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  早川が排雪費の徴収にかかろうとしていた頃、一方では次期役員選考を巡り
いろいろな動きが起きていた。

  平成22(2010)年11月27日(土)午後6時、カラオケのシダックスに東Bブロッ
クの役員達が集まっていた。
  玉置副会長、坂本総務部長、先田総務部副部長、北村研修部長、山田分会長、
高木分会長、早川分会長、山内経理部副部長、などなどおなじみの顔ぶれであ
る。それに今年建設会社を定年になり新たに理事となった山内経理部副部長や
年配ながら新たに理事となった久井の顔もあった。
  すでにテーブルの上にはオードブルが並び、空腹を刺激する美味しい匂いが部
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屋中に漂っている。
  東Bブロックの事務局長である山田分会長が立ち上がり開会の挨拶を始める。
 「えーっ、お忙しいところお集まりをいただきありがとうございます。えーっ、今日
は札幌市から委託された公園の草刈りの打ち上げ式です。5月から11月まで7
回、まことにご苦労様でした。ゆっくり飲んで食べていってください。
  えーっ、しかし、その前にやる事があります。この前の理事会で話があったよう
に、わが東Bブロックから役員選考委員を選考しなければなりません。そして来月
の理事会までに名前を提出する事になっています」
  そういいながら、役員選考委員会規定のコピーを全員に配る。
  役員選考委員会規定によれば、東Bブロックはじめ6ブロックからおよび総務部
から委員を1名選出し、委員7名の互選により選考委員長を決める。選考委員長
は理事全員に対して三役と監事の候補者を無記名で推薦をしてもらう。選考に当
たっては、それぞれの役職にふさわしい人材であるかどうかを第一義として選考
する、事となっていた。
 「こんなのいつ誰が決めたのさ?」
  久井理事が役員選考委員会規定のコピーを見ながら質問する。久井理事は今
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年理事になったばかりで、年齢は72歳、小柄で小太り腹が出ていて、頭には毛が
1本もない、まるでタコ坊主のようである。
 「えーっ、それは・・・・・・今年の初めだったかなぁ?」
  アンパンマンこと山田分会長はぼそぼそっと答える。相変わらず歯切れが悪い。
坂本総務部長は経過を知っているはずだが返答しない。
  久井理事はさらに続ける。
 「ここに平成22年4月  日制定と書いてあるが、日付が空欄になっている。まだ
制定されていないんじゃない?早川さん知っていた?」
  久井が早川の顔を見る。
 「さあ、はっきり覚えていないな」  早川の記憶もはっきりしない。
 (5月の理事会にかかったのかもしれないが、きちんと覚えていない。かかったけ
れども、表現があいまいで紛糾し、流れたのかもしれない・・・・・・そこで決定してい
れば日付があるはずだ)
  「こんな大事な規定があったのなら、新しい役員に説明しておくべきではありませ
んか?みなさん、町内会の役員になった時この説明を聞きました?そもそも肝心の
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町内会規約についても説明がありませんでしたよ。ねぇ、総務部長?」
  久井理事は今度は坂本総務部長に噛み付く。
 「規約は会報に載っています」
  痛いところをつかれた坂本総務部長はぶっきらぼうに答える。
 「載っているのは知ってるよ、だけど説明が何もないと言っているのさ。理事が足
りないといって無理やり理事にさせといて関係する規定の説明が何もない、おかし
いよ」  つるつる頭の久井理事は黙っていると愛嬌のある好々爺に見えるが、いっ
たん口を開くとジョーズのように噛み付いて放さない。
  新人の久井理事と坂本総務部長のせめぎあいを見ながら、経験の長い理事達
は隣同士ひそひそと何かを話し合っている。
  収集がつかなくなった山田分会長は、
 「とりあえず飲んでから考えますか?」
  と言いながら壁の電話機を取り、ビールと冷酒とジュースを注文する。
  出席者はしらけた思いでお酒の到着を待つ。各自が好きな飲み物を手にしたと
ころで、
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第10話 ズレコローマン  その1 ★






















           

         
























































































































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