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  高橋君が晴海君を叱責する。
  その言葉を背後で聞きながら早川は店を出た。
 (3人とも若い時と同じだ、いつまでも目上の私に気を使ってくれる・・・・・・ありが
たい話だ)  早川はそう思いながら転ばぬようさっぽろ駅北口へ向かっていた。

  平成23(2011)年2月9日午後6時、第10回理事会の開会時刻である。早川
はいつものようにぎりぎりの時間に滑り込む。理事は今月と来月の理事会は役員
選考会があるので欠席しないよう言われていた。
  今日の議題は、市土木センターの道路改良工事の説明、各部の報告、役員改
選、についてである。議事は順調に進む。
 「さて、最後の議題です。役員選考については館山選考委員長より進行をお願
いします」  坂本総務部長よりアナウンスがある。
 (やはり館山研修部副部長が選考委員長になったか、これは良い方向だ)
  早川が喜ぶ。
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  館山選考委員長から最初に「東山町内会役員選考要領」についての説明があ
る。昨年の12月より幾度か選考委員会を開催し、協議を重ねてまとめたもののよ
うである。
  まずは前置きがある。役員選考は公明正大に行う事を方針とする。また副会長
については部長兼務が多く多忙なため従前の3人体制に戻す。
  方法については、役員候補者の対象は理事全員とし、本日の理事会で三役候
補者を無記名投票で選出する。上位の複数の候補者を対象として3月9日の理
事会において無記名投票により本選を行い、そのうち過半数を獲得した者を決定
する。
  このように役員選考要領は誠に明快であった。出席者から悲喜こもごものため
息が漏れる。
 「それでは三役候補者の無記名投票を始めます。なお、今日の出席者は48名
です」
  館山選考委員長がひときわ大きな声を張り上げる。 続いて、
 「ただ今より投票用紙を配りますので、会長候補1名、副会長候補3名、総務部
長候補1名、経理部長候補1名を書き込み、各自舞台上の投票箱に投票してくだ
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さい」
  と説明がある。投票箱の左手には開票用の黒板が置いてある。
  会場は一瞬ざわめくが、用紙が配られるとすぐに静かになる。 およそ20分ぐら
いかかって全理事が登壇し投票する。ただちに開票である。
  選考委員は会長候補から逐一名前を読み上げていく。
 「大林、宮城、大林、館山、玉置、大林、大沢・・・・・・」  
  その都度、先田総務部副部長が黒板に名前を書いてゆき2票以上になると正
の字を書いてゆく。獲得票が多かったのは大林会長と宮城副会長である。しかし、
いずれも過半数に達していない、決戦は3月9日である。大林会長は怒った顔をし
て、宮城副会長は戸惑った顔をしていた。
  次は副会長候補である。玉置副会長、宮城副会長、大沢分会長、北村研修部
長、浜松保健衛生部副部長、坂本総務部長が上位を占めた。だが、上位3名の
中には過半数に達しない候補もおり、以上の6人で来月の決選投票となる。
  総務部長候補は10人も選出されて票が分散した。上位の坂本総務部長と昨
年から総務部副部長に変わった先田総務部副部長の獲得票は10票そこそこで
過半数に達せず決選投票に持ち越される。
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  経理部長候補は、河口経理部長と山内経理部副部長である。古参理事の河口
と昨年理事になったばかりの山内と新旧対決となったが、山内が若さと明るさで大
多数の票を獲得した。これは決選投票を待たずに決まったに等しい。
 「今日の無記名投票の結果は以上です。3月9日の理事会で上位者による決選
投票を行います」
  館山選考委員長が閉会を告げるが、場内は投票された人と投票した人の興奮
でまだざわめいていた。
  早川が会場の後片付けを手伝っていると、遠くに古谷公園管理部副部長の顔
が見えた。今年の新年会の後、焼き鳥屋に行った古谷である。古谷も早川に気が
付いて右手を小さく上げる。
 (彼は今日の結果をどう感じているのだろうか?)
  早川には、古谷の顔がピエロのように笑っているようにも泣いているようにも見
えた。
 


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第11話 高みの見物  その6 ★★★★★★






















           

         

































































































































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