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イタリアかけある記
 「かわいい帽子をかぶったり、リボンなどの髪飾りをつけて・・・・・・赤頭巾ちゃん
か白雪姫などの童話の世界ですね?どうなっているんでしょうね?」
  同性の大木女史も嘆く。
 「爺さんにだってそんなのがおりますよ。てっぺんはうすいのに髪を肩まで伸ばし
たり、どう見ても似合わないジーンズの上下を着ていたりするのが・・・・・・実年齢
とあまり格差がありすぎますよね?若く見られたい気持ちは分からんわけでもない
けれども・・・・・・」
  高橋君も同様な意見を述べる。
 「人間の欲望は年を取っても同じさ・・・・・・金、異性、美貌、健康と向かう対象が
異なるだけさ・・・・・・しかし、度が過ぎると自分の年齢に逆らってあがいて生きて
いるとしか思えない・・・・・・人間あるがままに老いを受け入れる事が大切さ・・・・・」
  早川は自分に言い聞かせるように話す。

 「先輩、話は変わりますが、町内会の方は楽しいですか?」  高橋君が訊ねる。
 「間もなく満2年になるけど、わが町内会はとんでもない町内会でさ・・・・・・会社
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勤めをした私から見ると組織の体をなしていないね・・・・・・外から見ると一見まと
もに見えるが、中に入るとみんなてんでばらばらの動きをしているさ・・・・・・原因
ははっきりしている・・・・・・それは一握りの連中が町内会をかき回しているからさ
・・・・・・人間の欲望ってのは恐いもんだ。退職していくつになっても権力を狙って
不穏な動きをするんだな?・・・・・・自分だけが良けりゃという輩が悪さをするのさ
・・・・・・とうに現役を退いたんだから欲を捨てて生きれば良いのに・・・・・・もちろん
中には好々爺も好々婆もいっぱいいるんだが・・・・・・」
  早川も酔って話がところどころ飛躍する。当然ながら高橋ら後輩にはさっぱり実
感が沸かない。
 「町内会には長い人がいっぱいいるんでしょう?」
  高橋が訊ねる。
 「ほとんど70歳以上で長い人が多いね。町内会の仕事は自分の生活の一部と
なってしまって、改良とか改善とか何も考えていないような気がするね。みんな他
人事なんだ、当事者意識がないんだ。町内会がどっちに転ぼうと関係ない、言っ
てみれば高みの見物さ・・・・・・自分は参加せず脇で見ているだけさ、毎日が退
屈だから揉め事を楽しんでいるのかもしれないなぁ・・・・・・」
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 「それじゃあ、町内会活動は先輩の身体に良くないっしょ?」
  早川の性格をよく知っている高橋君が心配する。早川は何事にもきちんとして
いなければ気がすまないA型タイプの人間である。
 「腹が立つから辞めようと思うが、そうすると悪い奴らの思うがままになるしね、
かと言ってこのまま続けているとストレスは溜まるし、ハムレットの心境さ。今年4
月に役員改選があるので、今度こそまともな体制になれば良いと、一縷の望みを
託しているのさ・・・・・・すまん、これは私事でつまらん話をしちゃった」
  と早川が頭を下げる。
 「そんな町内会、早く辞めちゃいなよ」  晴海君が横から口を出す。
 「うーん、先ほど言ったように権力を志向する一部の奴らがかき回さなければ町
内会も悪いところではない・・・・・・特に今の分会長の仕事は適当に頭を使ったり、
配達などの軽い運動もあり、怠け者の私にはちょうど良い仕事なんだよ」
 「そんなの辞めちゃえ、辞めちゃえ」
  そういう晴海君の目がとろんとしている。
 「また、晴海君の悪い癖が始まったか?早川先輩、どうです?そろそろお開きにし
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ませんか?」
 高橋君が幕引の提案をする。
 「そうだねぇ、久しぶりに楽しくてすっかり酔っ払ってしまったよ、それにしても今日
は禿げの話が多かったね?」
 「そう、今日は早川先輩の禿げ増す会だから」
  晴海君がぺろりと舌を出す。
 「禿げ増し会か?晴海君もたまには良い事言うねえ、先輩また禿げ増し会をやり
ましょう!」
 「やろう!」
 「やりましょう!」
  高橋君の言葉に他の2人も賛成する。
 「みなさん、今日はありがとう、これからもお元気でご活躍ください」
  早川がみんなに礼を言う。
 「気をつけて」
  よろめきながら晴海君が早川に敬礼する。
 「気をつけるのは晴海の方だ」
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第11話 高みの見物  その5 ★★★★★






















           

         

































































































































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