからというもの、オルガンやピアノを練習しない子ども達にまで全国的に広
まっていった。
  「みんなのうた」の歌詞は阪田寛夫、歌手は天地総子と東京放送児童合唱団
である。こちらの歌詞は、
     ねこふんじゃった ねこふんじゃった ねこふんづけちゃったら ひっかいた
    ねこひっかいた ねこひっかいた ねこびっくりして ひっかいた
    悪いねこめ つめを切れ 屋根をおりて ひげをそれ
    ねこニャーゴ ニャーゴ ねこかぶり ねこなで声で あまえてる
    ねこごめんなさい ねこごめんなさい ねこおどかしちゃって ごめんなさい
    ねこよっといで ねこよっといで ねこかつぶしやるから よっといで
  となっていて、丘灯至夫の作詞の方がドラマチックでコミカルである。

  驚く事なかれ、日本には「ねこふんじゃった資料室」なるホームページが存在
する。それによると、代表は宮本ルミ子で、「ねこふんじゃった資料室」の目的は、
あそび歌の「ねこふんじゃった」に関する資料を収集・整理し、音楽教育の発展に
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第12話 晴れのち曇り  その1 ★






















           

         
























































































































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