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イタリアかけある記


 「あんたんとこ、ずいぶん盛り上がっていたね?」
  早川は町内会館の玄関で古谷に声をかけられる。
 「これは古谷先輩、そちらの方も盛り上がっていましたね?私達の方はズレコロ
ーマンの話で持ちきりでした」
  平成23(2011)年1月7日午後7時、2人は東山町内会の新年会を終え、帰
るところであった。古谷公園管理部副部長は夏祭りでゴミ処理を共にした仲であ
る。古谷は胡麻塩頭で、早川より10歳くらい年上だが、体力があり気が若く、が
らっぱちで付き合いやすい。
 「ズレコローマン?そんな古い話をして笑っていたのか?」
  古谷が問いかける。
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 「ここにいるのはみんなズレコローマンだってね」
  早川が説明する。
 「ははは、そのとおり、みんなズレているよ。よしズレコローマンの話の続きをし
に行くか?お前さん、どうせ暇だろう?」
 「暇、暇、空酒でお腹も空いてきたから焼き鳥屋でも行きますか?」
 「いいねぇ、おれんちの近くに美味い焼き鳥屋があるよ、行こう、行こう」
  新年会で弾みのついた2人は町内会館を出てゆるい坂を下って行く。
 
  正月休みが終わり仕事が始まって初めての金曜日のせいか、こじんまりした焼
き鳥屋は若い人でいっぱいである。店内は焼き鳥の煙が充満している。2人は運
(ウン)良く突き当たりのトイレの前の席を見つけ陣取る。
 「兄ちゃん、とりあえず冷たいビールのジョッキを2つ」
  お絞りと枝豆のお通しを持ってきた店員に古谷はすかさず注文する。新年会で
酒を飲んで10分以上歩いてきたので2人は汗だくである。
 「さて、焼き鳥は何を食う?」
  古谷の問いに早川は手書きのちいさなメニューを見る。
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 「私は手羽先と砂肝とつくねを2本ずつ・・・・・・」
 「俺は豚のかしら、ニンニクつき」
 「了解しました」  店員が引き下がる。
 「あのね、先輩、うちの町内会、何かおかしくない?」
  早川は常々思っていることを口に出す。
 「そのとおり、みんなズレているのさ」
 「どうして?」
 「わが東山町内会の伝統だよ・・・・・・ひどい会長が長い間居座っていたからね」
 「ひどい会長って?」
 「佐竹元会長さ、8期16年も会長をやったんだぜ?ひどい話さ。会長も長過ぎる
とやりたい放題で、ブレーキも効かず、かといって猫の首に鈴をつける人も誰もい
ない・・・・・・」
 「会社でもそうですが、同じポストに長くいるといろいろ弊害が出てきますよね」
 「そのとおり、だから本当に事件が起こったんだよ」
 「事件?」  早川が思わず聞き返す。
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 「お待ちどう!」
  そこへ店員が注文の品々を持って来る。古谷が待ちきれずビールのジョッキに
口をつける。
 「うまい、新年会のビールはぬるいからね」
 「そうですねぇ」
  お腹の弱い早川はぬるくてちょうど良い、とは言えない。古谷は豚のかしらに生
のニンニクを載せ口に放り込む。
 「ああ美味い、お前さんも一つ食ってみるか?」
 「結構です、それよりも事件とは?」  早川は焼き鳥どころじゃない。
 「佐竹会長の末期に、町内会費が200万円ほど足りない、という噂がどこからと
もなく聞こえてきたんだ・・・・・・それもまことしやかにね。日頃、会長のやり方に不
満を持っている誰かがリークしたと思うんだが・・・・・・」
  と古谷は言いながらビールをぐっと飲む。
 「そんな話が?」
 「嘘か本当か分からんよ・・・・・・金融機関の町内会費の納入窓口が2つもあっ
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第11話 高みの見物  その1 ★






















           

         
























































































































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