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 「そういう事さ・・・・・・畑中会長が負けたら女性理事はみんな辞めると信じて辞
意を表明した真面目な人はそのまま辞表を受理されてしまった。しかし、そう他人
にけしかけておいて辞めなかった女性理事もいる、誰か分かるよな?」
  そう言って古谷がにやりと笑う。
 「うん」
  早川は玉置副会長以下残留した女性理事の顔ぶれを思い浮かべていた。
 (それで改選後の理事会で大林会長は胸を張り、女性理事は悔しくて悔しくてき
りきりと歯軋りしていたんだ)
 「だけど、坂本分会長がどうして総務部長になったんです?女性理事にも評判が
悪いのに・・・・・・」  早川はもう一つの疑問をぶつける。
 「畑中会長時代、大林体育部長は坂本に総務部長を無理やり辞退させ、自分が
後釜に座った。それも2年で終わり、体育部長に戻ったが・・・・・・その後の役員改
選で自分が首尾よく会長になったので、坂本に対する論功行賞なのか、あるいは
後ろめたさなのか、分会長として残っていた坂本を総務部長にカムバックさせた
のさ・・・・・・」と
古谷が口をへの字に曲げる。
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 「そういう事だったのか?そう言えば、改選直後の東Bブロックの会合で、私が聞
きもしないのに坂本総務部長は『私はなりたくて総務部長になったんじゃない。大
林会長に嫌だ、嫌だと言ったのに、他になり手がいないからと無理やり総務部長
にさせられた』と弁解していました。私が直前の会長選挙のいざこざを知っている
と思ったんですね?」  と早川が話す。
 「そうだろう、しかし、そうでも言わないと自分から総務部長の席を明け渡してお
いて再び総務部長になるという理屈が立たないのさ・・・・・・」
  古谷はやりきれなさそうにビールを飲む。
 「大林会長についてはこんな事もありましたよ。最初の夏祭りの時、煙草を吸っ
ていたら会長が寄ってきて『小島本家の脇の道路拡幅は俺が分家との仲裁に
入ってようやく実現したのさ、大変だったよ・・・・・・しかし、これで町内の車も通り
やすくなるよ、あはは』とひとしきり自慢話をしてから、『ところで君は誰の推薦で
理事になったのかね?』と聞くんだ。『加藤理事です』と言うと、『女性理事達は何
でもかんでも反対だからね、君も気をつけたほうが良いよ』と言うんだ。私が誰の
推薦で理事になったのか知っているはずなのに、けん制したんだ。私はひどい会
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長だなと思ったね」
  早川は憤懣やるかたない。
 「そんなの常套手段さ、ふだんの態度を見たら分かるだろう?」
 「大林会長と坂本総務部長は前から関係があったんですか?」
 「今から9年前、大林は初めて理事になり坂本体育部長の部下になった。翌年
坂本が総務部長に横滑りした時、大林はたった1年の経験で体育部長の後釜に
座った・・・・・・これも不思議な話だが、2人はそれ以来の仲間さ」
 「しかし、そのように彼らを固くつないでいものは何なんでしょう?」
  早川が聞こうとすると、
 「お客さん、そろそろ看板です」 と店長がやって来た。
 「そういう事だと・・・・・・もう午前様だもんな、帰ろうや?店長、お勘定!」
 古谷が立ち上がる。
 「今日は私が持ちますから」
 「そうか?ごっつあんです。またやろうな」
 「やりましょう」 と言って2人は別れた。

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  平成23(2011)年2月7日、月曜日の午後5時半、早川が札幌駅北口の居酒
屋「呑ん兵衛」の暖簾をかき分ける。
  今日は久しぶりに親会社時代いっしょに仕事をした後輩達と酒を酌み交わす日
であった。彼らとは年に1、2回集まって酒を酌み交わしている。早川にすると元
の会社との唯一の接点である。お店に入ると突き当たりの一角にいつもの面々が
揃っており、早川の姿を見ると立ち上がる。
 「今晩は」早川が挨拶する。
 「しばらくです、お元気そうで・・・・・・」
  団塊の世代で、いちばん年長の高橋君が答える。大木女史と晴海君も笑顔で早
川を迎える。
 「みなさんもお元気そうで何よりです・・・・・・まずは会費を払います」
  座った早川がいちばん年下の晴海君に5千円札を渡す。早川は2年前の送別会
の時、今後の集まりは会費制にしようとお願いしていた。
 「会費制は先輩が言い出した話だから出さなくてもいいとは言えないし・・・・・・」
  晴海君は笑いながら受け取る。
 「お嬢さん、ビール持ってきて」
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第11話 高みの見物  その3 ★★★






















           

         

































































































































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