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 「それでは草刈りご苦労様でした」
  と山田分会長がみんなに声をかけ宴会が始まった。
  坂本総務部長はジョッキのビールを一口飲み干して、
 「山田さん、後はよろしく頼むよ。私は他の会合へ出てくるから」
  と言って腰を上げる。今日は土曜日で、どこのブロックでも選考委員の選出の
ため集まっているようだ。
  大林会長会長の子分である坂本総務部長がいなくなったせいで場が一気に
盛り上がる。古い役員達は前回の役員改選のやり方についてあれこれ文句を言
っているように見えるが、遠く離れた対面に座っている早川達には聞き取れない。
  このような成り行きで、東Bブロックの役員会は選考委員を結局決められず、
本来の公園清掃打ち上げに徹して終了した。

 「お早うございます」
  翌日、早川の分会の班長も兼ねている研修部長の北村女史が早川の自宅に
やって来た。旦那が経営するアパートの残りの町内会費を納めにやって来たの
である。
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 「確かに、これで町内会費は全部ですね?ありがとうございます。昨日はご苦労
様でした」  早川が昨日の話をする。
 「みんな集まったって結局何も決められないのだから・・・・・・ところで早川さん、
役員選考委員にならない?」
 「何ですか、藪から棒に?先輩の山田分会長がいるでしょう?」
  早川はびっくりしながらも、夏祭り、公園の草刈り、夏休みのラジオ体操など力
仕事を黙々とやっているアンパンマンの顔を思い浮かべていた。
 「あの人いい人なんだけど、意志が弱くて・・・・・・大先輩や声の大きい人に何か
言われると嫌と言えないの・・・・・・」
 (そうかもしれないなぁ・・・・・・そうだ、北村女史は前回の選挙のやり方にそうと
う不満を持っているようだ。理事会でも三役の発言に対して時々反発している。
彼女こそ選考委員に適任ではないのか?私は火中の栗は拾いたくない)
  そう思った早川投げられた球を投げ返す。
 「そういう事なら経験の長い北村さんがやったらどうですか?私はまだみなさん
の名前や人柄をよく知らないから・・・・・・」
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 「そう?残念だわね、またみんなと相談してみます」
  北村女史はまんざらでもない素振りで帰って行った。
 
  それから3日後の12月1日、12月最初の回覧板が届けられた。いつもは総務
部の先田副部長が配達して来るのに今日は坂本総務部長みずからやって来た。
 「ご苦労様です」
  早川が重たそうな回覧板の束をそう言って受け取ると、
 「選考委員は誰になったの?」 と坂本総務部長が聞いてくる。
 (総務部長が知らないのか?坂本総務部長と山田分会長以外の古理事が手の
内を隠しているのか?それで2年目の俺から何か聞き出そうとしているのか?こ
れはうかつには答えられない)
  そう思った早川は、
 「シダックスでは決まらなかったし、その後どうなったのか分かりません」
  と答える。実際のところ結果がどうなったか何も聞かされていない。
 「そうですか?何か分かったら教えてください」
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  坂本総務部長は腑に落ちない顔をして帰って行った。

  平成22(2010)年12月8日(水)午後6時30分、第9回理事会が開催される。
本日の重要議題は役員選考委員会についてである。
  坂本総務部長は、資料の「役員選考について(案)」により説明を始める。
 「三役選考委員会の項目ですが、選考は6ブロックと総務部から各1名選出し、
選考委員長は選出された委員7名の互選により選出する、となっています。ここま
ではいいですね?」
  この部分はシダックスで見せられた未公認の「役員選考委員会規定」と同じで
ある。
 (誰も反対しないのか?総務部から委員を1名選出するのはおかしい。総務部は
事務局であって当事者でないはずだが・・・・・このしくみは前任会長の意向が反
映しやすい仕組みで公平とはいえない。誰も反対しないところを見るとこういう仕
組みに慣らされているのか?異議を唱えて嫌われたくないのか?)
  そう思いながら早川は聞いていた。
 「ここまでいいですね?次は『役員の選考方法です。 1)全理事から立候補者を
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第10話 ズレコローマン  その2 ★★






















           

         


































































































































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